2023年1月12日木曜日

早朝のパリ北駅での6人刺傷事件 容疑者は、OQTF(フランス領土退去命令)の移民

 


 年始早々、しかも早朝のパリ北駅で、刺傷事件が起こり、朝からパリ北駅には、大勢の警察官が押し寄せ、まことに物騒極まりない光景に震撼とさせられました。

 事件が起こったのは、早朝6時半ごろのことで、北駅入り口でナイフを持った男が襲い掛かり、そのままなだれ込むように容疑者が駅構内へと移動していく中、6人がナイフで刺されたのち、駅構内の警備にあたっていた警察官がとりおさえ、容疑者逮捕になりました。

 警察官は現場で容疑者に向けて3発発砲し、容疑者は生と死の間をさまよっている意識不明の重体だそうです。

 内務大臣はしきりと容疑者が犯行を開始してから、1分ほどで取り押さえた警察官の勇敢さを讃えていましたが、一方では、1分間であっという間に6人を切りつけるという容疑者の勢いにも驚かされます。

 被害者のうち1名が重症とのことですが、命に別状はないということです。

 現場に居合わせた人は、駅には人々の叫び声が響き渡り、血まみれになっている被害者を目撃したと証言しています。

 犯行の途中で撃たれた容疑者はそのまま意識不明になったため、動機はもとより、本人の身元確認もできない状態でしたが、指紋鑑定により、彼は20代のリビア人男性であることが判明しています。

 容疑者は3年前にフランスに入国しており、複数の犯罪により、昨年の夏の段階でOQTF(フランス領土退去命令)を受けていたことがわかっていますが、この容疑者の場合も(OQTF命令を受ける人によく聞く)複数の名前を持ち、また彼がリビア人であることから、彼を自国に追放することができずに、彼に対するOQTFは実行されていなかったと言われています。

 リビアへの追放は、同国が現在不安定であることと、リビア人ということを特定するためのフランスとリビアの間の交換ルートがないことで複雑になっているそうです。

 もともと彼がどのような経緯でフランスに入国していたのかわかりませんが、国籍を確認できずに、自国へ追放することができない国の人間がなぜ?滞在し続けられるのか? ビザ(滞在許可証)更新のたびに、すべての書類をそろえながらも、そのたびにヤキモキさせられながら、役所の横柄な態度にもひたすら耐えている身としては、ますます理解に苦しむところではあります。

 結局、犯人が意識不明の状態のため、この犯行の動機はわからずじまいですが、犯行に使われたものが「一般的に市販されているものではなく、自分で作ったものと思われる非常に危険な凶器であった」(これにはちょっと山上容疑者を思いだしました)と発表されており、このテロ行為が組織的なものであった可能性もあり得るという見方もされていますが、現在のところは、確認がとれていません。

 昨年発表された移民対策に対しては、このOQTFのリストを頑強なものにして、徹底的に追跡を行うと昨年末の段階で発表されていたはずですが、実際には、この容疑者のように結局のところ、OQTFが発令されながらも実際には退去させることができないのに、監視対象にもなっておらず、犯罪を重ねたうえにテロ行為に及んでいるということは、看過できない問題です。

 だいたい複数の名前を持っていれば、その追跡自体も困難で、今回のように指紋の照合でもしないかぎり、本人の特定もできない状態で移民問題のハードルの高さを感じさせられます。

 今まで、あまり気が付いていなかったこのOQTFに関して、昨年の大きな犯罪を見ても、このOQTF該当者が多い気がします。そもそもOQTFが発令されている時点で何等かの犯罪にかかわったことがあるということで、再犯を重ねる可能性が高いのも当然のことかもしれません。

 もともとパリ・北駅周辺は治安の悪いところで、私などはあまり近寄らない場所ではありますが、人の多い大きな駅。まさかのこんな騒ぎに警察官が駅構内で発砲するという事態には、さらに腰が引ける感じです。

 年末にもモンパルナス駅で同様の事件が起こったばかりです。

 年明けに、政府のスポークスマンが今年は、大幅に警察官が増員されるので、少し治安が改善され安心できるようになるだろうという発表をしていたばかり。いくら警察官が増員しても、同時に犯罪者が増えれば、結局はあまり変わらないことになります。

 警察官の発砲についても、思うところはありますが、今回のような緊急事態に際しては、致し方ないものなのかもしれません。


パリ北駅刺傷事件


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