2023年4月4日火曜日

マクロン大統領の風刺フレスコ画消去要請

  


 溢れるほどの歴史ある芸術作品が存在するフランスで、皮肉を込めた風刺画もまた、フランスでは珍しくはありませんが、アヴィニョンのある駐車場に描かれたマクロン大統領を描いたフレスコ画(壁画)が物議を醸し過ぎて、消去されることになったそうです。

 このストリートアートは、グラフィティアーティスト、レクトの署名入りのもので、マクロン大統領の姿をアドルフ・ヒトラーに寄せて、髪は白髪混じりのグレーヘアー、その額には皺が刻まれ、険しい顔つきでヒトラーのシンボル?でもある口髭の部分には、49.3の文字が書かれており、肖像画の上と下に「NON MERCI」(ノーサンキュー)と書かれている、まさしく現在のマクロン大統領に対する抗議や嫌みが全面に表れている壁画です。

 このグラフィティアーティストは、ことあるごとに、この種の物議を醸すアートを発表してきたようで、すでに以前に描いたフレスコ画のために、「憎悪と人種差別の扇動」と「公衆の侮辱」で訴えられている芸術家のようです。

 レクトは、アステリックスのヘルメットをかぶった歌手フランシス・ラランヌの肖像画を含む、いくつかの人物の肖像画で名を馳せた人で、しばしば政府の方針に反する絵を描くことでも有名な人で、ヘルスパスが起用され、ほぼワクチン接種が事実上の義務化のような状態になった時は、当時の保健相であったオリヴィエ・ヴェランが注射器に囲まれている絵や、マクロン大統領が(この時もヒトラー)ナチスの制服を着て、「従え!ワクチン接種を受けよ!」というスローガンを添えて描いていたそうです。

 その際は、2021年7月の段階でレクトは起訴されましたが、昨年12月、「表現の自由の範囲を超えていない」ということで、罪に問われていません。

 現在は、その後に描いた別の壁画の件で裁判を待っている状況だそうで、彼にとっては起訴されることなどは、全く意に介していない様子で彼の創作意欲を削ぐことはないようです。

 

 今回は、この肖像画がSNSで拡散されてしまったこともあり、また、かなり国民の怒りが暴力的になっていることもあり、県知事が駐車場の持ち主に、この壁画を消去するように申し入れ、受け入れられたとのことで、できるだけ早く消去の作業にとりかかることになったそうです。

 先日は、マクロン大統領をSNS上でゴミよばわりした女性が逮捕されたばかり。今回は起訴されるのかどうかはわかりませんが、それにしても、止まらない「マクロン大統領への意怒りの表現の自由」を抑える機会がネズミ叩きのように出てくる状況のようです。

 それにしても、こんなに嫌われても意思を貫こうとしている政府、メンタルも相当、強いな・・と感心します。


マクロン大統領 風刺肖像画


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