マクロン大統領が7月12日にヘルスパス(ワクチン2回接種証明書、48時間(現在は72時間に変更されている)以内のPCR検査の陰性証明書、6ヶ月以内にコロナウィルスに感染した証明書)が多くの場所へのアクセスに必要になることを発表した時には、彼には、恐らく目前に控えたバカンスを利用して、ワクチン接種を国民に急がせるという目論見があったはずです。
実際に、それまで停滞気味だったワクチン接種の予約は、一時サイトがパンク思想になるほど、多くの人がワクチン接種を急ぎ始めました。
そして、もう一つの彼の予想には、バカンス期間中は、デモを起こしにくいという算段があったに違いありません。実際に、例年は、夏のバカンス期間中には、デモはあまり起こらず、9月以降のデモやストライキの日程を予告して、皆がバカンスに出てしまうのです。
しかし、今回に限っては、マクロン大統領のヘルスパス発表以来、5週連続でどんどん規模を拡大してデモが起こり続けています。
「フランスを解放しよう!」「選択の自由を認めよ!」「健康独裁反対!」「マクロンは出ていけ!」「我々は実験用のラットではない!」「私たちは、ワクチンを義務化される奴隷ではない!」「クレイジーな健康対策は止めよ!」などなど、彼らの掲げているスローガンだけでも、色々なものがあります。
もはや昨今の何のデモにもかこつけて登場する黄色いベスト運動の人々や、とにかくマクロン政権のやることなすこと気に入らない人々、また、子供へのワクチン接種への危険性を訴える女性たちが子供のため、孫のためにと参加しています。
終いには、政府がアンチヘルスパスの抗議を過小評価していることを非難している人々までいて、これでは、駄々をこねる子供を相手にせずにいる親に文句をつけているようなものです。
しかし、アンチヘルスパスは、必ずしもアンチワクチンとも違い、ワクチンは義務化ではないと言いながら、ある程度の期間はPCR検査の陰性証明書を代替品として与えながら、10月にはPCR検査を有料化し、事実上、ワクチン接種の義務化に追い込むような強引なやり方に反発しているものでもあるのです。
たしかに最初にこの発表を聞いた時は、私もかなり強引だなという印象を受けました。いつもだったら、凄いデモになるだろうけど、夏のバカンス中だからな・・くらいに思っていたのですが、やっぱり5週連続でデモは起こっています。
一部の感染症専門家や医療関係者は、いっそのこときっちりと「ワクチン接種義務化」するべきだとの声も上がっています。
しかし、ワクチン接種の義務化とすれば、それはそれで大反発は間違いなく、政府としたら、このヘルスパスは苦肉の策だったに違いありません。
5回目のデモは若干、先週の人数を下回ったものの、依然として、そのデモは全国的なもので21万人以上が参加している大掛かりなものでした。しかし、これが今ひとつ、求心的な力を持たず、政府が動じないのは、括弧とした先導者がいないからだとも言われています。
ワクチンは嫌、ヘルスパスも嫌、マスクも嫌、でもロックダウンも嫌・・では、どうしたらいいと言うのでしょうか?
フランスの感染状況は、ワクチン接種率が68.35%(2回接種済は 57.48%)とかなり上がってきたにもかかわらず、(実際には、この数字を下げているのは、17歳以下の年齢層と見られ、その他の年齢層では、76%以上まで上がっています)悪化する一方で、コロナウィルスによる入院患者はここ一週間で8,368人から9,600人まで、7日間で約1,300人近く増加し、集中治療室の患者数は、1,800人を突破(1ヶ月前は900人前後だった)し、約1ヶ月で倍増しています。
この感染のスピードを考えれば、もはや一刻の猶予もないのは明白で、政府は8月末までに5千万人ワクチン接種の目標を掲げています。
8月もあと2週間あまり、みんながパリに帰ってくる?ということは、感染が激増する可能性と同時にデモが激化する可能性もあるのです。
ワクチン接種の自由を主張する人々の意見とワクチン接種をして自由を勝ち取り、経済を回そうとする政府の意向はどこまでも平行線で、8月から9月にかけて、このデモはまだまだ続くでしょう。
フランス ヘルスパス反対デモ
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