現在、周囲のヨーロッパの感染拡大の急増が顕著な中、フランスの感染状況は増加傾向にあるとはいえ、比較的、安定している状況に見えていました。
フランスでの1日の新規感染者数が1万人を突破したのが、11月3日(10,050人)、そして、その2週間後の11月17日には、あっという間にその2倍の2万人を突破(20,294人)してしまいました。
いくら他のヨーロッパの国よりはワクチン接種率があがっているとはいえ、依然として4人に1人はワクチン接種をしていない状態。感染者数が増加すれば、感染のリスクが増加するのは当然のことです。
ヘルスパスのシステムが導入されたことで、フランスのワクチン接種率は急激に上昇し、感染のリスクが高いレストランやカフェ、娯楽施設、文化施設、人の集まる場所はワクチン接種済みであるか、検査陰性証明書がある人のみがアクセスできる空間になることで、ある程度、守られた状況になってきたことで、これまではフランスの感染拡大はある程度、抑えられてきました。
他のヨーロッパの国々は急増する感染状態に対応措置として、急遽、部分的なロックダウンやワクチン接種をしていない人に対してのみ、ロックダウンをしたり、フランスのヘルスパスに似通った措置を取り始めているのを見て、フランスは、もうとっくにそのような措置はしてきている・・フランスは大丈夫だろう・・というか、これ以上、どうしろというのだ?と正直、思ってきました。
しかし、初期にワクチン接種をした人々のワクチンの効力は落ち始め、そもそも一度もワクチンをしていない人も国民の4分の1程度はいる中、政府は高齢者から3回目のワクチン接種を進める方針を打ち出しましたが、どうやら、あまりのんびり構えてもいられない状況になってきてしまったようです。
現在、フランスでコロナウィルスのために入院している患者数は7,663人、一週間で22%も増加しています。
そして、何よりもこの1日の新規感染者数も実際の数字とはかけ離れている可能性もあります。というのも、10月15日からコロナウィルスの検査が有料化になって以来、この検査数が少なくとも45%は減少しているという事実があります。
これは、それまでは、ヘルスパスを72時間以内の陰性証明書で乗り切ってきた人々をワクチン接種に向かわせるため(もちろん財政的な問題もあったでしょうが・・)という政府の思惑があってのことだったと思いますが、現実には、仕方なくそれでワクチン接種をした人々もいるとはいえ、多くの人々が検査をしなくなり、結果、陽性の人がそれに気付かずに野に放たれてしまったとも言えます。
有料になったコロナ検査は、場所によっても異なりますが、PCR検査の場合は約43.89ユーロ、抗原検査の場合、22.02ユーロから45.11ユーロです。これをこまめに検査し続けることはなかなか困難なことで、検査数が減少するのも無理はなく、政府の思惑とは反対の意味で、感染を再拡大させてしまう要因の一つになってしまったとも考えられます。
コロナウィルス感染が拡大し始めた頃は、とにかく検査・隔離が最重要案件であったにも関わらず、ワクチン接種にばかり焦点が行き過ぎて、この肝心な検査と隔離がないがしろにされてきてしまったかもしれません。
コロナウィルスが絶滅するか、ワクチン接種がさらに拡大しない限り、この検査と隔離は常に続けていかなければならない問題なのです。
とにかくワクチン接種を!ソーシャルディスタンスを!マスクを!とひたすら叫んでいる今のフランス政府に欠けていることは、再び検査を拡大し、感染してしまった人を見つけ出し、隔離することです。
またヘルスパスに慣れきってしまっている状況のフランスではそのヘルスパスのチェック自体も緩くなってきてしまっていることもあります。
あと1ヶ月ほどするとフランス人にとって、バカンスの次の一大イベントであるノエルの季節がやってきます。クリスマスマーケットや家族での集まりなど、感染拡大とともにノエルがぶち壊しになってしまうのか?と案ずる声が上がり始めています。
フランスでもワクチン未接種者のみのロックダウンという方法もないことはありませんが、政府のやり方が気に入らないとワクチン接種を拒否している人もいる中で、この人々に対してさらなる締め付けは、来年に、大統領選挙を控えている現在、政府にとっても躊躇われることでもあるのでしょう。
私は、さらに感染が拡大していってしまう前に、検査を再び無料化し、検査を拡大し陽性者が隔離状態に留め置かれる状態に戻すことが、とりあえず、現在のフランスがこの第5波を少しでも小さくできる方法ではないかと思っているのです。
フランス第5波突入
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