2024年2月24日土曜日

農民たちの怒りにマクロン大統領が再び火をつけた

  


 毎年、年に一度、パリで行われるサロン・ド・アグリカルチャー(国際農業見本市)の開催が近付いてきて、農民たちの怒りの火がまだくすぶり続けているどころか、あちこちで、未だ火が燃え続けているというのに、今年のサロン・ド・アグリカルチャーは、どんな顔をして開催するのだろうか?とずっと思っていました。

 この見本市は、サロン・ド・ショコラなどが開催されるのと同じポルト・ド・ヴェルサイユ・エクスポ(パリ15区)で行われ、フランス各地から、牛や豚などから、多くの野菜やチーズ、ワインなど数多くの農業製品が集結するフランス人なら知らない人はいないほどの有名な催し物です。

 当然、数々の展示物(動物も含めて)と、それらを展示販売するために多くの農業、農業製品・そしてその製造に携わる人もやってきているわけです。

 毎年、この催事中、そこそこの問題は起こっているのですが、今年は、数ヶ月前から農民たちの怒りの激しい抗議運動が起こっており、そして、それが収束していないなか、無事に済むはずはありませんでした。

 そもそも、農民たちが抗議運動の動きを一時、弱めていたのも、このサロン・ド・アグリカルチャーを再抗議のタイミング、きっかけと考えてタイミングを定めていたことも想像に難くありません。

 そんな農民たちの動きを考えてのことなのか? 政府は、この農業見本市の開催当日の朝に、FNSEA(全国農業経営者組合連合会)との討論会の場を設けることを発表していました。

 しかし、政府は、この討論会に、環境保護団体「レ・スールヴェモン・ドゥ・ラ・テール」や大量流通団体を招待したことが、農民たちをさらに怒らせる結果となり、肝心のFNSEA(全国農業経営者組合連合会)は、「政府は農民たちを挑発した!」とこの討論会への参加を拒否。

 農民たちをなだめるつもりが、逆に丸め込もうとしていると受け取られてしまったのです。実際に、今回の問題の図式を考える限り、農民たちが訴える問題は、環境問題対応のために農民たちに課せられている厳しい規制や、その規制を守らない海外からの輸入品を大量流通団体が販売することで、価格破壊が起こり、フランスの農家が生産しているものが正当な値段で売られていないことが問題なわけで、政府は、農家が反発を感じている人々(つまりは、農家にとって敵のような人々)で取り囲み、まさに丸め込もうとしている感じが透けて見えるメンバーの集め方でもあります。


 この農業見本市の前日には、いつの間にやってきたのやら、パリの街なみを農業用のトラクターなどが行進する異様な光景が広がり、農民たちは、この見本市の会場に集結しています。

 FNSEA(全国農業経営者組合連合会)の討論会不参加とさらなる怒りを前にして、マクロン大統領は、環境保護団体のこの討論会への招待を取り下げましたが、時すでに遅しで、農民たちの怒りには火がついてしまいました。

 環境問題に配慮しなければならないことは、必要なことではあるものの、農民ばかりにその対応を押し付けている現実に政府は、やっぱりわかっていなかった・・ということが表面化してしまったカタチになりました。

 昔、日本でヒットした映画のせりふのように「事件は会議室で起きてるんじゃない!現場で起きてるんだ!」というのがありましたが、まさに、そんな感じがします。

 マクロン大統領は、こうして時々、反発を買うであろうことをやらかして、地雷を踏むことがあり、これまでも、「よくも、こんなに国民に嫌われて平気なんだな・・よっぽどハートが強い人なんだな・・」と感心するのですが、どんなに嫌われても、やっぱり平静な顔をして、見本市にやってくるのです。

 農民たちの怒りはもっともで、彼らの現状には、心が痛むところではありますが、それでも、一縷の光というか、なぐさめられることは、こうした抗議行動の間も、ただただ怒っているだけではなく、音楽をかけたり、ダンスをしたり、楽しんでもいるようなところも垣間見える場面があることで、そんな場面では、彼らの中のラテンの血を感じます。


FNSEA(全国農業経営者組合連合会)と環境保護団体と政府の討論会


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