2020年10月12日月曜日

マスクの功罪 マスクのおかげでハンサムな男の子が増えた

 

                北斎柄の生地のマスクをしている女性


 フランス人の挨拶には、スキンシップが伴うことが多くて、見ず知らずの人はともかく、少し親しい人とは、ビズーといって、左右の頰を相互に合わせて、チュッチュッと挨拶をします。ビズーの習慣には、いつまでも慣れなくて、今もあまり好きではないものの、親しみを表す挨拶であることには違いなく、ある程度、その人との距離感の判断基準の一つにもなっています。

 また、仕事で人に会う時などでも、初めて会う人などでも、ビズーとまではいかなくとも、少なくとも握手をしたりすることで、少し打ち解けるアクセルになったりもするので、私は、まず最初の挨拶をするのに握手をすることが多いです。

 背筋を伸ばして、握手をしながら挨拶をしている人の様子は、なかなかスマートで、私は、フランス人の習慣の中で、なかなか気に入っている習慣のひとつです。

 ところが、現在は、ビズーどころか握手もできず、おまけにマスクをしているために、相手の表情を見るのが難しく、自ずと相手の目をしっかりと見て会話をすることが増えました。

 目は口ほどにものを言いと言いますが、相手の眼差しだけで表情を読み取り、また目だけで感情を表現するのですから、日頃、スキンシップや、ともすると、フランス人の大げさとも思える表情に助けられていた人との関わりが希薄になった気がして少し寂しい気がするくらいです。

 今は、あまり初めて会う人と接する機会もないのですが、スタージュを始めて、新しい職場で働き始めた娘は、初めて会った時からマスク姿の人ばかりで、逆にマスクを外すと誰だかわからなくなる、人と親しくなりにくい、という少々、新しい環境に打ち解けるのに難しい状況を余儀なくされています。

 マスクを忌み嫌っていたフランス人も、現在は、さすがに公の場では、ほとんどの人がマスクをするようになりましたが、基本的にマスク嫌いであることに変わりはありません。フランス人にとっては、マスクは病気を予防するものというより、病気そのものを連想させるイメージをもつもので、いわゆる普通の白いサージカルマスクではなく、別の色の布のマスクをしている人も少なくありません。

 むしろ、マスクを利用して、今の季節は、コートやマフラーの色と上手に合わせて、おしゃれを楽しんでいる人もいます。

        

               マスクも洋服とコーディネート


 しかし、このマスクも悪い事ばかりではありません。

 ここのところ、メトロに乗っていると、何やら最近は、ハンサムな若い子が増えたな・・とぼんやりと思っていたら、それは、どうやらマスクのおかげ?だったことに気がつきました。鼻から下が隠されただけで、人の印象がこれほど変わるのには、ビックリです。

 フランスに来た日本人観光客の人と接する機会があると、「ご主人は、フランス人ですか? えっ??フランス人!!ステキ!!」などと言われることが多いのですが、決してステキでも何でもなく、正直言って、私は、フランスに来て、20年以上、「うわっ!ステキ!ハンサム!」と思った人に出会ったのは、たった1度だけ・・(これは、私の生活環境が恵まれていないこともあるかもしれませんが・・)、通勤途中に、ほんの一瞬すれ違った人だけで、その後、その人とも二度とすれ違うこともありませんでした。

 フランスでも、ステキな人は、なかなかいないものなのです。

 それが、ここのところマスクのおかげで、ハンサムな男の子を結構な頻度で見かけるようになったのです。実際のところは、別として、なかなかその場、その瞬間は、楽しめるもので、最近のメトロの中では、新しい密かな楽しみになっているのです。

 いい年をして、ハンサムな男の子を見てニコニコしている私の表情は、マスクに隠れて、私のこの密かな楽しみは、バレることがありません。


<関連>「・・・フランス・マスク論争ふたたび」

https://rikakaigaiseikatsu.blogspot.com/2020/07/blog-post_17.html 

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