2021年6月2日水曜日

トゥールーズ スクワット(アパート乗っ取られ)事件 フランスの居住権

   



 フランスでの権利の主張というのは、何においてもなかなかなもので、まず、物申す権利である「デモ」の権利は、第一回目の完全なロックダウン状態の時は、別として、それ以降のロックダウン下では、結局、デモの権利は、尊重され続けていました。

 また、しばしばデモにも発展するものでもありますが、フランスの労働者を守るための「労働者の権利」というものもかなりのもので、国自体がバカンスの権利や労働時間などについての雇用体系に関わる労働者の権利というものも(時には、行き過ぎのところも多々ありますが、)かなり厳格に守られています。

 この辺までは、まあ大目に見れば、まだ理解できないこともないのですが、フランスでの権利の中で、理解できないことの一つに居住権というものがあります。

 先月、トゥールーズに住む学生が、ロックダウン中に3カ月間、両親の住む実家にしばらく滞在している間に自分のアパートがスクワット(アパート乗っ取り)の被害にあい、自分のアパートに戻った時には、鍵が変えられていて、本人が自分のアパートに入ることができず、自分のアパートが乗っ取られて、他人が素知らぬ顔をして住んでいることを知り、愕然とし、途方に暮れるという事件が起こりました。

 彼は、留守中の3カ月間も家賃は遅れることなく払い続け、その彼が家賃を払い続けていたアパートには、知らない間に全く見ず知らずの人が住んでいたのです。

 スクワットをしようと狙っている人は、ポストなどの郵便物のたまり具合をチェックして、留守になっている家やアパートに目星をつけるのだそうです。

 考えてみれば、多くの学校や仕事がリモートワークに切り替わり、多くの人がパリから逃げ出し、同じアパートの人でも、並んでいるポストを見て、この人、ずっといないんだなぁ〜と思ったこともありました。

 彼は、警察に駆け込みましたが、警察は、自分で不法侵入者を追い出すことは、更なるトラブルを生む可能性があるとし、警察が不法侵入者を退去させるまで、それからさらに長い期間、自分のアパートを取り戻すまで待たなければなりませんでした。

 これは、彼がその時点の居住地としていた場所であったので、まだ、不法居住者を比較的、簡単に退去させることができましたが、それが、長い間、空き家として使用されていなかった家や別荘などの場合は、それが不法居住者とて、簡単に退去させることはできません。

 裁判沙汰になって、家をめちゃくちゃにされても、家を取り戻すのに、何年もかかることもあります。

 アパートの賃貸などにしても、長いこと家賃が滞納されていても、そこに住んでいる人には居住権というものが発生し、家賃を払わないからと言って、簡単に追い出すことはできません。

 私の知人にもパリにアパートを数軒持っている人がいますが、必ずアパートの賃貸には、代理店を介入させ、日本人にしか貸さないという条件を提示していると言います。

 日本の常識からいったら、このようなスクワットや家賃を滞納するなどということは、あまり考えられないことだし、日本人はアパートをきれいに使うし、あまりバカ騒ぎもしないし、礼儀正しく、きちんと家賃も支払うので、日本人に貸したがる人は多いのです。

 この居住権に関しては、全く始末の悪いもので、空き家のまま放置しておくことは、フランスでは、かなりのリスクを伴うことなのです。

 以前に、亡くなった両親が住んでいた家を放置していて、さて、家を売って処分しようとした人が、久しぶりに家に行ってみると、家はスクワットにあい、これでもかという人数の難民が住み着いていて、数年かかって家を取り戻したものの、家の中はめちゃくちゃになっており、改修工事をしなければとても売りに出すこともできないという悲惨な話がありました。

 今回のこのトゥールーズの学生にしても、「自分が家賃を払い続け、自分の居住証明があっても、一旦、スクワットされたアパートに直接、自分が介入できない意味がわからない」と語っています。

 しかし、警察の介入後、取り戻したアパートに彼はもう住む気にはなれずに、彼は、別のアパートに引っ越すことになりました。

 私は、今のところ、そこまで長期でアパートを留守にしたこともないし、ある程度、長く留守にしたとしても、ポニョ(猫)が一人で留守番しているために、毎日、ポニョの世話をしてくれる人を頼んでいて、毎日、アパートを覗いてくれているので、そのようなことはないとは思いますが、とにかく気を許して生活することはできないフランスの居住権問題でした。


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