史上最悪の食品スキャンダルと言われた2名の死亡者を含む75名の犠牲者を出したブイトーニの冷凍ピザ食中毒事件から約1年、事件の被害者家族(63家族)とネスレ・フランス(ブイトーニのピザ工場の親会社)との間でようやく合意に達し、ネスレ・フランスは、被害者に対して相応の賠償金を支払うことで合意に達しています。
63家族全体の弁護を請け負っている弁護士は、この事件の賠償金として、2億5千万ユーロの支払いをネスレ・フランスに対して要求していました。
この賠償金の支払いは、医学的評価に従い、公平な方法で、損害の深刻さとそれぞれの状況を考慮に入れ算定されていると言われており、被害に応じて中には数十万ユーロに達するものもあると言われています。
しかし、この金額については、メディアを含めて絶対的な守秘義務が課せられており、この同意に関しての内容や金額については公表されないということです。
死亡した子供2人の人生はもとより、重度の溶血性尿毒症症候群(HUS)に感染した数十人が生涯にわたる障害を負ってしまったのですから、とりかえしがつかないこととでもあり、相応の賠償金の金額は生半可なものですまされるものではありません。
しかし、未だ一部の家族は同意を拒否しているそうで、完全な合意に至ったわけではありません。
この事件後に、以前に工場で働いていた職員が公開した大腸菌入りピザを生産していた工場の不潔な映像が流出しましたが、ちょっと信じがたいレベルの不潔さで、この工場の生産ラインはストップされ、一旦、再開したものの、長くは続かずに工場は閉鎖に追い込まれています。
私自身も、たまに冷凍ピザを購入することもありますが、あの映像を見た後は、ブイトーニのピザだけは手がのびることはありません。
しかし、一応、一段落がついたのは、民事訴訟の部分で、ネスレ・フランスには、まだ刑事訴訟が控えており、パリ検察庁が、「不随意殺人」と「不随意傷害」について司法捜査を継続しているものの、まだ起訴されてはいません。
当のネスレ・フランスの広報は、「民事訴訟では、友好的な合意が通常であり、刑事訴訟を回避することなく民事訴訟を終わらせる」、今回の事件も「そのプロセスに従っている」「妥当な時間内に犠牲者とその家族の宥和に貢献するために、友好的な補償プロセスをとることを決定した」とかなり事務的な発表をしているあたりは、あまり好印象は持てません。
これだけの事件を起こしておいて、好印象もないとは思うのですが、当初からネスレ・フランスの対応には、誠意というものが感じられず、食品会社における食中毒という致命的な危機対応は明らかに充分なものではありませんでした。
あくまで推測ではありますが、一部の家族の同意が得られていないというのは、このあたりも影響しているのではないか? もっとも甚大な被害を被った家族からしてみれば、賠償金の金額だけでなく、このような姿勢もまた納得がいっていなのではないか?と思ってしまいます。
一般大衆からしてみれば、喉元過ぎれば・・となってしまうかもしれませんが、消費者側からしたら、あのような不潔な食品工場が存在しえたということも恐怖であり、冷凍ピザにかかわらず、食品を扱う場所での衛生検査なども徹底する方向に進んでほしいものです。
ブイトーニ冷凍ピザ食中毒事件 賠償金 守秘義務
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