数日前に「ロシアによるウクライナ攻撃の4日前のマクロン大統領とプーチン大統領の電話会談がテレビのドキュメンタリー番組で放送される」という予告を見て、「えっ?そんなのテレビで流していいの??絶対見たい!」とこの番組が放映されるのを楽しみにしていました。
事前に細かい内容については知りませんでしたが、この番組は、「Un président, l'Europe et la guerre」(大統領、ヨーロッパ、戦争)と名付けられたこの番組は、エリゼ宮の裏側、マクロン大統領の周辺を今年の1月から6ヶ月間にわたり撮影されたもので、フランスがEUの議長国を務めた期間でもあり、奇しくもヨーロッパを揺るがす戦争に直面するフランス外交の記録になっています。
今年の2月頃から、ロシアとウクライナの雲行きが極端に怪しくなってきた頃から、マクロン大統領がクレムリンを訪れ、あの長テーブルの端と端に座らせられての5時間にわたる直接会談に臨んだ時の映像、会談のあとの雪道を取材に答えながら歩くマクロン大統領、クレムリンを直接訪問したにもかかわらず、説得は通じず、その後もプーチン大統領、ゼレンスキー大統領との電話会談が頻繁になり、同時に他のヨーロッパ諸国、ドイツやイタリアの首相との会談の様子。別の間に控えるマクロン大統領の外交担当のスタッフが息を飲みながら、電話を聴いている様子。
よもやヨーロッパも巻き込まれる戦争になるかもしれない危機感から、特にロシアの攻撃が開始される前後はニュースから目が離せなかった私は、その頃のニュースは細かく見ていましたし、マクロン大統領がどこの国の首脳とどんな内容の話をしたかなどのニュースはずっと追っていたので、これが、あの時の映像なのだ・・と思うと余計に臨場感があって、興味深いものでした。
電話会談の模様は、プーチン大統領とのものに限ったものではなく、ゼレンスキー大統領との会談、ドイツ、イタリア、イギリスの首脳とのものも公開されていて、かねてから、彼らは一体、何語で会話をしているのだろうか?と素朴な疑問を持っていましたが、プーチン大統領とはそれぞれが母国語、ゼレンスキー大統領とは、時にはそれぞれに母国語、ロシアの攻撃が始まった直後は英語で、ドイツやイタリア、イギリスの首相とは英語でした。
驚いたことは、彼らはかなり、フランクな感じで話しており、各国首脳、プーチン大統領とさえも彼らはお互いにファーストネームで呼び合っており、お互いに話し慣れた感じに会話が進んでいることでした。
番組広告にもあったロシアの攻撃開始の4日前の会話では、本音かどうかはわかりませんが、プーチン大統領は、マクロン大統領がバイデン大統領の誤解を生み出したとか、ウクライナは核兵器の準備をしようとしているとか、ウクライナ政府は民主的な選挙で選ばれたのではないなどとかなりの応酬が続いています。
しかし、結局、このロシアの攻撃前の最後の会談では、マクロン大統領がプーチン大統領に対して、バイデン大統領とも、ゼレンスキー大統領とも直接、話をすることを提案し、「それについては、外交担当の大臣と相談して検討する。エマニュエル、あなたとは率直に話せることを感謝している」というところで、電話会談が終わっています。
このドキュメンタリーは、ロシアの攻撃が始まる前の日の夜のゼレンスキー大統領との会話やそれから数時間後に開始されたロシアの攻撃、それから数日間は特にもう日付の区切りがないようなスケジュールに密着しています。
その後の戦争が継続されていく時系列、そして、つい先日、ドイツ、イタリアの首相とともに夜行列車でキエフを訪問する様子など、あの時はセキュリティー上、時間をずらして報道されていたものが、全て記録されていました。
このドキュメンタリー番組を制作したジャーナリスト・ギー・ラガシュは、当初はフランスがEUの議長国を務める期間を取材し、欧州連合を身近なものにしたいという意向で取材を申し込んだと語っていますが、そもそも、こんな外交政治の裏側はそう易々と報道されるものでもなく、ましてや、この戦争という危機的な状況でこのような番組を制作することは、政府側の大変な理解と協力を得なければならなかったものだと思います。
彼はこの期間を小さなビデオカメラとiphoneで撮影し、より個々の話、ストーリーに接近することを心がけたと語っています。
フランスのEU議長国が6月末で終了するタイミングでの番組の放映もドラマチックでもありました。
「は〜っ!ほ〜っ!なるほど・・こんな感じなんだ・・」と思いながら、とても興味深く番組を見ました。2時間強の長い番組でしたが、あと数回、繰り返してみたい気もしています。
政治を少しでも身近に、そして興味を感じられるような、こんな番組、日本にもあったらいいのに・・と思った次第です。
戦争開始4日前のマクロンとプーチンの電話会談の内容 ドキュメンタリー
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