とにかく、今、パリで大人気で、いつ行ってもすごい行列のできている店として有名で、一度は行ってみたいな・・と思っていました。
今、多くの人がバカンスで出かけていて、飲食店の入店には、ヘルスパスが必要になったばかりの今なら、少しはマシなのかもしれない!と思い、それでも行列覚悟で行ってきたのが、「KODAWARI RAMEN TSUKIJI こだわりラーメン築地」です。
フランス人の昼食の時間のピークはだいたい13時からで、朝11時45分開店のこのお店、開店と同時にというわけにもいかず、それでも13時前までには何とかと・・着いたのが12時半頃で、すでにお店の前には行列ができていました。
このあたりは、ラーメン屋さんをはじめ、日本食のレストランの多い地域ではありますが、この店舗のある通りは、その日本食レストラン街とも言われるサンタンヌ通りからは、2本ずれている通りで、小さめのホテルや事務所、住宅の多い比較的、静かな通りにあります。
一見、目立たないこの通り沿いの店舗に絶え間ない行列ができ続けることは、なかなか珍しいことです。
私が並んだすぐ後にもすぐに延々と行列は伸びていき、途中でお店の人が出てきて、「隣のビルの入り口は避けて並んでください!警察に通報されちゃう!」と行列の交通整理をするほどで、並ぶのが嫌いなはずのフランス人が並んでまで入りたいラーメン屋さんは、その名前どおり、店内の内装からして、かなりのこだわりぶりで、ちょっとした昭和の日本の築地の空間を体験するようなテーマパークのようでもあります。
何も知らずに通りかかる人は、その行列を見て、何ごとか?とお店を二度見していきます。
私もフランス人に負けず劣らず並ぶのが嫌いな人間なのですが、さすがにここは、もう並ぶことを覚悟で来ていますから、周囲の人の様子を観察しながら、待つことおよそ30分。ラーメン屋さんだけあって、回転は悪くありません。
行列している段階で、すでにヘルスパスのチェックは済ませ、店内に入ると、どういうわけか、(ら)と(ま)にアクセントのついた元気なフランス人のおばさんの「いらっしゃいま〜せ〜!」という雄叫びが響き、まずはその店内の様子に圧倒されます。
わざと雑に積み上げられた発泡スチロールには、「北海道さんま」「丸中しれとこ食品」「鮮さんま 高級鮮魚」などと印刷されたシールが貼られていて、「築地」と書かれた大きな提灯、束になってぶら下がっている「築地場外市場 場外市場は移転しません」と書かれたレジ袋、ゴム手袋、軍手、ぶら下げ式の秤、ポリバケツ、ふぐ、鮮魚に見せかけた魚が乱雑に並んでいて、なぜか「伊藤食品」という大きなエビが描かれた看板、とんかつソースの段ボール、新巻鮭の木箱などなど、まるでパリの街とは異空間の徹底した昔の日本の築地市場の雰囲気を演出しています。
中には、解体されようとしているマグロがど〜んとテーブルに置かれていたりもします。
静かなトーンで、BGMにも築地の市場の「らっしゃい〜〜!らっしゃ〜〜い!」という日本の市場独特な喧騒がうっすらと流されたり、遠くから聞こえるようなカモメの鳴き声がそれに時々、追加されたりしている「こだわり」ぶりです。
席ごとに感染対策のためにバリアが設けられているのも日本っぽい心くばり |
肝心のメニューですが、この店舗は、鯛ベースのスープのものと、イワシベースのスープのものが中心で、メニューの種類はそれほど多くはありません。日本人の私も食べたことのないような独特な濃厚なスープは、鯛やイワシの他に、昆布、椎茸、日本から輸入された3種類の大豆を使っているとかで、スープをしみじみと味わってみても、メインとなる鯛やイワシ以外は、一体、何を使っているのか、なかなか解明し難い複雑な味わいです。
しいて言えば、鯛をベースにした鍋料理のスープを凝縮したような感じでしょうか?イワシベースのスープは、さらにイワシのパンチが強烈です。
こだわりラーメン鯛 トッピングなしのシンプル チャーシューとローストされた鯛が乗ってる |
麺は、アッシー・ロマンス(グラン・エスト地域圏)のKODAWARI畑の小麦からのものを使用し、24時間熟成され、手揉みした麺でまろやかで、どちらかというともっちりタイプの麺です。
また、上にのせられているチャーシューがこれまた絶品で、しっとりと味わい深く、肉自体のクォリティが高いのか?見事なチャーシューに仕上がっています。このチャーシューの肉もバスク地方の家族経営の農場からのものが使われています。
また、魚にしても、イワシはブルターニュから、鯛は地中海沿岸から届けられています。
気になるお値段ですが、シンプルなメニューならば、13.5ユーロ(約1,750円)と、他のパリのラーメン屋さんと比較しても、それほど高いわけでもありません。しかし、トッピングの味玉(2€)やチャーシュー(3€)、鯛のフィレ(3€)、イワシのフィレ(3€)などを追加していくとなかなかな値段になります。
何れのラーメンにもシェフおススメのトッピングメニュー付きのものがありますが、これだと、18.5ユーロ(約2,400円)になります。
ラーメン屋さんには付き物の餃子(KODAWARI GYOZA)もありますが、これは、どう考えても餃子ではなく、これは、ちょっとこだわりすぎた感が否めません。(具は魚)
こだわり餃子 |
その他、沢庵、枝前、きゅうりの漬物、なめろう丼などのサイドメニューがあります。
飲み物も、ビールやコーラに加えて、梅酒、日本酒、ラムネや日本の緑茶などがあるところもちょっと他のパリのラーメン屋さんとは違うところです。
KODAWARI RAMEN メニュー |
全ての料理は独自の自家製を貫いており、その全てに「こだわり」の強さが窺い知れます。
日本で長いこと修行したフランス人シェフが作るお店全体としての「こだわり」には、店内の様子を見ていても、逆にフランス人が作る日本のイメージはこういうものなのか?と思わせられる気もします。
「こだわる」ことが大好きなフランス人、一時、日本語の勉強がてら、パリの他のラーメン屋さんでアルバイトしていたことのある娘が、「やたらとこのスープは自家製か?この麺は自家製か?」と聞く人が多いと聞いてびっくりしたことがありましたが、この文字どおりの「こだわり」がフランス人にこれだけウケているのも、フランス人のツボを抑えた「こだわり」にこだわっているからなのかもしれません。
しかし、実際の現在の築地は豊洲に移転しており、この築地の市場を再現したような光景は、どこか昭和を思わせる光景で、決して現在のものではありません。
先日、オリンピックの際にフランスで東京の光景として使われていたモニュメントは、スカイツリーではなく東京タワーだったりしたことからも、どうしても、フランスの日本のイメージは、「昭和のまま」で固まっているような気がするのでした。
*KODAWARI RAMEN TSUKIJI(こだわりラーメン築地)
12 Rue de Richeleu 75001 Paris
営業時間 11:45~23:00
メトロ 1・7番線 Palais Royal または、7・14番線 Pyramides から徒歩5分以内
KODAWARI RAMEN を紹介している映像
*KODAWARI RAMEN YOKOCHO(こだわりラーメン横丁)姉妹店 鶏ベースのスープ
29 Rue Mazarine 75006 Paris
営業時間 11:45~23:00
メトロ 10番線 Mabilon
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