もう今となっては、はるか昔の話になりますが、日本の大晦日の夜には家族で紅白歌合戦を見ながら、年越しそばを食べたりしていましたが、フランスでは、特にここ数年、私にとっては、大統領の演説を聞くのが大晦日の恒例行事?となりました。
特にパンデミック以来、大統領が出てきて、うやうやしく、時にはやたらとエネルギッシュに演説を行う機会は増えた気がしますが、一年を振り返りながら、来年あるいは、それ以降への展望を語る大統領の演説は、他の機会とはまた趣を異にする感じもあります。
今年のマクロン大統領の年末の演説は、なにかギラギラした感じがなく、執務室を背景にしているあたりも、演出感がありますが、落ち着いた雰囲気で比較的、淡々と語っている感じがしたあたり、その内容とのバランスを考えているのかもしれません。
この撮影場所ひとつをとっても、通り一辺同ではなく、いつも演出が感じられるところは、フランスらしさを感じます。
「この年末の演説をするのは、今回で6回目になります・・」と挨拶を始めた彼は、その後、「世界の様々な出来事から、わたしたちはいくつもの危機に脅かされていますが、私たち国家の団結と連帯によって、これらに立ち向かってきたと同時に、今後もこの団結と連帯、集団的能力をさらに強固にしていきたい」と話を始めました。
また、行く年を振り返り、「このような状況の中でも、フランスは、2つのノーベル賞を受賞し、また、文化、スポーツにおいても素晴らしい場面をいくつも分かち合い、我が国にとって芸術、文化、スポーツに影響を与えた年であり、このフランスの自信と誇りを保ち続けましょう」と語るあたりは、少し前のサッカーのワールドカップでのマクロン大統領自身の熱狂ぶりや、また惜しくも決勝戦に敗れたチームを国民全体で讃えるようなコンコルド広場で選手を歓迎するために集まった驚異的な場面を思い浮かべます。
そして、話題は、少しずつ具体的な課題に突入していきますが、エネルギー危機により叫ばれている電力供給の問題については、節電を続け、原子力発電所を再稼働させれば、停電は避けられると断言したのです。
そもそものエネルギー危機もありますが、原子力発電所が充分に稼働していなかったことも今回の大きな問題のひとつで、原子力発電所の恒久的な整備は重大な課題でもあります。
また、歴史的な水準に達しているエネルギー価格については、わが国では価格の上限を維持すると付け加え、明日から、エネルギー価格の高騰の影響をもろに受けている企業に対する追加の適応援助を約束しました。
コロナウィルスに関しては、わが国の対応は概ね成功してきているとし、ワクチンの有効性が顕著に証明されてきており、必要な人々の追加接種への呼びかけを行いました。
現在、問題視されている中国の感染急拡大についても、1月から中国からくる飛行機で来仏する人々に対して、検査や分析を行いながら、国境管理をしていくことを述べました。
そして、最も物議を醸しそうな年金問題について、「今年はまさに、今後数年、数十年にわたって制度のバランスを確保することを目的とした年金改革の年になる」と述べました。
「キャリア延長は10年近くかけて段階的に、かつ公平に行う」とし、個別のケースを考慮することを約束しました。これによって、我が国の老後の資金調達のバランスを取り、最低年金を改善し、子供たちに公正で堅実な社会モデルを引き継ぐことができるとし、「困難な時代の新たな章」に立ち向かうのは、国の柱の多くを再建するという重荷を背負った私たち次第であると説明しています。
国の財政問題の詳細はわかりませんが、マクロン大統領のいうことは、つくづく、ごもっともなことばかり、とはいえ年金問題に関しては、かなり強烈に反応するフランス人のこと。
この年末のマクロン大統領の演説は、ともすると、他の部分はすっとばして、年金改革強行宣言ともとられかねない感じもあり、また、2023年もデモが絶え間なく続きそうな予感がしています。
マクロン大統領演説
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