フランスの職場での同僚のケンカ
彼女は、私よりも、かなり、年配の、ふっくらとした、人の良さそうな、いかにも、おばちゃんという感じの人で、とても親切で、パリでの生活も長く、フランス語の環境の中で、子供を育てあげた経験もある、とても頼りになる女性でした。
ですから、彼女と知り合った当初は、まだ小さかった娘のことも、とても可愛がってくれていましたし、子供と遊ぶのが上手というか、よく娘の相手になってくれたりもし、学校のことや、フランスでの日本語の教育についても随分とアドバイスをいただいたりしていました。
彼女のご主人は、日本人でしたが、とてもリッチな人で、別々の職場ではありましたが、二人とも働いていましたので、パリにアパートを何軒ももつ、お金持ちの奥様でもありました。
ですから、いつもおしゃれで、身綺麗にしており、気前もよく、威勢も良い人でした。
彼女の話すフランス語は、決して上手ではないのですが、臆することなく、堂々と話すので、勢いに圧倒されて、何んとなく、そのまま通ってしまうようなところがありました。
明るく、おしゃべりな彼女ですが、自分の素性については、あまり話すことはありませんでしたので、彼女が日本のどこから来た人なのか? どんな暮らしをしていたのか? 私は、一切、知りませんでした。
私は、基本的に、人のことを詮索するのが好きではありません。
会話から、自然と出てくることで知りうる情報以外は、個人的なことは、聞きません。
おそらく、もう、彼女は、日本で暮らした年数よりも、パリに住んでいる年数の方が長くなっているので、今さら、日本での生活の影は、あまり見えなくなっていたのかもしれません。
何よりも、彼女が隠したかったらしいのは、彼女の年齢で、周りのみんなが何気に話していれば、出てくる年齢の話題になると、普段は、おしゃべりな彼女も、微妙に避けるので、まあ、女性だし、ある程度の年齢になれば、歳の話は、したくないものなのだろうくらいに思っていました。
しかし、だんだんと時が経つにつれて、彼女のあの威勢の良さや雰囲気から、何か、表面とは、違うものも感じていました。
日頃は、温和な彼女ですが、ある時、職場で、同僚と、もの凄いケンカを始めて、その迫力に、息を飲みました。
ケンカになった相手も、最初は、対等に話していたのですが、そのうちに、彼女の迫力に押されて、プイッと、休憩室へ去っていこうとしたのです。
すると、頭に血が上っていた彼女は、相手を追っかけていき、「このアマが!!」と叫んだのです。
「このアマ・・・」始めてライブで聞いた言葉でした。
なかなか、日本にいても聞かない彼女の言葉に、私が、うっすらと感じ始めていた、何か、表面とは、違う彼女の一面を見た思いがしたのです。
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