年金改革法案が交付された数日後、国民の前で演説を行ったマクロン大統領はその翌日から、アルザスを皮切りに地方行脚を始めています。意を決して?行われた今回の彼の演説も、「一方的な停戦要求」ととられた感が強く、あまり好意的に受け取られはしませんでした。
リベラシオン(仏・日刊紙)が最近発表した世論調査によると、質問された人の 4 分の 3 が、主に選出された役人が現実から切り離されていること (74%) と、マクロン大統領の権力行使があまりにも権威主義的であること (54%) のために、民主主義は不健康であるという結果を発表しています。
これまで3ヶ月以上、ほとんど表舞台には、現れなかったマクロン大統領には、行く先々で、停電をおこされたり、これでもかというブーイングがあがって、国民はお鍋を叩きながら、「マクロン大統領辞めろ!」の大合唱。
マクロン大統領を迎える地域は大変な警戒ぶりではあるものの、全く一般市民を遮断して護衛するというわけでもなく、集まってきた人が直接、話をできる場面もあるところが、フランスなのだな・・と思うものの、その大部分は、ブーイングでマクロン大統領にとっては、なかなか厳しい状況であることは明白です。
それでも、マクロン大統領は、「このようなバッシングは初めてのことではない・・黄色いベスト運動のときは、むしろもっと酷かった・・」なと矮小化しようとする発言もみられ、これだけ嫌われても折れないハートは凄いな・・などと妙な感心をしてしまいます。普通の人なら、こんなにたくさんの人に嫌われるのは、耐えられません。
行く先々でマクロン大統領と一般市民の言い合い・せめぎあいの様子が流されたりしていますが、苦し紛れ?に彼が発言したことを抜粋されて流されているので、そんな会話ばかりではないと思うのですが、鍋を叩きながらブーイングの意を伝える国民に対して「フランスを前進させるのは鍋ではない!・・私がやろうとしていることは、フランス人がより良い生活を送り、子供たちの未来を築くことで、 私にはそれを止める権利はない!」と言ったとか、また「フランスには、憲法があり、それを決めるのは、大統領だ!単純なことだ!」と言ったとか、「大統領選に勝てなかったことを乗り越えられない人がたくさんいる!」とか、彼が国民との対話で言葉にしたことが、一つ一つ取り上げられて、あーでもない、こーでもないと論じられています。
これだけ嫌われても決して折れることがないマクロン大統領は、逆にあっぱれな気もしますが、彼の周囲はやはり穏やかではないようで、政府のスポークスマンが「今、フランスに起こっているのは民主主義の危機はなく、信頼の危機である!」などと説明してみたり、マクロン大統領夫人のブリジット・マクロンがインタビューに答えて「マクロン大統領は孤立してはいない!」と熱弁したり、どうにも彼の歩く道が険しいことが周囲の言動からも垣間見えます。
彼が孤立しているかどうかは別として、民主主義の危機ではなく信頼の危機であることは、全くのプラスな状況にはならないことを熱弁しているのも気になります。
それでも、マクロン大統領は「私たちは、あなたの話を聞かない政府ではなく、人々を納得させることができることを確信している!」という姿勢を崩さずにいます。
彼は抗議行動を続ける人々に対して、「彼らが話そうとしているとは思えません。 彼らは騒ぎ立てようとしています。 言葉をごまかすために騒ぎ立てようとする人々の話を聞くだけの社会にいるとしたら、そこから抜け出すことはできない!」と話しています。
しかし、インタビューに答えてのことではあるでしょうが、「辞任するつもりはないし、そんなことは起こらないだろう」と述べたことがニュースになっているので、彼の進退にかかわる騒動になりつつあることも見逃すことはできません。
そんな中、政府は、毎日、交通違反の罰則を減刑したり、教師の給与を月額100ユーロ~230ユーロ上げることを発表したり、歩み寄り?の政策を公表しています。
年金改革法案交付の少し前に中国を公式訪問していたマクロン大統領、この際の発言もかなり世界的には非難の対象になっているものの、中国政府や中国の国民からは熱烈歓迎を受けていました。
しかし、肝心の自国では、当分、彼の行く先々では、鍋によるコンサートが開かれるものと思われます。
マクロン大統領
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