パンデミック以来、パリには自転車が急速に普及しました。以前は、フランス人にとって、自転車は、移動手段ではなく、スポーツや娯楽として、車に自転車を積んで、郊外の広い場所に行って乗るような位置づけでした。
日本で生まれ育っている私にとっては、車で移動するほどではない場合、駅まで自転車とか、ちょっとした買い物には自転車という生活をしていたので、パリではそれができないことがとても不便に感じていました。
自分の自転車で移動するのは、別に自由ではあるのですが、すぐに盗難に遭うので、買い物をしている間に自転車が盗まれてしまうことが心配でおちおち買い物などしていられない感じだったり、もしくは、すごく頑丈な鉄パイプのような鍵でロックしなければならないので、その重たい鍵を持ち歩き、いちいち、その大仰な鍵をかけなければならないことが煩わしくて、結局、自転車はあまり乗らないことになってしまっていたのです。
ところが、環境問題やパンデミックでの感染拡大を懸念することから、Velib(べリブ)という自転車のレンタルサービスが一気に増加し、それに加えて、電動キックボードのセルフレンタルサービスがここ数年であっという間に、ものすごい数になりました。
ところが、この電動キックボードについて、利用者があまりにも無秩序で危険であるという反対の声が大きくなり、パリ市は利用可能年齢を12 歳から 14 歳に引き上げ、罰金を 35 ユーロから 135 ユーロに引き上げましたが、こんなことでは危険な状況は改善されないと、この電動キックボードの是非についての市民投票が行われることになりました。
実際、パリは狭い道も多く、また自動車の交通量も人も多く、それに加えて、自転車、キックボードが混在しては、事故が多くなるのも当然のことでもあります。
電動キックボードの便利なところは、小回りが利いて、車や人の間を縫うようにして移動することができる点でもあり、その分、無理をして通過しようとするケースは当然、多いわけで、しかも電動である分、想像以上の力で動くわけです。
一時は、犯罪を起こした人の移動手段として、電動キックボードが多用されていた印象もあり、なんだかあんまり良い印象がないな・・と思う時期もありました。
2022 年にパリ市が委託した調査によると、ユーザーの 26% がすでに事故に遭っており、そのうちの 9%がかなり深刻な事故を起こしているという結果も出ています。26%が事故に遭っているという数字は利用者の4人に1人が事故を起こしているということで、これはなかなか、穏やかな話ではありません。
一方では、車やバスなどに比べてCO2の排出量は圧倒的に少なく、環境問題には寄与する交通手段でもあります。
パリの電動キックボードのユーザーの80%は45歳未満で、これに対して反対の大きな声は特に団塊の世代以上の人々から上がっています。
現在パリに存在する電動キックボードは、15,000台と言われています。
来年に迫ったパリオリンピックの時などは、おそらく交通規制なども厳しく行われ、公共の交通機関も飽和状態になると考えられる中、この電動キックボードは大きな交通手段の一つとしても貢献するものになるとも考えられていました。
以前、娘の小学校で、「傘は子供にとって、危険だから、傘は禁止!」と言われて仰天したことがありましたが、「危険となりえるものでも、便利に上手に使うことをなぜ子供に教えようとしないのか?」と思ったものです。
今回の電動キックボードにしても、安全に利用するように指導したり、一部、規制したりすれば、便利な交通手段として存続することができるのに・・と思います。
しかし、結局、約10万人のパリ市民による投票の結果、セルフレンタルサービスのキックボードは 9 月 1 日からパリから消えることになりました。
パリ市電動キックボード セルフレンタルサービス禁止
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