昨年の12月の段階から、世界では騒がれ始めているのに、なぜか、フランスでは、あまり報道されていない新しい変異種があるというのを小耳に挟んでいて、気になっていました。
それは昨年12月初旬にマルセイユの大学病院の感染症専門医ディディエ・ラウルト教授のチームが新しい変異種を発見したと発表したことから「IHU変異種」と呼ばれ、世界の一部の科学者を心配させているのだそうです。
実際に「French variant」と検索すると、このIHU変異種について書かれた数百件の記事がヒットします。時には、「この変異種はオミクロンよりもさらに多くの変異がある」とか、「フランスの科学者が警鐘を鳴らす」といった記事にも遭遇します。
しかし、実際にフランスでは、この「IHU変異種」については、あまり報道されていません。
この新しい変異種は「IHU型」と呼ばれ、昨年10月にフランスとコンゴで発生した別の型と関連があり、12月中旬に発表されたフランスの公衆衛生局による最新の調査では、その後300人強の陽性例を出しています。
しかし、「この変異種はフランスにおける感染者の1%未満以下であり、これは非常に少ない症例数、解釈には慎重であることが望ましい」と公衆衛生局は指摘しています。この変異種については、変異種をリストアップしているWHOの定義によると、リスクがあると疑われているものではありますが、必ずしも危険というわけではありません。
この変異種の発見が、他の科学者によるレビューや検証がまだ行われていない段階で発表され、それが以前にクロロキン(本来は、マラリアの治療薬)を使ってのコロナウィルスの治療に成果をあげて、一躍、ヒーローのような存在になったディディエ・ラウルト教授のチームによるものであったことが、誇大広告の引き金となったと現段階では、言われています。
IHU変異種が検出されたのは、フランスでオミクロンが広がり始める前の段階であったことから、新しい変異種であり、その存在は事実ではあるものの、オミクロンほどの警戒をすべきものとは、考えられないとされ、むしろ、イギリスのインペリアルカレッジなどは、必要以上に危機感を煽る報道は避けるように戒め、騒ぎを沈静化するために、「このIHU変異種の発見は、南フランスでの症例の急増を説明するものではない」、「フランスで何百人もの人々をICUに送ったわけではない」などとの、この騒ぎを鎮静化させる声明を発表しています。
クロロキンを使ってのコロナウィルス治療の研究成果を発表したラウルト教授は、一時、救世主のようにマスコミを賑わせたものの、結果的に1年以上経った現在、この治療法が浸透していないことからも、これは、結局、お騒がせ・・というか、マスコミが勝手に騒いだだけだった・・と思わせられます。
そんな経緯もあり、フランスでは、あまりこの「IHU変異種」については、騒ぎにはならず、それどころか、デルタ変異種がおさまらないうちにオミクロンの驚異的な感染拡大で、それどころではない状況です。
そして、昨日、「キプロス大学生物学教授のLeondios Kostrikis氏は、「現在、オミクロンとデルタの共感染があり、我々はこの両者を組み合わせた新しい変異種を発見した」と発表しました。
それは、オミクロンの遺伝的サインとデルタのゲノムを持つとされ、そのため、すでに「デルタクロン」というニックネームがつけられています。
同医師によると「入院中の患者の方が変異の頻度が高く、デルタクロンと入院の間に相関関係があるとの考えに至るかもしれない」と付け加えたという。「この変異種がより病的なのか、より伝染性が強いのか、あるいはそれが優勢なのか、今後見ていくことになる」と述べています。
このサンプルは、他研究所(パスツール研究所など)に送られ、これから分析を進めるとしていますが、既に、一部では、異なる変種のサンプルを扱う実験室のミスによるものだと懐疑的な声も上がっています。
現在のフランスの重症患者は依然として、デルタ変異種による患者が多い中でのオミクロン感染の急激な増加、この異なる変異種が合わさるものであるのかは、わかりませんが、どうやら、科学者の新しい変異種発見の発表が充分に確認される前にフライング気味に世の中に出回ってしまうことだけは、確かなようです。
私たちにとっては、ウィルスは目に見えるものではなく、変異種ごとに感染対策が特に異なるならば別ですが、できる感染対策を粛々としていくしかありません。
しかし、新しい変異種が出現するということは、確実にこのパンデミックが長期化するということだけは確かだと思うと、また、うんざりするニュースではあります。
デルタクロン IHU変異種
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