2022年7月22日金曜日

夏のソルド(バーゲン)の激しい衰退ぶり

   


 今年の夏のソルド(バーゲン)は、6月22日〜7月19日まででした。

 ここ数年、パンデミックが拍車をかける感じで、年々、このソルドは盛り上がらなくなっているところ、今年はインフレによる全ての物価の上昇がさらに消費者の購買意欲を削いだ形になったと言われています。

 もともと、フランスでは、国が夏と冬のソルド期間を指定するという、摩訶不思議な方法をとっているのですが、これには、20年以上前に私がフランスに来た頃から、奇妙なことをするのだな・・と思っていました。

 私自身は、年齢的なこともあるのでしょうが、あまり物欲がなくなり、(残るは食欲のみ)若い頃のように、あの洋服が欲しいとか、この靴が欲しいとかいう衝動にかられることも極端に減少していて、どちらかというと、持っているものを少しでも処分していこうとしている気持ちの方が強いので、あまり一般的ではないかもしれませんが、正直、今年のソルドが始まった時期も気づかずに、数日してから、たまたま買い物に出掛けて、そういえば、もうソルドが始まっているんだ・・と気がついたくらいでした。

 私の場合はかなり極端なのかもしれませんが、以前は、会社の同僚などが来週からソルドが始まるから、下見に行かなきゃ・・などと言っていて、張り切ってソルドに臨んでいて、実際にソルドが始まった直後に戦利品などを披露したりしていたのをちょっと冷めた目で眺めていました。

 しかし、そんなことをしている人も周囲にはいなくなり、マスコミなどでも以前は、「明日から夏のソルド!」などと報道していたのに、そんなこともなかったようで、今年などは、マスコミが騒いでいるのは、「今年のソルドの売り上げが激減した!」ということのみで、全く、消費者の動向が変化してしまったと言わざるを得ません。

 今年のソルドの集客数は20%低下、売上は10%低下したとかで、それでも売り上げが10%しか落ちていないのか・・とびっくりしたくらいです。

 この一番の原因はネットショッピングの拡大で、ネット上では、ソルド期間などというものは、あまりきっぱりしていないため、いつでも自分の希望する価格帯のものを買い物することができ、何もこの期間を待って買い物をする必要がないわけです。

 例えば、アマゾン(フランス)に関して言えば、2019年から2021年の2年間で、売り上げは68%増と言われています。配送や返品のシステムまでが、かなり簡易化され、素早いので我が家も昨日、注文した電化製品が今日、届き、試してみた結果、機種が合わなかったために即日、返品し、荷物を預かってくれるところに預けてきたら、すぐに返金の通知が届き、これなら、わざわざ店舗に買い物に行くよりも、返品する際でもずっと早くてスムーズでこれでは、わざわざ買い物に行く必要もないなと思ってしまいます。

 これと同じで、例えばネットで洋服などを買ったとしても、これまで試着しなければ、不安で買い物できなかったものなども、一応、買ってみて、家で試着して気に入らなければ返品することも簡単で、むしろ、店舗に行って買い物して、店舗に返品するなどとなったら、人を介す分だけ、お店で長いこと待たされ、ミスも多く、感じも悪く、さぞかしうんざりすることも多かろうに・・などと思ってしまいます。

 また、このソルドの衰退には、leboncoin(ルボンカン)、や Vinted(ヴィンテッド)などのフリマアプリ(フランス版メルカリのようなもの)の急成長もあり、もともと古着や中古品などに価値を見出す文化のフランス人には、もってこいのシステムで、全く使用されていない新品でさえも、出展されているにもかかわらず、一般の市場よりは、破格の値段で買い物ができ、また、値段の交渉や商品の配送、受け取りなどのシステムもかなり配慮されて作られているうえに、ヨーロッパの他の国々ともやりとりができるため、この市場が2021年には、150%増加するという急成長を遂げていることも、ますます一般の店舗のソルドから、客足を遠ざけています。

 私もleboncoin(ルボンカン)、や Vinted(ヴィンテッド)など、両方に登録してありますが、私は不用品を処分するばかり(つまり売るばかり)ですが、確実に売れていきます。

 それでも、世界をリードするファッションの発信地でもあるパリの店舗としては、やはりシーズンごとの流行というものはあり、定期的にソルドのようなもので、その年の在庫を処分していくことは必要なのかもしれませんが、実際に、人気の店舗などは、ソルドなどしなくとも、お店には行列ができていて、どちらにしてもソルドなどというものは、あまり意味をなさなくなっているということで、ましてや国がこのソルド期間を設定するなどナンセンス。

 実際にソルド期間が終わっても、在庫を処分できないお店は、そのまま在庫を抱え込むわけにはいかないので、「特別プロモーション」などと呼び方を変えて、実際のところは、割引を続けています。

 消費者の買い物の仕方が大きく変化していることで、全く意味をなさなくなっているこのソルド期間を国が設定し続けることは、なんだか空虚な感じさえしてしまうのです。

 以前は、夏のソルドの最終週などは、店舗の一部には、秋物が登場し始め、冬のソルドの最終週には、春物が登場し始めていたりしたのですが、現在は、ソルドが終わっても売れ残りの商品を売り続けるしらけた状態。

 よほどの人気店でもない限り、一般の店舗がネットショッピングに対抗するのは、どんどん難しくなっていくのは、確実です。


夏のソルド 売り上げ大幅減少


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