先週の土曜日に起こったパリのメトロ6号線の死亡事故は、ちょっとあり得ない、いや絶対あってはならない悲惨な事故でした。降車時にコートがドアに挟まってしまった乗客の女性がそのまま発車してしまったメトロに引きずられて身体の一部がホームと線路の間に挟まれて死亡してしまった事故でした。
この事故直後にアルコール・薬物検査を受けた運転手は陰性の結果が出ていますが、今週末にこの運転手が「過失致死」の罪で起訴され、拘留されたことにRATP(パリ交通公団)6番線の同僚およびエージェントが怒って抗議のデモ・ストライキを行いました。
デモの当日、メトロ6番線が止まったのは半日ほどだったようですが、彼らはこの事故を起こした運転手について「彼は10年以上にもわたって真面目に仕事に取り組んできた人間で、犯罪者ではない!この拘留は間違っている!彼が警察で夜を過ごさなければならないなどということは、あり得ないことだ!」と息巻いているそうです。
また、「私たちは悲劇的に亡くなった女性とその家族には心からの哀悼の意を表します。しかし、私たちは年中無休の公共サービスを提供しています。私たちは暗殺者ではなく、乗客を安全に運ぶために働いているのであり、乗客を引きずり殺すために働いているわけではありません。私たちは敬意をもって扱われたいと思っています。事故を起こしたとはいえ、運転手がこのように犯罪者のように扱われるのをこれまで見たことがない!」と、FO-RATP組合の呼びかけにより、「撤回権」を行使しようとしています。
たしかに、駅のホームや電車の構造などの安全対策にも問題はあり、この事故の責任を個人に負わせるのは酷な気がしないでもありませんが、しかし、実際に乗客が死亡してしまった電車を発車させたのは運転手で、意図的に行ったものではないとしても彼に過失がなかったとは言えないのではないかと思うのです。
不幸な事故ではありますが、彼が起訴・拘留されるのは、何も凶悪な犯罪者であると烙印を押していることとは違って、あくまでも「過失致死」なのです。
それを「運転手は犯罪者ではない」とか、「自分たちをもっと敬え!」などと言いだすのは、同僚としてはまことに連帯を感じる抗議であるとはいえ、なにかちょっと違うのではないか?と思ってしまいます。
運転手本人は、事故後、相当なショックを受けていて、ケアが必要であったというような話が流れてきていたので、彼自身がこの起訴・拘留について、抗議しているかどうかは、わかりませんが、組合の同僚の運転手たちが、同じ運転手として、こんな扱いをされることは、許せない!と言っているのです。
しかし、許せないとは、被害者とその家族が言いたいことで、責任や罪についての言及云々以前にやるせない思いに打ちひしがれているのではないかと思われます。
パリ検察庁は、この事故に関する調査は警察だけでなく、陸上交通事故調査局が捜査を開始し、死亡事故に至ったすべての状況を分析すると発表しています。
いずれにしても、5分おきに発着するメトロのホームの乗客の乗降状態を監視カメラだけで運転手が一人でチェックするというのは、今回のような事故もあり得ないことではありません。
RATPは、この運転手が犯罪者であるかどうかではなく、どうしたら、このような事故が怒らないような対策をとれるかどうかを考えてもらいたいと思います。
メトロ6号線死亡事故 運転手 過失致死起訴
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