2022年5月4日水曜日

約1ヶ月ぶりのマクロン大統領とプーチン大統領の電話会談

 


 ロシアによるウクライナ侵攻が開始される前後にかけては、かなり頻繁にプーチン大統領と電話会談していたマクロン大統領ですが、ウクライナの首都キエフ近郊ブチャにおけるロシアが行っていると見られる残虐行為が公表されて以来(3月29日以来)、プーチン大統領との電話会談がパッタリと行われなくなっていました。

 この間、フランスは大統領選挙があったこともあるとは思いますが、あまりに凄惨な状況に言葉を失ったのかもしれません。

 プーチン大統領と直接、話のできる人は、今、世界中にそんなにたくさんいるわけではなく、たとえ、説得が叶わなかったとしても、対話を続けることができる人がいることは大切なことで、これでマクロン大統領が、プーチン大統領とのコミュニケーションを絶ってしまうのではないかと少し心配でもありました。

 しかし、大統領選挙に再選が決まった直後に、「来週早々にもプーチン大統領とは話をする準備がある」と語っていたとおりにマクロン大統領は、昨日、プーチン大統領と約1ヶ月ぶりの電話会談を約2時間にわたって行いました。

 マクロン大統領は、ロシアがウクライナに対して行った侵略戦争がもたらす結果の極めて深刻さを改めて強調し、マリウポリとドンバス情勢について深い懸念を表明し、ロシアに対し、ここ数日始まったアゾフスタル製鉄所からの避難を人道支援団体と連携して継続させ、国際人道法に従って避難民が行き先を選択できるようにするよう要請しました。

 また、世界の食料安全保障への影響を考慮し、黒海を経由するウクライナの食料輸出に対するロシアの封鎖を解除するために、関連する国際機関と協力する用意があることを表明しました。

 そして、ロシアに対し、この壊滅的な侵略を終わらせることで、国連安全保障理事会の常任理事国としての責任を果たすよう求め、平和とウクライナの主権と領土保全の完全な尊重を可能にするための交渉による解決に向けて努力する意志を引き続き表明しました。

 一方、プーチン大統領は、「西側諸国はウクライナが行っている残虐行為を無視している。止めるように圧力をかけるべきだ」と主張。また、「西側諸国はドンバス地方の町や集落に対する戦争犯罪および大規模な砲撃を終わらせる手助けが可能である」と提案。

 「西側諸国がウクライナ当局に適切な(ロシアにとって)影響力を行使し、ウクライナへの兵器供給を停止すれば、これらの残虐行為に終止符が打てる」と語りました。

 ウクライナが残虐行為を止めるために圧力をかけよと言いながら、ウクライナへの兵器供給を停止すれば、残虐行為に終止符が打てるという支離滅裂な話。

 そもそもロシアがウクライナに侵攻しなければ、西側諸国もウクライナへの兵器供給などしないわけで、ロシアが停戦しない限り、西側諸国も兵器供給を止めるはずはないのです。こうして、二人の電話会談がなされている間にも、マリウポリでは、国連と赤十字の支援により、アゾフスタル製鉄所から民間人を一部避難させた後も、民間人が避難している建物を含む原発の領土に発砲し続けています。

 先日、ロシアのラブロフ外相の「ヒットラーにはユダヤ人の血が入っていた」との発言(ウクライナのゼレンスキー大統領がユダヤ系であるのに非ナチ化のために戦うか?ということについての正当化しようとする稚靴な言い訳)にイスラエルが激怒した話が伝えられていましたが、このラブロフ外相の発言によって、イスラエルはエストニアに対してイスラエル製スパイク対戦車ミサイルのウクライナへの供与を許可しています。

 イスラエルはこれまで、このウクライナ戦争に関して、ロシアへの経済制裁も武器供与も行わず、中立な態度をとってきましたが、ロシアはこのイスラエルをも怒らせてしまいました。

 やることなすこと、すべて裏目裏目にでて、さらに残虐行為を加速させている感のあるロシアですが、残念ながら、マクロン大統領との会話は平行線のままのようです。

 しかしながら、マクロン大統領は、今後も交渉による解決に向けて努力する意志を示しているので、一時中断していたマクロン大統領とプーチン大統領の電話会談は続くものと思われます。

 今回も2時間以上にもわたる長い電話・・仲の良い友人となら、2時間の長電話もなんのことはありませんが、明らかに意を反する相手とこんなに長時間、怒らせないように、また、自分も怒らないように電話を続けることは、大変な緊張状態です。

 いみじくも、大統領に再選された際にプーチン大統領は、マクロン大統領に対して、「新しい任期での成功とともに、健康をお祈りします」という不気味なメッセージを送っています。

 しかし、プーチン大統領も大変なストレスの中、心身ともに健康ではない気がします。


マクロン大統領とプーチン大統領の電話会談


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