フランスでは新生児スクリーニングの対象が拡大され、乳児脊髄性筋萎縮症、重症複合免疫不全症、極長鎖アシルコエンザイムA脱水素酸素欠損症があらたに対象に加わりました。
脊髄性筋萎縮症を含む3つの重篤疾患は、9月1日から、出生時にスクリーニングされます。
これまでフランスでは、生後2~3日以内に乳児のかかとから、数滴の血液を採取し(吸取紙に採取する検査)が義務ではありませんが、強く推奨されており、13の疾患について、無料で検査が提供されてきました。
私が出産したときには、こんな話は全然、知らなかったので、まあ、フランスではなく、アフリカでの出産だったため、今になって、こんな話を聞くと、「え~~~?こんな検査、本当はしなければならなかったんだ!」と驚くばかりですが、幸いにも、娘は健康に育ってくれたので、助かりましたが、これからフランスで出産する方がいたら、このような検査が無料で提供されていることは、知っていてもいいかもしれません。
今後は、あらたに3つの重篤疾患を含む16の検査をしてくれるわけですから、万が一に備えて、一応、やってもらった方が良いのではと思います。
今回検査に加えられた3つの疾患の中でも、乳児脊髄性筋萎縮症(SMA)は最も多く、7,000人に1人の乳児に発症します。これは不可逆的な神経筋変性を特徴とする非常に重篤な遺伝性疾患です。最も重篤な場合、罹患した乳児は2歳になる前に死亡し、急速に摂食障害や呼吸困難に陥ります。
しかし、早期治療によって、その影響を大幅に削減することができます。
他の2つの疾患はさらに稀です。重症複合免疫不全症(SCID)は30,000人に1人の割合で発症し、乳児の免疫系を著しく弱めますが、生後2ヶ月以内の骨髄移植で治療可能です。極長鎖アシルコエンザイムA脱水素酵素欠損症(VLCAD)は100,000人に1人の割合で発症し、出生時から高度な栄養管理が必要となります。
まさに万が一に備えてという確率ではありますが、万が一にもこれらの重篤疾患が認められた場合、早期治療ができるか否かは、大変な違いが生まれます。
フランスは長らく、この分野では先進国であり、過去50年間で4万人の子どもがスクリーニングによって治療を受けてきました。
しかし、イタリアなどは、出生時に約40の疾患をスクリーニングしているそうで、現状では、まだまだ・・という声も多いそうです。
まったく、私は、自分が出産した時には、何の知識もなかったので、今になって聞いて、びっくりすることが多いのですが、本当に無知な親のもとに生まれた娘が無事に健康に育ってくれたことは、奇跡的なような気がしています。
新生児スクリーニング拡大
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