一時、パリを訪れる多くの観光客は、薄いグリーンにゴールドがあしらわれた「Ladurée(ラデュレ)」の紙袋を持っていたな・・という記憶があるほど、ラデュレのマカロンは大人気で、この色とりどりの小さなお菓子は、その高級感といい、伝統と歴史のうえに築かれた格式さえ感じられるフランスのイメージアップに貢献してきたと言っても過言ではありません。
事実、ラデュレは1862年創業の老舗で、現在、同じマカロンで急成長したピエール・エルメも、もともとは、ラデュレのパティシエとして、修行を積み、そのキャリアをスタートさせています。
マカロンは今やフランスの代表的なお菓子の一つとして認知され、マカロンブームの先陣を切っていた「ラデュレ」は、1997年にパリに2店舗をオープンして以来、2006年のロンドン・ハロッズ内の店舗を始め、世界に進出して行きました。
これだけ、販売の拠点を拡大すれば、全てのラデュレのマカロンがフランスで作られているとは思っていませんでしたが、なんと、フランスで販売されているマカロンでさえ、もはや、フランスでは作られていないことが発覚し、2020年以来、フランスで売られている全てのラデュレのマカロンはスイスにある工場(エニー)で一斉に生産されていることがわかり、フランスのマカロンがフランス製ではないことに衝撃が広がっています。
ラデュレ側は、スイスの税制の柔軟性(スイスは雇用を創出する外国企業の一つとして、ラデュレに10年間の免税を認めている)を利用し、収益性を向上することをその理由として説明しています。
パンデミックにより、甚大な被害を受けたラデュレは、2020年の後半には、フランス国内・エソンヌやモナコにあった生産ラインをスイスにある工場に一括統合したのです。
ラデュレのマカロンの大きな秘密は、その原材料(主に卵白・砂糖・アーモンドパウダー)の品質とレシピ、製法にあることには、疑いの余地はありませんが、それに加えて、製造後に体型的に冷凍されることでもあり、この冷凍マカロンは何週間も保管することが可能であり、これにより世界中で簡単に入手できるようになっているのです。
しかし、わざわざフランスに来た観光客などが、フランス製ではないマカロンを購入するというのは、なんとも興醒めな気がしてしまうことも否めません。
フランスのお菓子の代表的な存在であるマカロンのルーツとも言われる「メイド・イン・フランス」のこのシンボル的なラデュレのマカロンが、「実はスイスで作られていた・・」というのは、やはり、ちょっと衝撃的なことでもあります。
ラデュレは、2000年代から製品の多様化への投資を開始し、セフォラ(Sephora)と提携し、化粧品ラインを立ち上げたり、その他、いくつもの企業と提携し、コラボ商品を開発、フィギュアのコレクションや置物、ベビー服などにもその販路を拡大しましたが、依然としてマカロンの収益が同社の多くを占めている状態で、このマカロンでの収益性を改善することは、このパンデミックの危機において、必須事項であったに違いありません。
ブランドが世界進出し、その規模を拡大する場合に国内だけで生産を賄うことは難しく、多くのブランドが国外に工場を持つことは珍しいことではありません。
以前、買い物をしていた際に、近くにいた中国人のお客さんが、フランスのブランド物のバッグを購入しようとしていた際に、フランス製のものではなくては嫌だと言い張り、バッグに記載された生産地を一つ一つ確認していた場面に遭遇したことがありましたが、もはや、フランスで作られたものはほとんどなく、色やデザインなどによって、スペインやチュニジア、時には中国製のものもあったりして、「スペインなら、まだいいけど、中国製のものだけは絶対に嫌だ!」と言い張っているのに苦笑してしまったことがありましたが、そのブランドが大きくなればなるほど、その生産ラインも多様化されていくことも致し方ないことなのです。
しかし、生菓子であるマカロンまで、そんなことになっていたとは・・なんだかちょっと寂しい気もしてしまうのでした。
ラデュレのマカロン スイス製
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