2019年11月17日日曜日

パリにいた、ある日本人カップルの離婚劇





 私が出会った頃、彼女は、30代前半の女性で、日本人の絵描きさんのご主人と二人でパリに来ていました。絵描きさんといっても、当然、絵で収入があるわけでもなく、かといって、フランス語のほとんどできない人が、容易に他の仕事につけるような状況にもなく、収入のほとんどないご主人を彼女が働いて、支えていました。

 パリに来るときは、二人で夢をふくらませて、地方から東京に出てくるような気分で、来てしまった感じで、いくら、子供はいなくて、夫婦二人で身軽とはいっても、現実は、そんなに簡単ではなかったようです。

 それでも、彼女は、彼女なりに、パリへの憧れなどもあったようで、わずかなお給料で、ご主人の生活を支えながらも、おしゃれが好きで、しかも、けっこうブランド物が好きだったりして、生活を切り詰めながらも、バーゲン期間などは、必死にブランド物のセールに並んだりしていました。

 当初、といっても、その頃は、私自身は、まだ、娘も小さくて、子供を預けて仕事をしていたので、もう通勤と子育てで、いっぱいいっぱいだったので、他の人との付き合いは、ほとんどなく、彼女についても、周りから、話を漏れ聞く程度で、よく彼女のことも知らなかったのですが、ご主人が作ってくれたお弁当を持ってきていたり、何か、彼女が忘れ物をすると、ご主人が届けてくれたりしているというのを聞いていたので、「二人で夢を持って、パリに来ている夫婦は、仲がよいのだなぁ・・」くらいに思っていました。

 それから、数年経って、あるとき、彼女の家の電話が壊れてしまったという話を聞いて、「もし、必要なら、家に使っていない電話があるけど、使いますか?」と申し出たところ、ぜひ、欲しいというので、彼女に電話をあげたりしました。

 その時も、私は、まあ、「電話が壊れたのね・・」と思っただけで、別にその事情については、何も尋ねませんでした。

 ところが、そのうち、どこからか、彼女がご主人と、あまりうまくいっていなくて、夫婦げんかが絶えなくなっているらしく、電話もその際に、ご主人が壊してしまったらしいという話が漏れ伝わってきました。

 ケンカの原因は、わかりませんが、不安定な生活のストレスの中では、ケンカの原因は、いくらでもありそうです。

 それから、まもなくして、彼女が離婚して、日本に帰るということになったらしく、私は、あげたつもりだった電話が彼女から戻ってきました。

 ただ、少し、妙だな?と思ったのは、その時に、彼女が、自分は、もしかしたら、また、パリに戻ってくるかもしれないからといって、荷物を全部、日本へは、引き上げずに、一部をパリの知り合いの家に預けて行ったということでした。

 勤めていた会社も辞めて、離婚して、日本に帰るというのに、また帰ってくるかもしれない・・離婚するなら、ご主人が一人で日本へ帰るのでもよいのに、ご主人の方は、彼女やパリにも未練があったのか、彼女も一緒に日本に帰ることで、離婚に同意したようなのです。

 とにもかくにも、すったもんだのあげくに、彼女は、ご主人と二人で、日本へ帰って行きました。そして、数ヶ月後に、果たして、彼女は、一人でパリに舞い戻ってきました。

 再び、彼女は、パリで、周囲の助けを借りながら、アパートを探し、元いた会社に頼み込んで、復職しました。

 離婚という人生の一大事に、あまり、彼女を深く詮索することもいけないと思っていましたが、彼女の方は、意外と立ち直りも早いなぁと、なんとなく、傍目から思っていたのです。

 ところが、また、それから、半年後くらいに、びっくりするようなニュースを聞いたのです。

 彼女がまた、パリに住んでいる、別の日本人の男性と再婚して、日本へ帰るというのです。

 結局のところ、彼女には、別の男性ができていて、離婚するために、なんとか、ご主人を日本へ連れて帰り、彼女は、別の人と再婚するために、再び、一人でパリにやってきていたのです。

 離婚も渋々受け入れたというご主人が、もし、パリに残っていたら、彼女の再婚には、黙ってはいないはずです。

 これは、パリを舞台にした、なかなかエグいドラマのような展開で、私は、あまり、関わり合いは、ありませんでしたが、その間、パリでの彼女の引越しを手伝ったり、アパートの保証人になってくれたりした人たちも、一切、彼女に他の男性がいたことは知らずに、ひっくり返って驚かされたのでした。

 






















 

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