2023年4月22日土曜日

黄色いベストの次は鍋 フランスで起こっている鍋騒動

  


 今回の年金改革問題に関する抗議運動は、なにかと前回の大きな社会的な騒動となった黄色いベスト運動と比べられることが多く、あの時は、もっと期間も長く、暴力的で破壊行為が過激だったなどとも言われていますが、今回の年金改革問題も、大きな動きになり始めてから早や3ヶ月以上が経過し、強引なカタチではありましたが、法案が交付されてなお、抗議運動は止むことはありません。

 今週に入って、マクロン大統領が実際に地方の街を廻り始めたことから、今のところ、逆にこの問題を盛り上げている感もあります。

 このマクロン大統領の地方行脚の際に、群衆が抗議の意味を込めて鍋を叩きながら集まり、詰め寄った人々に向けて、マクロン大統領が「フランスを前進させるのは鍋ではない」と言ったことから、どうやら今回の抗議運動のシンボルが「鍋」になりつつあり、早くも「鍋革命」とか・・・と言われ始めています。

 エロー県では、マクロン大統領の訪問を考慮して、当日、鍋を持って集まることが禁止され、知らずに鍋を持ってきた人々は鍋を没収されるという憂き目にあい、さらに彼らの怒りを増長させています。

 問題にされているのが、「鍋」というものだけに、どこか牧歌的というか滑稽な印象もあるのですが、それくらい暴力的ではない抗議方法であるとも思うので、こんなことまで禁止してしまうのもどうかと思わないでもありません。

 黄色いベスト運動の時は、そもそもは燃料税に関する問題で、フランスの家庭ならどこの家庭にも1つや2つはあると思われる黄色いベストが抗議運動のシンボルとなり、目立つこともあり、黄色いベストというシンボルは大いに前回の抗議運動に貢献したと思われます。

 前回の黄色いベストのように、このような運動にはシンボル的なものの存在は大きな力を発揮するので、今回の「鍋」は、視覚的には目立つものではありませんが、「強力な音」を発することでその存在感と抗議する者たちの連帯感を生むものになるかもしれません。


 鍋はフランス語でキャセロールと言いますが、このキャセロールをもじっているのか?「キャセロラード」なる聞きなれない言葉が出てきて、鍋を持っての集会まで呼びかけられています。

 また、この鍋騒動に乗じて、IKEA(イケア)フランス(スウェーデンの家具・家庭用品メーカー)は、「たったの12.99 ユーロで音を立てることができます!」と広告を張って、そんなちょっとブラックユーモアチックな宣伝も話題を呼んでいます。



 どうにも、強制的に規制しようとしたりするから、余計に反発を生むことになるわけで、今回の年金改革問題に関しては、強制的に抑えつけようとする政府と強行手段ゆえに余計に反発する国民の図式がこんな鍋問題にまで一貫してあらわれているような気もします。

 エロー県は、マクロン大統領訪問への忖度?で、鍋禁止令を発令したのであって、これは全国的に鍋が禁止されたわけではありませんが、鍋くらい叩きたい人には叩かせておけ・・くらいの余裕がないと、反発がより強くなり、今度は鍋くらいでは済まなくなるかもしれません。

 4月ももう後半に入り、1年の3分の1が過ぎたばかりではありますが、もしかしたら、今年のフランスの流行語大賞は、「鍋」かもしれません。


鍋革命 鍋騒動


<関連記事>

「険しい道を歩むマクロン大統領 それでも彼のハートは折れない」

「マクロン大統領の風刺フレスコ画消去要請」

「黄色いベストが帰ってきた!」

「年末恒例の大統領の演説に2023年もデモ激化の予感」

「マクロン大統領の演説がどうにも、しっくり響かなかった理由」

0 コメント: