前回、激しく、長く続いた黄色いベスト運動は、パンデミックの訪れとともに沈静化していました。途中、何回か再開の動きは見られましたが結局、そこまでの騒ぎにもならず、継続もせずにいました。
黄色いベスト運動は、まさにこの黄色いベストという、どの家庭にも1つや2つはありそうな身近なモノ、また蛍光色で目立ち、お手軽なわりには、存在感をアピールすることができる絶好のアイテムでもあり、このデモを盛り上げた一つの重要なツールになっていたかもしれません。
まさに黄色いベストは、このデモ活動の名前に使われるほど、求心力を持つシンボル的な役割も果たしていました。
毎週のように土曜日になると登場する黄色いベスト運動は、一時は、日常生活に支障をきたすほどに、盛り上がりを超えて、危険な状態にまで達して、デモ隊の行進するルート近辺の店舗やレストランなども土曜日になるとシャッターを閉めて、休業を余技なくされる事態でした。
それが突然のロックダウンで街に出られなくなったことで、デモどころではなくなり、否応なしに沈静化したのでした。
ワクチン接種が進むにつれて、コロナウィルスは常に存在するものの、フランス人の生活は、ほぼ日常を取り戻し、ポツポツとデモは起こっているものの、前回の黄色いベストのような大きなうねりのような動きは現在のところ起こってはいません。
そんな黄色いベストが年明け早々に戻ってくると聞いて、非常に警戒していましたが、実際には、フランス国内で4700人が参加した(そのうちパリ2000人)程度だったというので、あまり盛り上がりはないようです。
最初の黄色いベスト運動が発生してからすでに4年半が経ち、実際には、経済状況は、むしろ悪化しているうえ、インフレや年金改革、エネルギーコストの問題など、抗議する内容は、膨れ上がっているのに、どういうわけか、あまり求心力がないようです。
そもそも、黄色いベスト運動に参加している人には、マクロン大統領の政権に対して、マクロン大統領のやることなすことすべてが気に入らないという人も少なくないのですが、それらは、社会全体を動かしていくような動機としては、成り立たないのかもしれません。
ある労働組合や社会運動を専門とする歴史家によると、今回の黄色いベストはもはや印象に残るものではなく、勢いがなくなったというよりも、いくつかの過激派のコアに似た動員になっていると言われています。
社会運動は、自然発生的に起こるものであり、それを同一の形で維持しようとすることは、そもそも不自然であり、失敗に終わることが多いと言われています。彼の見解が正しかったのかどうかはわかりませんが、今回の再結成の動員は、期待されたほどの人を集めなかったようで、とりあえず警備にあたった警察官の数を大きく上回ることはなかったようです。
年末に100万人の人が集まったシャンゼリゼに比べると、2000人ですから、なんだか貧弱にさえ感じでしまいますが、火種はいくらでもある現在の状況で、これにいつ火がつき、燃え上がるかは、わからない状況です。
このようなデモの発生を恐れて、政府はエネルギーコストに圧迫されるパン屋さんなどの対応に奔走し、早急に対応策を示したり、「国民の声を注意深く聞く」と訴えかけたり、大きなムーブメントにならないように必死に対応している様子がうかがえます。
あまりに問題が山積みすぎて、逆に国民の怒りも分散しがちな感もありますが、とりあえず、おそらく、今年、一番の火種になりそうなのは、年金改革問題で、この年金改革に対するデモは、1月21日に予定されています。
このデモが黄色いベストに変わる何か新しいシンボリックなものを掲げて立ち上がると、大変な騒ぎになる可能性もありえます。
しかし、今回の黄色いベストを見るかぎり、同じデモを長く続ける・・ましては、一度、沈静化したものを以前の勢いに戻すのは、難しい感じです。やはり、本物の国民の激しい怒りが着火剤になるもので、また、一度ついた火は長い間燃え続けるので、とりあえず着火しないようにと、問題が山積する現在、政府は地雷のうえを歩いているような感じなのかもしれません。
黄色いベスト運動再開
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