私が初めてパリのメトロに乗ったのは、はっきりと記憶にはありませんが、ずっと昔に旅行でパリに来た時のことだったと思います。あの時はフランス語も全くわからなかったし、外国の地下鉄だし、治安も悪いというし、なんか、やたらと緊張した覚えがあります。
あれから数十年経って、パリのメトロもずいぶん進化し、特にここ数年はオリンピックの準備なのか、やけに工事も多く、きれいになった駅も多く、車両も新車になったりしてずいぶん様変わりした感じがしていました。
しかし、実際には、路線によって、整備のされ方はずいぶんと差があることも事実で、駅のホームと車両の間にドーム型のガードやそれと同様のガード(もう一つのドアみたいな感じのものなど)がつけられていたり、ピカピカの新車の車内に次の駅の表示が出るようになったり、冷房車が増えたり、中には携帯の充電までできる車両もあったりして驚かされるのですが、一方では相変わらず、ハンドルを手動で回して自分でドアを開ける車両が今でも使われていたり、ついこの間も車両とホームの間がやけに広く空いていて(多分、4号線だったと思う)、ボーッとしておりたら、足を踏み外してしまったり、間に挟まってしまったりしそうで危ないな・・と思ったばかりでした。
パリのメトロは、「次は○○駅~~」というようなアナウンスもなく、なので、大げさな言い方をすれば、電車は勝手に来て、勝手に去っていくという感じなので、うっかりすると乗り過ごしてしまいかねません。
また、一応、ホーム全体を監視するカメラが数か所には備え付けられているものの、日本のように電車の発着時の安全の確認をする駅員さんもいません。
こんな感じに慣れてしまうと、日本に行ったときは、なにもそんなに言わなくてもいいのに・・などと、至れり尽くせりの日本のサービスをちょっとうるさいように感じてしまうことすらあったのですが、やっぱりあれは必要なことなんだな・・と、今回のような事故を聞くと、今、あらためて感じています。
事故が起こったのは、土曜日の午後4時頃のことで、パリのメトロ6号線がベル・エア駅(パリ12区)を出発しようとした時に起こりました。家族連れの45歳の女性がメトロを下りようとした際にコートがメトロのドアに挟まり、それに気が付かないままに発車したメトロに引きずられて身体の一部が車両の下敷きになり、死亡してしまったという大変、悲惨な事故でした。
この女性はこの時、夫と子供が一緒だったそうなので、ごくごく普通の土曜日のお休みの日に家族で出かけた先の思ってもみなかった事故により、一瞬のうちに死亡してしまったのですから、一緒にいた家族は呆然自失だったことでしょう。
パリのメトロは、現在のところ、1番線と14番線だけが運転手のいない自動運転になっていますが、この6番線には運転手がいて、事故を起こしたメトロの運転手さんは、当然のことながら強いショックを受けているそうです。
6号線は地下鉄とはいえ、地上に出ている部分もあったりで、セーヌ川を渡る陸橋の上を走る部分もあり、エッフェル塔が見えたり、パリの街を眺められたりもする線でもあるのですが、それだけに駅も車両とホームのガードなどがない駅も多く、このような事故が起こってみれば、危険と言えば危険でもあります。
メトロの車両のドアがコートを挟んで人を引きずるくらい強力に閉じるということには、改めて驚きですが、コートと言わないまでも、慌てて乗ったり降りたりする際にバッグが挟まってしまって周囲の人が手でこじ開けている様子は、そういえば、時々、みかけることはあります。
バッグが挟まった場合などなら、逆にドアがきっちりと閉まらないために、その隙間に手を突っ込んでこじ開けるということも可能なのですが、コートの場合は、周囲の人もそのことに気付かなかった可能性も考えられます。
どちらにしても、ちょっと信じられない悲劇的な事故ですが、発車の際の安全確認を十分にしていないという意味では、このような事故はいつでも起こりうる話なのかもしれません。
一応、警察は運転手に対して、薬物、アルコールの検査を行ったそうですが、陰性だったようです。
メトロといえば、スリやひったくりなどに注意しなければいけないと思ってきましたが、ドアに挟まれないようにも気を付けなければなりません。
こういう事故が起こると実はこんなこともあった・・という話が出てくるのが常ではありますが、1週間前にもRER(パリ郊外線) B線で若い女性が線路に落ちて死亡するという事故があったばかりだそうです。
駅の整備や拡張なども、ありがたいことですが、RATP(パリ交通公団)は、まずは根本的な安全対策を徹底してもらいたいと思った出来事でした。
パリ メトロ6号線 死亡事故
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