2021年8月17日火曜日

フランスがドイツよりもワクチン接種が進んでいるのにドイツよりも感染が悪化している理由

  


 フランスの感染悪化は、着実に拡大しており、ついに、コロナウィルスによる入院患者数が1万人のしきい値を突破し、10,151人に達してしまいました。その数字に比例するように1日の感染者数も優に2万人を超える状態が続き、1日の死者数も100人に迫る勢いで、集中治療室の患者数も1,908人にまで上昇しています。

 昨年も8月下旬から徐々に感染悪化が進んでいったものの、昨年の夏の時点でのウィルスは、気温の上昇とともに、威力を弱め、1日の感染者数は2千人台、集中治療室の患者数も380人程度で、まさに桁違いでした。

 現在は、ワクチン接種もかなり進み、フランスのワクチン接種率は、69%(2回接種済は58.4%)に達しています。

 国民の半数以上がワクチン接種済みの状態であるにもかかわらず、現在のこの感染悪化の事態は、非常に深刻です。

 フランスはよく、アメリカやドイツ、あるいは、イギリスと比較して、自国(フランス)を盛り立てることがありますが、つい数日前にもマクロン大統領がツイッターで、フランスのワクチン接種率をアメリカとドイツと比較して、フランスが彼らよりも上回っていることをグラフで示し、「私たちは共に成し遂げることができます! なぜなら、フランスは、より強く、より団結し、より市民的で、より責任感があるからです。私たちは、フランスです!」という愛国心とフランスとしてのプライドに満ちたツイートをしています。



 しかし、アメリカは、あまりの人口の多さに、比較にはなりませんが、ドイツは、フランスよりもワクチン接種率が若干低く、人口が2千万人ほど多いにもかかわらず、1日の新規感染者数も4千人前後、集中治療室の患者数も548人、1日の死者数も20人前後と格段に被害を抑えられているのです。

 これには、いくつか理由が考えられますが、その一つは、ワクチン接種が拡大していく前にドイツはかなり厳しいロックダウンを長い期間、継続していたことが考えられます。それは、フランスよりもワクチン接種率が高いイギリスにも同じことが言えます。

 そもそも昨年末にイギリス変異種が出現して以来、イギリスは危機的状況を迎え、ワクチン接種もどこの国よりも早く対応し、ワクチン接種もものすごい勢いで進めてきたこともあるのですが、同時にかなり厳しいロックダウンを続け、感染者を抑えながら、ワクチン接種を進めてきた経過があります。

 イギリスに関しては、ワクチン接種率が高いために、感染悪化をフランスよりも抑えられているのは、納得できることですが、ワクチン接種率がフランスよりも低いはずのドイツがフランスよりも圧倒的に感染を抑えられていることは、注目に値します。

 先に述べたように、前段階での厳しいロックダウンも理由の一つだと思いますが、原因はそれだけではないはずです。

 ドイツ人は、比較的、ヨーロッパの中では日本人に気質が似ていると言われますが、衛生対策管理についての厳格さ、真面目さなどがラテン気質のフランス人とは違うのではないかと思っています。

 このドイツとフランスのワクチン接種率と感染者数の違いを見ていると、必ずしもワクチン接種だけで、感染を防げているのだろうか?と感じずにはいられません。

 昨年の夏の終わりの感染状況の変化を見ると、人々がバカンスから戻り始めて、秋頃から一気に上昇していった経過を考えると、ワクチン接種が進んでいるとはいえ、現段階で、すでに昨年の5倍もの患者が集中治療室を占領しているフランスの現状は、充分に危機的状況であると考えられます。

 夏のバカンスのピークも今週いっぱいで、来週からは、バカンスを堪能した人々が続々と街に戻ってきます。

 フランスは、ヘルスパスの適用範囲を広げ、規制を強化していますが、ヘルスパスとワクチン接種の拡大で、秋には押し寄せるであろう大きな波を乗り越えることができるのだろうか?と大いに不安になってきました。


フランスとドイツ 入院患者1万人突破


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