日曜日の夜、パリ11区レピュブリック広場近くのレピュブリック通りとトロワ・ボーン通りの角で偽物の拳銃を持って脅しをかけてきた(といわれている)男に対してパトロール中だった警察官が発砲し、銃撃を受けた男性が死亡しました。
現場に居合わせた人の証言によると、男は、最初は犬に対して拳銃を向けて脅していたといい、警察官によれば、その後、警察官が近寄ってくると、男は警察官に銃を向けてきたところで、警察官2人が4発(一人が1発、もう一人が3発)発砲したと言われています。
警察官が発砲し、男が倒れた時点で私服の男性がすぐに心臓マッサージを始めたという証言があるようですが、この心臓マッサージをした男性が警察官かどうかは確認されていません。
撃たれた時点で、この男は被害者、警察官が加害者となったわけですが、被害者は死亡しているので、当然、被害者の証言が得られることはなく、警察官側の言い分と周囲の目撃証言のみによる検証しかできないことになります。
ましてや被害者が持っていたのは本物の拳銃でもなく、当初には拳銃を犬に向けて、犬を脅していたというのですから、なんだか子供じみているというか、彼の行動には、警察官に射殺されるほどのものであったのかどうか疑問が残るところです。
昨年、起こった警察官発砲事件では、少なからず死亡者が出ているうえに、本当に発砲の必要があったのかどうかと思われる事件も少なくありません。
この事件はパリ司法警察に委託され、「公権力者の殺人事件」、「殺意のない意図的な暴力」で捜査が行われることになっています。
今年に入ってから聞くのは2度めの警察官の発砲事件ですが、ここ数年、警察官の発砲事件は、定期的に耳にするようになっており、今回の事件現場などは、パリの街中で人通りも少なくない場所での出来事で、ゾッとさせられます。
この手の事件が起こるたび、警察官発砲事件として、報道されるものの、その後は、司法警察の捜査が行われる・・というところまでで、その後、発砲した警察官がどう扱われたのかに対してまでは報道されないのですが、もしも、なんらかの刑罰が下れば、当然、報道されるところ、それがないということは、そこそこの措置で済まされているような気がします。
警察側が命を張って仕事をしているのはわかりますし、治安が悪くなっていることも事実なので、緊急事態に際して、容疑者を無力化するというのはわからないではありませんが、こうも簡単に容疑者を殺してしまうということがしばしば起こることは、容認できない気もします。
ましてや、事前には、わからなかったにしろ、この被害者が持っていたのは、ほんものの拳銃ではなかったわけで、当然、彼は発砲もしていなかったのです。
フランスは死刑制度を強く非難し、今の時代の人権問題に死刑などあり得ないようなことを堂々と言っていますが、死刑もなにも、こうも簡単に警察官が発砲し、裁判以前に容疑者を殺してしまうことに、大きな矛盾も感じます。
私は日本の死刑制度に対しても、少なくとも、議論が必要なことであるとは思っていますが、フランスでの警察官の発砲事件に関しても、見直しと指導が必要であると思っています。緊急に、犯行を止める必要があったとしても致命傷になる発砲にならないようにする努力は、必要なのではないかと思うのです。
フランスは治安の改善対策として、警察官の大幅増員を計画していますが、警察官に発砲されて殺されてしまうのでは、必ずしも安心ともいえません。しかも、公的な絶対的な権力に守られた人間の発砲ということで、軽く扱われてしまうことは、とても恐ろしいことです。
パリ警察官発砲事件
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