2022年8月27日土曜日

フランス 教育革新基金に5億ユーロ投入

  


 私がフランスで仕事を始めたのは、娘が1歳になるかならないかの頃で、初めての子育て、しかも、まだフランスに来て1年も経たないフランスのこともよく知らない状況で、周囲には、子育ての先輩が結構いて、色々と忠告をしてくれました。

 まあ、同じフランスでの子育てといっても、それぞれ、家族構成や生活環境は違い、全てを参考にできたわけではありませんでしたが、私にとっては、大きく2つのことを心に留めていました。

 そのうちの一つは、「放っておいたら、日本語はできなくなってしまうから、心して日本語教育には取り組まなければいけない」ということと、「学校は小学校から中学、できたら高校までは、私立に入れた方が良い」ということでした。

 日本語教育については、別にも書いているので、ここでは省くことにしますが、保育園、幼稚園と経て、少しずつ、フランスでの生活の中で、周囲の様子なども見えてきて、外で目にする子供の様子などを見ていて、これは、下に引きずられたら、大変なことになってしまうだろう・・とやはり子供の学校については、真剣に取り組まなければならないと思うようになりました。

 大人でも同じですが、フランスは上と下の差が激しく、クズは限りなくクズで、クズの予備軍は、残念ながら、子供の時から始まっていることを周囲のゴロつきのような子供たちを見ていて思うようになりました。

 私たちにとっては、引越しのタイミングと重なり、娘の小学校の入学の申し込みをした時には、すでに遅く、娘の入学希望はウェイティングリストに乗せられることになりましたが、たまたま最後のタイミングで娘が良い成績表をもらってきたので、それを希望の学校に送ったところ、学校から面接の連絡が来て、結局、小学校入学時には、娘は私立の学校に通えることになりました。

 それからは、私は、ほぼ、学校についての心配はしておらず、せっかく入れた学校・・追い出されないようにね・・くらいで、その他は、日本の学校とは異なる様々なシステムに「フランスの学校というのは、こんな感じなんだ・・すごいな・・」などと感心させられることも度々ありました。

 私は、娘の通っていた学校にとても満足していたので、その学校に入るまで、公立の学校に行かせて、クズの仲間入りをしたら大変・・などと思っていたことはすっかり忘れて、「フランスの教育はなかなか素晴らしいのに、世間一般を見回すと結果は、これってなぜだろうか?」などと不思議に思っていたくらいでした。

 しかし、後から思うに、娘を通わせていた学校は、世間一般の学校とは、全然、違う学校だったわけで、やはり、周囲の子育ての先輩方に言われていた「小学校からは私立へ行かせた方がいい」という忠告は、まことに有難いものであったと感謝しています。

 どうにか、娘が無事に成長してくれたのも、大きくは、この学校のおかげでした。

 現在の厳しい世の中にハッキリと現実をつきつけたマクロン大統領が、教育についても提言を始め、「私たちの教育システムは、上手く機能していない・・」と指摘し、教育を革新するいくつかのテーマを示し、これにかかる予算「教育革新基金」を5億ユーロを提供することを発表しました。

 やはり、一般的なレベルのフランスの教育には、問題があることを彼は見過ごしてはいなかったのです。

 幼稚園では、子どもの発達への配慮を強化。小学校では、引き続き基礎的な学習を重視し、スポーツの日常的な練習を一般化。5年生からは、週1回の半日授業「アベニール」を導入し、生徒が「多くの職業、特に技術、手作業、関係性のある職業を発見」できる機会を設けます。

 高校については、コアカリキュラムにおける数学の強化を挙げています。ここのところ、フランスの子供の数学の学力低下が語られることもしばしばあり、例えば、ウクライナから避難してきている子供たちがフランスの学校に通うと、フランス語については問題があるのは当然としても、ウクライナの子供たちの数学のは、フランスの学校の1年近く先のレベルだった・・などという話を聞いたりもしました。

 マクロン大統領は、非常に現実的で現実をはっきりと述べるので、嫌われるところもありますが、特に教育に関しては、この下を救いあげる努力、教育に力を入れようとしていることが伺えます。

 フランスはれっきとした格差社会で、なかなかこの差を埋めるのは、容易ではありませんが、少しでも社会の底辺にいる人々に機会を与えるチャンスを設けようとしているのがわかります。

 教育は、すぐに成果が出るものではありませんが、少なくとも将来を担う子供たちの教育についても、他の政策同様、あるいは、それ以上に注力しようとしてくれている社会には、好感をもつことができます。

 また、教師といえば、低賃金のために優秀な人材が集まらないこともあり、教師の賃金についても、2,000ユーロ(net)以下でキャリアをスタートすることはない、また既存の教員については、10%の賃上げを約束しています。

 フランスにいるとはいえ、日本人ゆえ、ついつい比べてしまう日本ですが、現在の教育事情については、よくわかりませんが、少なくとも、子供の教育についての話題が日本の政治家からあまり上がらないことは、とても残念に思っています。


フランス 教育革新基金5億ユーロ


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