2021年4月24日土曜日

パリ近郊・平和で静かな街 ランブイエの警察を襲ったテロ事件 大胆にも警察に乗り込む手口


Des policiers sécurisent le périmètre après l'attaque au couteau qui a coûté la vie à une fonctionnaire de police, le 23 avril 2021, à Rambouillet (Yvelines). (BERTRAND GUAY / AFP)


 パリ近郊(イル・ド・フランス イヴリーヌ県)の平和で静かな街 ランブイエの警察署で23日の午後2時20分頃、ナイフを持った男が警察署の入り口付近で、警察署勤務の女性の喉をナイフで掻き切るという衝撃的な事件が起こりました。

 犯人は、36歳のチュニジア国籍の男で、2009年に不法に入国して以来、不安定な状態でフランスに滞在し続けていましたが、2019年に例外的な従業員居住許可、2020年12月に居住許可が発給され、2021年末までの滞在許可証を持っていたという、警察筋からはノーマークの男で、昼休みから戻った被害者女性の喉元をナイフで2度刺して殺害、犯行時にこの男が「アッラー・アクバル(神は偉大なり)」と叫んでいたという周囲の証言から、検察は、この犯行をイスラム教関連テロ攻撃と判断して、捜査を開始しています。

 被害者の49歳の女性は、警察署勤務でありながら、警察官ではなく、内務省の行政官であったため、制服も着用しておらず、攻撃を受けた時に彼女自身は、何の武器も持っていない状態でした。

 彼女はランブイエ警察署で28年間、働いていた13歳と18歳の子供を持つ母親で、刺されてすぐに心肺停止状態に陥り、駆けつけた救急隊員の必死の蘇生術も虚しく、その場で息を引き取りました。

 犯人は、すぐに周囲にいた警察官に撃たれて死亡しています。

 警察署で起こった事件だけに、警察の対応も迅速で、その数時間後には、犯人の自宅が家宅捜索され、側近の人物3人が警察に拘留されました。

 迅速な対応は、警察だけにとどまらず、すぐにカステックス首相、ジェラルド・ダルマナン内務相が現場に駆けつけ、「この惨劇の犠牲者の遺族や同僚に対する追悼の意と、テロには、決して屈しない」というコメントを発表しています。

 犯人は、すでに射殺されていますが、2015年12月からのランブイエの住民で、周囲の目撃者から、彼は警察署付近で一定時間、待機して、被害者となった女性が車を降りてきたところで、狙いを定めて被害者を襲撃したと言われています。

 とはいえ、彼が個人的な恨みでこのような犯行に及んだとは考え難く、ある程度、攻撃しやすい相手に狙いを定めて、公権力を保持している人に対するテロと見られています。

 彼の自宅の捜索とともに、彼がランブイエに転居する前に居住していたヴァル・ド・マルヌ地域の、彼が頻繁に出入りしていた家も家宅捜索を受けています。

 この衝撃的なテロに対する悲しみと怒りが静かで平和だったはずの街を震撼とさせています。イスラム教徒によるテロに共通する刃物で首をかき切る、顔を傷つけるという犯行も残忍で衝撃的です。

 このようなテロでやるせないのは、国家に対する怒りが、居合わせた個人の命を奪うことで、健康で善良な一市民が、朝、いつもどおりに出勤したまま、もう二度と帰ってこない人になってしまうことです。

 今なら、家を出る時には、感染に気をつけて、彼女もマスクをつけて、出かけたはずです。

 私は、イスラム教徒のテロの意味を全く理解できませんが、そんなにフランス国家に恨みを持ちつつ、なぜ、外国からわざわざフランスに移住してきて生活しようとするのか? 宗教というものが恐ろしく感じられます。

 信仰を持つ、信じるもの(神)があるということ、信じることができるということは、無宗教の私にとっては、心の平安をもたらすものであって羨ましいと思うこともあるのですが、心の平安どころか、宗教がゆえに国家に対して恨みを抱き、人の命を奪ってしまうような行為にまで至ってしまうということには、救いがありません。

 今回も、犯人は、その場で射殺されてしまいましたが、その場で早急に、さらなる犠牲者を出さないためにという意は理解できますが、この犯行の背景にあるものの追求のために、なんとか、犯人を殺さずに話をさせ、事件の奥底にあるものを追求する機会を無くしてしまうことは残念でなりません。

 そして、この種のイスラム教徒によるテロが起こるたびに、善良なイスラム教徒(私の周りにもいます)がどれだけ心を痛めているかということも同時に思うのです。

 コロナウィルスの感染悪化で、テロもなりを潜めていた感があったフランスですが、学校再開、段階的なロックダウン解除の発表の翌日に、さっそく、このような惨劇が起こってしまうのですから、どちらにしても、フランスに穏やかな日が戻ってくるには、まだまだ長い道のりが待ち構えているようです。


<関連記事>

「閑静な住宅街で起きた路上で首を掻き切られる陰惨なテロ事件発生 18歳のテロリスト」

「シャルリー・エブド元本社前でのテロ事件でパリ11区、俄かロックダウン」

「ロックダウン前日 大荒れのフランス ロックダウン・テロ・デモの全てが一日に起こった日」

「フランスのテロの報道と対応」 








0 コメント: