Netflix の人気シリーズ「エミリーパリへ行く」(Emily in Paris)がその舞台となっているパリで、訪れる観光客やドラマの中に登場するブランドなどに大旋風を巻き起こしているようです。
新シーズンは、放送開始後わずか5日間で全世界で1億1700万時間の視聴時間を記録したという「エミリーパリへ行く」は、もはや、どんなファッション雑誌よりも影響力が大きく、ドラマに釘付けになっている視聴者、特にテレビから離れてしまっているといわれているティーンエイジャーや若い層(若くない場合もあり)へのアクセスの役割を果たし、彼女たちは、ドラマを見ると同時に、ヒロインと同じバッグ、同じ洋服、アクセサリーをインターネットで探しはじめ、ドラマに出てきたブランドの売り上げが急上昇するのだそうです。
視聴者にとってあこがれの存在であるヒロインに少しでも近づきたい、ファッションを真似したい、同じ場所を訪れてみたいという感情は珍しいことではありません。
エミリーに限ったことではありませんが、熱狂的なファンにとって、その映画やドラマの撮影に使われた場所への聖地巡礼のようなことはよくあることです。
前シーズンに、ヒロインがドラマの中でNach(ナッシュ)(アニマルモチーフの陶器のアクセサリーブランド)のフラワーピアスとインコのネックレスを着用しており、そのアクセサリーは1週間もしないうちに、品切れになり、それ以来、売上高はうなぎ上りを続け、フランス全土、アメリカ、イタリア、日本から注文が殺到し続けているといいます。
シーズン2、3に登場するボタン・パラダイスのベルトなどもその一つですが、すでに有名なハイブランドと小規模なアーティストのブランドを上手にミックスして登場させているところも巧みなところで、ヒロインが高級マーケティング会社に勤務という設定から、架空のブランドだけでなく、シーズン2では宝飾店のショパール、シーズン3では自動車メーカーのマクラーレンなど実在のブランドの広告キャンペーンを企画することもできています。
このドラマのヒロインが自由な服やジュエリーを使うことで、このシリーズは多くのフランス人デザイナーのショーウィンドーになっているのです。
実際にドラマの中で主人公が訪れるフランスのマクドナルドでは、年末から「エミリーインパリ」なるメニュー(バゲットのパンを使ったサンドイッチとポテトとドリンク+デザートにマカロンが付いたセット)が販売されています。
こんなエミリー効果に沸いているパリは、もっと素直に喜んでもよさそうなものだとも思いますが、世界中の観光客を魅了する絵葉書のような風景を映し出すこのドラマに、真実とはほど遠い「理想化されたパリ」ばかりを映し出していることを指弾するエコロジストの政治家なども出てきて、それはそれで、ちょっと驚きで、閉口してしまいます。
彼ら曰く、「エミリーが私たちに見せているのは、変わらないパリの写真であり、超中心地区に限定され、富裕層だけが住む、均質で固定された建築遺産を持つパリのディズニーランドに他ならない」のだそうです。
しかし、私は思うのです。いいじゃない!ドラマなんだから・・と。
ドラマの中では、決して便利でもなく、いじわるな人もところどころに登場し、適度にパリの嫌なところもシニカルに表現されているところもあるので、せめて美しい場所を映してくれる(美しいところばかりではないのも事実ではあるが・・)このドラマはありがたいものだと思いますが、どうにもイチャモンをつけたがる人はいるものだな・・と思います。
以前、「アメリ」という映画が人気で、「アメリがクレームブリュレを食べたカフェ」をツアー行程に盛り込んでいる日本の旅行会社のツアーなどがありましたが、今や日本の旅行会社はツアーを組むということがあるのかないのか? 以前のように日本人観光客がツアーでパリを廻ることがあれば、さしずめ、「エミリー巡礼ツアー」なるものが登場していただろうな・・などと、新しい流れに昔を懐かしむ気分でもあるのです。
エミリーパリへ行く 社会現象 Emily in Paris
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