海外で長く生活していると、日本からの客人をお迎えすることがあります。今は亡き母も一度、友人とパリに来てくれたことがありました。その後、叔父夫婦、従兄弟が新婚旅行で来てくれたこともあったし、パリの大学と交流のあった大学教授の叔父(現在は退官しています)などは、 在任中は毎年のように学生を連れてパリに来ていました。
この叔父は、どちらかというと私にとっては、その度に叔母が用意してくれる大量の日本食を運んでくれる宅配便のような存在でした。
その他、親友も一度、弟、叔母二人、従姉妹たちやその友人など、思い起こせば、これまでずいぶんたくさんの人が来てくれました。
家に泊まってくれた人もいれば、友人などと一緒でホテルに滞在していた人もいましたが、こちらもせっかく日本から来てくれているのだからと、できるだけ都合をつけて、一緒にパリの街を歩いたり、家に招いて食事をしたり、外食したりと、その度に楽しい時間を過ごしてきました。
友人や叔父、叔母、従兄弟、従姉妹など、直接の知り合いはもちろんのこと、遠い親戚で、母の従姉妹の娘さん(はとこ?)など、日本では会ったこともなかった女の子が「ワーホリで1年、パリに行くので、何かの時は、よろしく!」などということもあり、パリ滞在中に、何度か家に食事に来たりしていたこともありました。
それが、このコロナ禍以来、ぱったりと日本からの客人が途絶えてしまったのですが、コロナ騒ぎが始まってしばらくして、従姉妹から「知り合いがパリのグランドエコールに留学するので、何かの時のためにあなたの連絡先を教えても良いですか?」と連絡が来て、グランドエコールに通うような人に私がチカラになれることはないと思うけど、まあ、何があるかわからないので、どうぞ・・」と返事をしておきました。
その方は、律儀にも時々、パリに来られてからは、律儀にメールで近況などを知らせてくださっていましたが、いつもなら、「一度、家で食事でもしませんか?」と声をかけるところが、今回ばかりはパンデミックで、あまり人と食事というのも躊躇われ、たまにメールで連絡を取る程度で、一度もお目にかかることもなく、なにやかやと毎日が過ぎていき、正直、私はその方はとっくに日本に帰国されたとばかり思っていました。
しかし、先日、「しばらくご連絡しておりませんでしたが、学校のプログラムも終了の目処がたち、来月、日本に帰国することになりました。つきましては、お世話になった(結局、私はなにもしていないんだけど・・)お礼に一度、お伺いしたいのですが・・」というメールを頂き、一時のような感染騒ぎでもなくなったので、「それでは、よろしければ、家で一緒にお食事でもしませんか?よろしければ、奥様もご一緒にどうぞ」と連絡したら、快諾してくださり、彼らと一緒に家で食事をすることになりました。
家の道順を知らせて、「バスを降りたら電話してください」と約束をして、当日になって、食事の支度をしながらふと、「そういえば、私は彼のことを全く知らない」ということにその時になって気がついて、従姉妹からは、お花の生徒さんで、学生時代(なんと東大生)に通ってきていたお花の生徒さんとしては、極めて異色な生徒さんで、卒業後は日本企業に勤めたのだけど、この度、その企業からパリに留学することになった・・普通の人なら、放っておくんだけど、とても良い人だったから・・なにかあったら、チカラになってあげて・・」と言われていただけで、彼の年齢もどんな人なのかも全く知らないのでした。
しかし、従姉妹が良い人というのだし、同じ日本人でもあり、こちらでも、すこぶる優秀な学校に通っているということもあり、メールの文面なども極めて丁寧で丁重で家に招くということもあまり心配はしていませんでした。
さすがの日本人、約束した時間ぴったりに来られるあたりは、日頃、時間にルーズなフランス人に慣れてしまっている私には逆にびっくり!さすが日本人だと感心!フランス人の場合、約束の時間を過ぎた頃にようやく電話がかかってきて、「これからバスに乗るところ・・あと何分くらいで着きます」などと連絡がくる感じ、下手すると少し遅れるのが礼儀・・などと言い出す人までいます。
結局、お昼の食事をしながら、日本でのこと、こちらに来てから色々な国の学生と関わった話など延々と8時間近くも食べて飲んでおしゃべりをして、楽しい時間を過ごしました。もう帰国まで1ヶ月程度しか残っておらず、もう少し早く気付いていたら、色々なところにご案内もできたのに・・とパンデミックボケしていたことをちょっと後悔したくらいでした。
考えてみれば、もしも日本にいたならば、絶対に接点のなかった人たちです。前述したワーホリに来ていた親戚の女の子とて、日本では会ったこともなかった遠い親戚です。しかし、海外にいるということで、思わぬ繋がりができて、一緒に食事したり、話をしたりする時間を持つということも楽しいものです。
彼らにとっても、私にとっても長い人生のうちの、ほんの一瞬ではありますが、日本にいたら、絶対に会うことがなかったであろう人に会えるということも海外生活ならではのことなのかな?と思ったりしています。
留学生 海外生活
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