2021年8月23日月曜日

フランスでワクチン接種が進んでも感染拡大が止まらない理由

   


 パンデミックが始まって以来、一つだけ良いことがあったとしたら、それは、パリの街が少しだけ清潔になったことです。

 当初は、どのように感染が広がっていくのかもわからず、とにかく除菌・消毒が繰り返され、メトロの駅なども頻繁に掃除、消毒が行われていたため、いつになく清潔で、感染の恐怖はあったものの、それはそれで清潔になったパリの街がこのまま清潔にする習慣が浸透していってくれればいいなぁ・・などと思っていました。

 ロックダウンのために、あまり人が街に出なかったこともあって、街中のゴミも少なくなり、ゴミよりも路上に捨てられているマスクが気になるくらいでした。

 しかし、3回目のロックダウンが解除された頃から、ワクチン接種も急激に進み出し、ヘルスパス(ワクチン接種2回接種済証明書、72時間以内のPCR検査の陰性証明書、6ヶ月以内にコロナウィルスに感染した証明書)さえあれば、どこでも自由にアクセスが可能になりました。

 レストランやカフェも再開し、大勢の人がバカンスに出て、ヘルスパスさえ持っていれば、ほぼ日常と変わらない生活ができるようになって以来、人々の衛生観念も薄れ始め、以前と同じような地べたに平気で座り込んだりする光景が見られるようになりました。

 冒頭の写真は、パリの、あるパッサージュ内の光景で、未だ(というより益々)感染が増加し続け、1日の感染者が2万人を超える状況でありながら、地べたに平気で座り込んで、休憩している学生たち(引率者の大人も一緒)がパリ観光中に休憩している様子です。

 感染抑制のためには、ワクチンは強い見方ではありますが、一番重要なことは、個人個人の感染対策で、たとえ、このグループの人々が全員ワクチン接種済みだったとしても、感染を100%回避できるわけでもなく、公衆の大勢の人が土足で歩く通りに平気で長々と座り込む彼らの衛生観念の低さはフランスにとって致命的です。

 フランスがワクチン接種が進んでも感染拡大が止まらないのは、一人一人の感染対策、衛生観念の欠如が原因だと思わざるを得ないと私は思っているのです。人々が土足で歩いているところに平気で座り込む人たちは、そのままメトロに乗って、平気で座席に座っていると思うと、公共交通機関で気軽に着席するのもちょっと躊躇われるような気分になります。

 一時はすっかりきれいに消毒されていた駅なども、再び、そこはかとなく、またアンモニア臭を感じるようになり、また元の臭い駅に戻りつつあります。

 商業施設等に入る時には、手を消毒するように大抵の施設ではアルコールジェルが設置されているものの、義務化されている場所以外では、ほとんどマスクをしない人が増え、数万人が集まるデモでさえもマスクをしていない人がほとんどです。

 衛生観念の違い、生活習慣の違いと言ってしまえばそれまでですが、もともと、なぜ、フランスで(ヨーロッパで)これほどの被害が広がってしまったのかを彼らはまだ、わかっていないのだろうか?と、もどかしい気持ちになります。

 それでも、厳しいロックダウンや数々の罰金付きの規制、ワクチン接種の拡大で、いくつもの感染の波を乗り越えてきましたが、ウィルスも変異を続け、その威力を増している中、ワクチン接種だけでは感染が抑えきれていない理由がこの写真に見られる彼らの衛生観念の欠如にあることは明白です。

 染み付いている彼らの清潔さという感覚、衛生観念は、ワクチン接種では治らないのです。

 一方、コロナ前の日常から、いつでもどこでも清潔で、個人個人の感染対策も世界的にも高水準だと思われる日本が今回のパンデミック以来、最悪の感染悪化の状況を迎えていることは、フランスとは逆に個人個人の感染対策が原因ではなく、政府の医療体制の確保や感染対策(規制や補償)が正常に機能していないことが原因で、国民ばかりが煽りを食っている感が否めません。

 そのどちらもがバランスよく機能するということは、あり得ないのだろうか?と、フランスと日本の両方を見ていて思うのです。


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