2022年7月10日日曜日

ニースの交通機関でのマスク着用義務化、裁判所から停止命令

  


 1日の新規感染者数が20万人を超えてしまった現状を受けて、ニース市長は政府の決定に先駆けて、週明けの月曜日から、公共交通機関でのマスク着用を義務化することを発表していました。

 公共交通機関でのマスク着用義務は強く推奨されているものの、全然、マスク率は上がらず、感染者数がひたすら増えていく状況に、このニースでの公共交通機関でのマスク着用義務化をきっかけに、これが全国レベルに広がってくれるのではないか?と、私は期待していたくらいでした。 

 ところが、事態は思ってもみない方向に転換し、ニースの行政裁判所は、「自治体特有の緊急の理由」はなく、「そのような措置の制定が不要」であると判断し、月曜日からのニースでの公共交通機関でのマスク着用義務は撤廃されてしまったのです。

 ニース行政裁判所の暫定救済裁判官は、4人の申請者からの申し立てにより、「自治体に特有のやむを得ない理由」がないため、「このような措置の制定は不要」であり、「行き来の自由」と「個人の自由を尊重するすべての人の権利」に対する「重大かつ明白な違法侵害」であると判断したというのです。

 ニース行政裁判所がこの決定を下すのにあたっては、エリザベット・ボルヌ首相が水曜日に行った国会での演説で、「マスクの着用は強く推奨されるが、強制ではない」と述べたことを強調しています。

 市長というものは一般的な警察権を持っており、パンデミックと闘うための措置をとることができる一方で、「特定の地域状況の存在を示し、この目的のために管轄の国家当局がとる措置の一貫性と有効性を損なわないという二重の条件のもとでのみ、警察権を行使できると裁判官は説明しています。

 特に集中治療室の占拠率が全国レベルで20%であるのに対し、アルプ・マリティーム県では14%であったニースでは、これらの条件が満たされていないと行政裁判官は判断した結果、「夏の学校休暇中の観光に関連する特殊な状況にもかかわらず、この措置の制定を不可欠とする自治体特有のやむを得ない理由の存在は証明されていない」としています。

 ニース市長は、この判決に対し、「病院スタッフの疲労、この夏の期間にニースを訪れる人の多さ、病院の緊張のリスクについて、私は引き続き懸念しています」と述べ、すべての人に責任を負うよう呼びかけ、「最も弱い立場の人々の健康、経済活動の維持、新学期開始の準備のための条件、すべてが危機に瀕しているのです」と訴え続けています。

 しかし、マスクをしたからといって、移動の自由が妨げられるというものでもなく、このいつまでもおさまらないパンデミックの中での個人の自由がどこまで尊重されるべき(しかもマスクごときで・・)なのかは、甚だ疑問でもあります。

 結局、もっともっと感染状態が悪化した状態にならなければ、マスクは義務化されないということで、これでは、「マスク義務化されれば、マスクをする」と言っていた人々に対しても、「やっぱりマスクはいらない」ということを強調してしまった結果を導いてしまい、マスクによって、少しでも感染拡大を回避するという道から、かえってさらに遠ざかってしまったように思います。

 何も、暑い屋外でのマスク着用を義務付けているわけでもなく、公共交通機関内でのマスク着用だけなのに、どうして、そんなに義務化することに抵抗があるのか?私には全く理解できません。

 しかも、この4人の申し立てに対するニース市全体の健康危機のための対策に対する判決はたった20分の相談による決定で判決が下り、その決定により、一体どれだけの人が危険な状態に晒されるのかと思うと、憤然とさせられる気持ちです。

 こんなことなら、最後まで公共交通機関内でのマスク着用義務は残っていて、せっかくおとなしく皆が従っていたのに、なぜ?それを解除してしまったのか?と悔やまれます。


ニースの交通機関でのマスク着用義務化停止


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