2024年2月25日日曜日

サロン・ド・アグリカルチャー(国際農業見本市)の開催初日は大混乱 歴史的見本市

  


 普段は、日中はテレビはつけないことにしているのですが、前日のパリの街中でのトラクターの行進がなんとなく気になっていて、テレビをつけてみると、なんと、マクロン大統領が農民たちに囲まれるカタチで、議論をしているところでした。

 日本語で言う「膝と膝を突き合わせて・・」という表現には、ちょっと甘い感じ・・皆、立っているので、図式だけ見たら、大統領を農民たちが取り囲んで吊るし上げているように見えなくもありません。

 マクロン大統領が当初、この日に予定していた農民たちとの大討論会は、環境保護団体や大量流通団体をも巻き込んだことから、農民たちの大反発をくらい、大討論会は、立ち消えになっていたところ、結果的にこのような農民たちとだけの討論になったのには、当日、朝からの見本市会場での一般公開前の会場での農民たちの抗議デモ行動が起こったことも大きく影響しています。

 当然のことながら、この見本市の行われている会場は、民間のセキュリティ会社の警備に加えて、警察や憲兵隊によって、厳重に警備されていましたが、それにもかかわらず、この警備の隙をついて、農民たちが警備を突破して、会場に押し入り、「マクロン辞めろ!」の大合唱。

 午前8時には、会場に到着していたマクロン大統領も大混乱の中、平穏にこの見本市を開催するために彼らとの対話の場を設けたのです。

 怒って興奮気味のこれだけの人々相手に議論をするという勇気だけでも、相当なもの、「私はいかなる質問もはぐらかさない!」(この言葉、日本の政治家にも言ってほしい)と断言して、マクロン大統領はこの農民たちとの議論に臨みました。

 この農民たちの抗議運動当初から、彼らが要求している内容は数えきれないくらいありますが、この時も彼らの言っていることの大枠は同じ。しかし、中には、「あなたは、ウクライナには、大金をはたいて援助しているのに、私たちには、パンくずだけだ!」と怒りをぶつける人もいました。

 農民たちが、それぞれにマクロン大統領に訴えかけ、時には、興奮状態になり、逆にマクロン大統領自身がキレかかるような場面もあり、この討論は、2時間以上も続き、いったい、どうやって収拾がつくのだろうか? 農民たちの中には、「1日中でも話し続ける!」などと言いだす人もいました。

 マクロン大統領は、「すでに、政府は動き始めている・・」と説明するのですが、彼らは納得せず、「私たちはもう限界なんだ!時間がかかり過ぎだ!早くしろ!」と訴えます。

 マクロン大統領は、「農業は国家にとって不可欠な要素であり、とても誇りに思っている産業である」と述べたうえで、「しかしながら、その構造には、問題があり、改革の必要がある」ことを認め、「欧州レベルで生産の責任を負うために、私は資本削減と闘いたい」と語り、「最低価格、下限価格、加工業者がそれ以下では購入できない価格を設定すること」を約束。

 話しの合間合間に「私を信じてください!」と訴えるマクロン大統領に、これまで30年間虐げられ続けてきた農民たちがあっさりと信じられないのも当然のことです。

 ついには、マクロン大統領は期限を区切り、「3週間以内に、私はすべての労働組合とすべての組織を集めて、何が行われたのか、あるいは行われていないのかを評価し、農業保護計画を立てること」を約束し、月曜日から突貫でそれに取り組むと宣言しました。

 このあたりで、ようやく農民たちがマクロン大統領を解放してくれる感じになっていたのですが、この農民たちとの討論は2時間以上も続いていたのです。

 SPや警備がついていたとはいえ、大統領がこの至近距離で彼らと直に話すということも、ちょっとなかなかないことで、「ヤレヤレ・・すごいな・・」と思いましたが、同時に「日本の首相にはできないんだろうな・・」と思うのでした。

 長時間にわたるこの討論会に見入って、見ているだけでもようやく終わってヤレヤレ・・というところで、テレビを消して、外出したのですが、それから夕方になって帰宅して、夜、テレビをつけたら、まだ、この見本市のニュースをやっていて、マクロン大統領が映っていました。

 「今日は、一日、この話題で持ち切りだったんだな・・」と思って、よく見てみると、画面の左上には、「DIRECT(生中継)」の文字が・・!「えっ??マクロン大統領、まだいるの?」とびっくり!

 なんと、この日、マクロン大統領は、あの討論会の直後に予定よりも4時間遅れの開会式でテープカットをした後、13時間以上もこの見本市の会場で、ブースを廻り、多くの団体と話し合い、また、それぞれのブースに控える農民たちと話し、時には動物と触れ合い、時には試食しながら、長い一日を過ごしたのでした。

 事の成り行きとはいえ、忙しいスケジュールの中、13時間をこの見本市に費やしていたことには驚きだし、今、ここをおろそかにはできないということだったのでしょう。

 とにもかくにも、毎年、何かしらの衝突や問題があるこの見本市も今年は記念すべき60周年。こんなに混乱している農業見本市は、初めてのことで、「歴史的な国際農業見本市」と評されています。

 問題は、未だ山積みのうえ、フランス国内だけの問題ではないため、ハードルも高いと思われますが、決して、マクロン大統領は最高!というわけではありませんが、こうして、大統領が面と向かって話しをしてくれるだけでも、日本人としては、羨ましい気持ちがあり、少なくとも、国の長として、日本のそれと比べて、全く同じ職業とは思えないことに、複雑な思いがあるのです。

 

国際農業見本市 歴史的な見本市


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