2022年5月2日月曜日

フランスのメーデー 労働者の日と労働者のデモとスズラン

  


 5月1日は、フランスでは労働者の日として、祭日でお休みですが、今年は日曜日にあたり、多くの人にとっては、休日が1日減ってしまうことになります。(フランスは5月1日と8日が祭日なので、今年は2日とも日曜日)

 休日出勤というのも、普段の休日ならば、フランスとて、ないわけではありませんが、この日(5月1日)ばかりは、労働者のための休日ということもあり、基本的に法的に労働は禁止、この日に労働させる場合は、雇用者は労働者に対して、ダブル(職種によってはトリプル)の賃金を支払わなくてはならないため、普通の会社はまず休み、店舗とて、かなり閉店にしているお店が多く、比較的、静かな日です。

 しかし、どこもかしこも静かかというと、そういうわけでもなく、労働者の日ということもあり、デモが大々的に行われる日でもあります。そうでなくとも、毎週土曜日は、いつでもどこかでデモをやっている国なので、デモがあるからといって、とりたてて驚くことでもないのですが、メーデーという大義名分がある分、デモの動員数は、いつもに増して拡大する傾向にあります。

 今年は、大統領選挙の直後ということもあり、早くも新しいマクロン政権の提案している政策に反対する人々やデモに乗じて、暴力・破壊行為に及ぶ人々が出たりと、また、なかなかな騒ぎになったようです。

 今年のメーデーのデモは、フランス全土で11万6,500人、パリだけで24,000人に及びました。デモ隊がレピュブリック広場を出発してわずか数分後、黒い服、手袋、マスクをつけた機動力のあるデモ隊が、オベルカンフ通りでメインの行列から離れ、警察と衝突。

 さらに、レオン・ブルム広場では、マクドナルドの店舗が破壊され、窓には反資本主義のスローガンが書かれました。 沿道では、銀行の支店、不動産会社、保険会社、有機製品の店などが同じような被害を被りました。

 また、デモの最終目的地であるナション広場に到着した行列の左翼指導者が警察と衝突し、投擲された弾丸に反応して催涙弾が発射される事態となりました。



 中には、火をつけられた店舗に消火活動にあたっている消防隊に殴りかかる人まで現れ、(なんと、女性)計45名が逮捕されています。

 一度、デモ隊の近くをたまたま通りかかったことがありましたが、警察や憲兵隊が重装備でものすごい警護をして先導しているのにびっくりしたことがありましたが、そこまでしても、このような暴力・破壊行為が、デモの本体から派生して起こるのです。

 現在のロシア国内の状況などを見ていると、デモの権利は認められるべきものだと思いますが、このような暴力・破壊行為は本来のデモの意味とは別問題です。

 ジェラルド・ダルマナン内務大臣は、この事態を「容認できない暴力」と非難し、パリ消防隊も「人々や市の資産を守り、デモの進行を保証する消防隊員への野蛮行為は恥ずべきことである」と抗議のツイートを発表しています。

 ここのところ、(特に年末年始に感染が異常に拡大し、ウクライナ戦争が開始されて以来)ここまでデモ隊の一部が暴徒化することは、あまりなかったので、ここまでの騒ぎは久しぶりでもあり、これよりずっと悲惨な戦争の状況を見慣れてしまっているために、今までよりも驚かなくなってしまっている自分にも驚きです。

 しかし、今回の大統領選挙では、想像以上に、今の政権に満足していない勢力が拡大していて、しかも、マクロン大統領に投票した人でさえも、必ずしも彼の政策に満足して投票したわけではないことからも、このメーデーを皮切りに、今後、このデモがますます拡大していく危険性は無きにしも非ずだと思っています。

 また、フランスでは、メーデーには、労働者に感謝して、スズランの花を送り合うという風習もあり、街中でスズランを売っている人を見かけます。このスズランの販売は、販売用に栽培されたものではなく、庭や森で摘んだスズランを販売することが一般の人にも許可されています。(ただし、お花屋さんから40m離れた場所で人や交通を妨げないこと)

 なんとも、ほっこりさせられるスズランの販売事情と、デモの暴徒化により燃やされる店舗と警察と争い炎と黒煙があがる風景に、そのどちらもが同時に存在しているパリの不思議を思うのです。


5月1日 フランスのメーデー


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