2022年5月18日水曜日

カンヌ国際映画祭開幕セレモニー サプライズゲストはウクライナのゼレンスキー大統領

  


 パンデミックのために2020年には、開催が延期されたり、今ひとつ盛り上がりに欠けていた2022年カンヌ国際映画祭が開幕し、久しぶりにコロナ前の人出に沸き、ようやく取り戻したこの国際的なイベントの盛況ぶりに、カンヌの街、ホテルやレストラン、映画関係者は、祝祭ムードに包まれていることで喜びに湧いています。 

 昨日、今年が75回目にあたるこのカンヌ国際映画祭の開幕セレモニーが行われ、レッドカーペットが敷き詰められた会場は、満席状態、華やかな服装にマスク姿はもうどこにも見当たりません。

 煌びやかにセレモニーが始まって、まもなく、司会の女性に、「今日はスペシャルゲストが登場します」と紹介されて、スクリーンに登場したのには、なんと、ウクライナのゼレンスキー大統領、これには、会場も一斉に立ち上がり、彼は大きな拍手で迎えられました。



 最初は、少々、緊張した面持ちだったゼレンスキー大統領も、すぐにいつものスピーチモードに入り、彼はこの晴れやかなカンヌ映画祭のオープニングで「チャーリー・チャップリン」の映画を引き合いに出し、映画と戦争の密接な関係について語りました。

 そして、彼は、チャップリンと1940年に公開された映画「偉大なる独裁者」に賛辞を送り、語り始めました。

「この物語では、始まりではなく、終わりが最も重要なのです」とこの物語の終わりとは、主人公が広場で行った演説のことを指していると思われます。それは大勢の兵士の前で、自由と寛容、人種の壁を越えた融和を訴えるもので、希望を捨てないことをラジオを通して語りかけるシーンです。

 そして、同時に「映画は沈黙ではないことを証明する新しいチャップリンが必要だ」とも語っています。

 20世紀の最も恐ろしい独裁者たちは映画を愛していました。以来、「人類は数々の素晴らしい映画を作ってきました。皆が、戦争の恐怖に続編はないと思っていましたが、当時も今も、再び、独裁者が現れました」

「現在の私たちの毎日に拷問を受けない日はありません。皆さんも、マリウポルの市立劇場がロシアの爆撃を受けたのをご覧になったことと思います。その劇場は、今日、皆さんが集まっている劇場と同じような感じでした。そこに避難していたのは、民間人でした」

 中略

「しかし、我々は戦い続ける、他に選択肢はありません、私は「独裁者」が負けると確信しています」

 そして、最後に彼は「私の話を聞いてくださっている全ての方々、絶望しないでください、憎しみはやがて消え、独裁者は死ぬでしょう・・私たちは、この目的を達成するために、常に自由の側に立つ映画を必要としているのです」と、楽観的な言葉で締めくくりました。

 元俳優でもあるゼレンスキー大統領ですが、こんな形でカンヌ映画祭に参加することになるとは、彼自身、俳優時代には、想像もしていなかったでしょうが、彼の発信力は、甚大なもので、今や彼をテレビで見ない日はないほどです。

 しかし、まさかカンヌ映画祭にまで登場するとは・・驚きで、本当にサプライズでした。フランスでは、カンヌ映画祭のオープニングセレモニーそのものよりも、ゼレンスキー大統領のスピーチばかりがクローズアップされる皮肉なことになっています。

 あらゆる国で、あらゆるツールを使って、彼は世界中に語りかけています。

 カンヌ国際映画祭には、ジャーナリストだけでも世界90カ国から4,000人以上が集まっています。この彼のカンヌ映画祭での演説も世界中でまた、報道されることになるでしょう。

 長期化する戦争の中で彼は世界中からの関心が失われないように発信し続ける役割を見事に果たし、世界中の協力を求めています。

 この彼の演説の数時間前、ゼレンスキー首相は、当日もマクロン大統領と電話会談をしています。この演説に臨むにあたって、彼らがどんな話をしたのか、気になるところでもありますが、マクロン大統領は、この電話会談の直後に、「ゼレンスキー大統領に対しては、防衛装備品、人道支援、経済・財政支援、燃料など、ウクライナのニーズに応えるとともに、司法の仕事を支援していくことを再確認しました」

 「ウクライナの人々の勇気は尊敬に値するものであり、私たちの連帯を期待するものです。これまでにフランスからウクライナに送られた人道支援物資はすでに800トンに達しています。我々はゼレンスキー大統領と、ウクライナの主権と領土保全の尊重を確保するための国際協定の枠組みの中で、フランスがウクライナに提供できる安全保障について議論しました」と発表しています。

 マクロン大統領は、プーチン大統領との電話会談では、一向に話が進展していきませんが、ゼレンスキー大統領との連携は頑強にとれているようです。


カンヌ国際映画祭 スペシャルゲスト ゼレンスキー大統領


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