2024年6月11日火曜日

国民議会解散 マクロン大統領の驚きの決断に政治的激震

  


 マクロン大統領は6月9日日曜日、欧州選挙での極右勢力の圧勝を受けて国民議会の解散を発表し、国内外に大きな波紋を呼び起こしています。

 極右勢力が圧倒的な勝利をおさめたことも驚きでしたが、それに輪をかけた驚きです。


 エマニュエル・マクロン大統領は日曜日の演説で、「これは欧州を守る政党にとって良い結果ではない。したがって私は何事もなかったかのように振る舞うことはできない」と語っています。

 憲法第12条によれば、「共和国大統領は、首相および議会議長と協議の上、国民議会の解散を宣言することができる」とされているので、あくまでも合法的なことではあるのですが、それにしても、これは、欧州選挙の結果に対しての解決策としても、彼にとって、さらに悪い状況を生むリスクも充分に孕んでいる危険な決断でもあり、この解散総選挙が行われた後には、結果が彼の望まないものであったとしても、再び解散・・ということはできません。

 この国民議会解散と解散後、早期に行われるとされている選挙に対しては、国民から多くの抗議の声があがり、さっそくあちこちでデモが起こり始めています。なんと、あまりにも急な日程でこの選挙の第1ラウンドは6月30日、第2ラウンドが7月7日という、これまた驚きの急展開の日程が提示されています。



 このマクロン大統領の驚きの発表の翌日には、日中には、マクロン大統領の母校であるアンリーキャトル高校(パリでは超有名な名門校)には、100人以上の学生が集まり、抗議の声をあげました。

 「私たちはRNの成功に反対し、マクロン大統領が下した危険な解散決定に反対していると言うためにここに来た!バカロレアが迫った時期ではあるが、授業よりももっと重要なことだ!」と。さすがにエリート校、アンリーキャトルといえば、とてもふつうの高校生が行ける学校ではなく、本当に寝る間を惜しんでどころか、通学の時間さえも惜しんで勉強するために、わざわざ近所に部屋を借りてまで勉強するような学生たちです。

 また、夜には、レピュブリック広場で極右と左派の連合を求める数千人規模の集会がおこっています。


 

 政治の大きな決断に対して、決して黙ってはいないフランス人のこの大きな反応は、当然のこととはいえ、これが大きな社会的なうねりとなる可能性は少なくありません。

 ましてや、フランスは、その選挙のすぐあとにパリオリンピックを控えており、極度の警戒体制が敷かれている状態。現段階では、オリンピックムードなど吹っ飛んでしまった感じがあります。

 そもそも欧州選挙の結果は、全く予想していなかった結果であったとしても、マクロン大統領のこの国民議会解散、総選挙の決断は、あらゆる意味において、リスキーであるとしか言えません。

 どうにも、大統領として2期目に入ってからのマクロン大統領は、極端に強気な発言が多く、いちいち波紋を呼んでいる印象がぬぐえず、もう少しまるくおさめる方法はなにのだろうか?と思ってしまいます。

 とりあえず、この国民議会解散により、現在、国会で審議中の立法作業などは、全て中断されます。大統領の宣言により、国民議会は解散されますが、選挙結果が出るまでは、現閣僚が当面の時事問題を管理していくことになります。

 しかし、この国民の抗議の声がどこまで燃え上がるかは、予想がつかず、これ以上、騒ぎが広がれば、暴動に発展し、また街中が燃えることになりかねず、さっそく、内務相は、暴力的行為に走らないようにと呼びかけています。


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