49.3条により、国会で採決をとらずに採択された年金改革について、憲法評議会の決定が4月14日に下されることになっていたので、もしも、これが正式に決定されれば、また大変なことになるだろうと思っていました。
この憲法評議会の決定次第とはいえ、後になって考えれば、憲法評議会を通過することは、ほぼ確実なことではあったのです。
結果はこの日の夕方に発表されることになっていたので、夕方から夜にかけては、また大変なデモが起こることは容易に想像できることでした。
私はその日、日本食材の買い物に出かけて、ランチをしてから、また別の場所に行くつもりでいました。日本食材店の多くは、問題の憲法評議会の近辺にあるのですが、まだお昼すぎくらいの時間帯であったし、まさかそんなに人が集まっているとも思えず、ついでに昨夜は、ものものしく警察や憲兵隊が立ちはだかっていたので、その変貌ぶりをちょっと横目で見ていこうかな・・とも思っていたのです。
憲法評議会の門の前には、頑丈なバリケードができていて、それを取り囲むように、午後の早い時間から、報道陣が取り囲んでいました。憲法評議会の建物は間口もそんなに広くもなく、通常だとあまり目立たない建物でうっかりすると見過ごしてしまうような感じでもあるし、そもそも日常的には、憲法評議会など、そんなに注目される場所でもありません。
しかし、その日の主役級に注目されていた憲法評議会以上に驚いたのは、もう、すごい人数の警察や憲兵隊がうろうろしていて、紺色の警察車両があちこちに縦列駐車してあり、そして、それは車だけではなく、車をのぞき込むと中にはぎっしり警察官が待機しているのでした。
また、すぐ近くに消防署があるにも関わらず、消防車までが通りに出て待機しているのには、まさか!何かが燃やされる前から出動しているとは・・と、その警戒ぶりの凄さを見せつけられた感じでした。
私は、そのまま次の用事を済ませるためにの移動で、メトロの入口まで行ったところ、パレ・ロワイヤルの駅は閉鎖されており呆然。「駅が閉鎖とは・・これは迂闊だった・・」と、天気も悪く、そのまま迂回して行くのも、大変だ・・と、あっさり断念して帰宅しました。
メトロの駅・パレ・ロワイヤルは閉鎖・・ |
その後、別の場所で買い物をして帰ると、なんだか疲れて、少し休んでいたら、外から警察車両のサイレンの音が聞こえてきて、年金改革が決定したことを知りました。
テレビをつけると、その時はすでにもう、パリの街を練り歩く大勢の人の姿が映し出されており、この日の最初の集結場所は、パリ市庁舎であったようです。
公式発表では、この日、パリだけでも1万人の警察官が出動していたそうで、だいたい警察官だけで1万人とは、驚きです。
この警察・憲兵隊は、パリ市庁舎、バスティーユ広場と次々にすごい人数のデモ隊が移動する場所を次々と閉鎖していったようで、ゴミ箱を燃やしたり、Velib(パリの貸し出し自転車)を燃やしたり、場所によっては、溜まっているゴミを道路にばら撒いてトラムウェイを止めたとか、最近では珍しくなくなっている光景に、テレビの解説でも、今のところは「セ・パ・トレ・グラーブ(そんなに深刻でもない)」などと言っているのには、「一体、どうなったら、深刻なんだ??」と突っ込みを入れたくなりました。
しかし、こんな状態はパリだけではなく、フランス全土で多くの国民が大声をあげているのですから、やはり穏やかではありません。この日はレンヌで警察署や教会の扉に火がつけられ、火災が起こっています。
一方、この日、マクロン大統領は火災から4周年を迎える前日ということで、工事中のパリ・ノートルダム大聖堂を視察し、建設工事に携わっている人々と対面し、「何があっても引き下がらず自分の選択を突き進む大統領である」と自己紹介したとか・・。また、「不人気を受け入れる準備はできている」などと話したとか・・。
また、ボルヌ首相は、この日は「インフレによる消費低迷のための視察」として、スーパーマーケットを訪れていたというのですから、どうやら憲法評議会が年金改革を決定することは、事前に承知しており、この結果による対応は、警察や憲兵隊に任せて、日常の仕事にまい進している様子は、余計に国民の怒りを増すだけでなく、その距離を痛切に感じさせられる気もしてなりません。
CGT(全国組合連合)は、次回のデモを5月1日と発表していますが、そもそも5月1日(メーデー)は、フランスでは特別な日。その特別な日は、今年はさらに、「特に特別な日」になりそうです。
年金改革決定 憲法評議会 パリ特別警戒
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