2022年7月7日木曜日

ニース市長 公共交通機関でのマスク義務化を発表 フランス人は義務化されなければマスクはしない

 



 ニース市長・クリスチャン・エストロジは、公共交通機関でマスクを着用することが再び義務付けられるよう、ニース市の他の市長と共同で政令を制定し、来週の月曜日から交通機関でのマスク着用義務を復活させることを発表しました。

 この政令は、「メトロポリスの交通網全体」において、「月曜日から、市長たちとの共同政令に基づき、全員が強制的にマスクを着用する」ことを意味しています。

 今回の措置で、ニース市は政府の勧告をさらに上回ることになりました。ニース市長はこの公共交通機関でのマスク着用義務復活の理由として、「24時間以内に20万人以上の患者が発生し、急激に増加する第7の波に乗り、このままでは新学期を危険な状態でスタートさせることになってしまう」とニース市長は警告しています。

 これに対し、エリザベット・ボーヌ首相は、同日行われたニュース番組のインタビューの中で、国全体としては、「4回目のワクチン接種を進めている」、「公共交通機関でのマスク着用義務化をとるつもりはない」と答えています。

 彼女は、このインタビューの中で、「もちろん、公共交通機関内や人混み、閉鎖空間でのマスク着用は強く推奨しますが、それは、もうフランス国民はよく理解していることで、私もそのような場所ではマスクを着用しています」と語っています。

 彼女の言っていることはもっともなことですが、このもっともな理屈は一般的なフランス人には通用するものではありません。

 この発言を聞いて、私は「おいおい・・この人、大丈夫か・・?」と思ってしまいました。

 もちろん、彼女の言うように、多くのフランス人は公共交通機関や閉鎖空間、人混みでマスクが必要なことを理解しているかもしれませんが、理解はしていても、義務化されなければしないのが一般的なフランス人なのです。

 公共交通機関でのマスク義務化が発表されたニースで、「来週からニースでは公共交通機関でのマスク着用が義務化されますが、この件についてどう思いますか?」というインタビューに答えている女性が、「今は公共交通機関内でマスクをしていませんが、マスク義務化は賛成です。この感染拡大には必要なことです。来週からは私も公共交通機関ではマスクをします」と躊躇いなく答えていました。

 このインタビュー映像を見て、「これこれ・・フランス人はこれなのよ・・」と思いました。マスクが必要だと思っているなら、今すぐにでもすればいいのに、義務化されなければしない、義務化されるのなら、します・・という人がきっと大半なのだと思います。

 6月末の時点で行われた世論調査によると、フランス国民の71%が公共交通機関でのマスク着用義務化を望んでいるという結果が出ています。にもかかわらず、パリの公共交通機関内でのマスク率は一向に上がってはいません。

 この現状がその答えです。必要だと思っていても、義務化されなければマスクはしないのです。そして、義務化してほしいと思っているのです。

 現在のボーヌ首相の様子を見ていると、彼女が首相に就任する際に、新旧首相の交代の挨拶の中で、カステックス前首相が「フランス人は要求の多い国民で、額面通りには受け取らない。しかし、彼らはそれに対処する方法を知っている。彼らは偉大な人々であり、政治的な人々だ」「また、マティニョン(首相官邸)の住人に批判が集まるのは必至だ」と彼女に警告したことを思い出します。

 彼女の言っていることは正論ではありますが、それがそのまま通用しないのが、フランス人です。この公共交通機関内でのマスク義務化問題をはじめとして、新内閣は発信力が弱くなり、基盤が揺らいでいます。正論だけで押し通すことができるエリート集団ではなく、一般大衆を動かしていかなければいけないことを彼女はもう少し理解する必要があります。

 このままでは、他の案件に関しても、この優等生発言をする彼女は受け入れられないのではないか?と案じられてしまいます。

 また、これから本格的なバカンスシーズンに突入するにあたって、パリにも観光客が増えてきました。メトロの中などで気になるのは、特に観光客のマスク率が低いことが目につきます。

 外国から来る観光客にとって、フランスはマスクが必要のない国として認知されているのです。バカンスに来てまで、マスクなどしたくないに違いありませんが、現在のフランスはそんな状態ではありません。

 バカンスに来ている観光客が感染を拡大させる危険も大いにあることなのです。ニースなどは、観光客も多い地域なので、ニース市長の決断は極めて妥当であると思います。

 1日の新規感染者数が20万人を突破しただけでなく、フランスの集中治療室は、コロナウィルスによる患者で、すでに20%占拠されており、これはもうただの風邪と変わらない・・と言っていられる状態ではなくなっています。

 ワクチン接種が感染を防ぐものではなくなっている現在、ワクチンパスの復活はあまり意味がないと思いますが、せめて公共交通機関内でのマスク義務化はフランス全土でしてほしいのです。


ニース公共交通機関マスク義務化復活


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