欧州選挙の極右勢力の圧勝を受けて、マクロン大統領が発表した国民議会解散・選挙は、フランス全土に衝撃を与え、もうあらゆる報道機関が、この話題に終始しているといっても過言ではありません。
この解散・選挙への決断について、発表直後にマクロン大統領は、エリゼ宮のサイトでその経緯と理由を説明する文書を発表しています。
この文書の中で、「欧州選挙の結果は、大統領多数派を含む欧州を擁護する政党にとって良い結果ではない」、「近年、経済回復、国境の共通保護、農民支援、ウクライナ支援など、欧州によって可能となった多くの進歩に反対してきた極右政党が前進を続けている」、「統一され、強く、独立したヨーロッパはフランスにとって良いことだと常に考えてきた私にとって、これは容認できない状況であり、国家主義者や扇動者の台頭は、我が国にとってだけでなく、ヨーロッパにとっても、ヨーロッパと世界におけるフランスの地位にとっても危険なことである」「極右はフランス人の貧困化であり、我が国の格下げでもある」とし、この状況を無視することはできないとしています。
「解散・選挙という決断は重大で重いものですが、何よりも信頼に基づく行為です。親愛なる同胞の皆さん、フランス国民が自分自身と将来の世代のために最も公正な選択をする能力を信じています。私たちの民主主義への信頼。主権者である国民が示してください。これほど共和主義的なものはありません。これは、あらゆる取り決めやあらゆる不安定な解決策よりも優れています。これは正しいことを明確にするための重要な取り組みであり、そのタイミングです。厳しい時代に直面しても、あらゆるデマゴギーに後退したり屈服したりせず、未来を形作るために団結して抵抗する方法を常に知っているフランスへの自信と信頼を私は持っています」
マクロン大統領は、「近日中に私は国家にとって正しいと信じる方向性を表明するつもりです」と文書で説明していましたが、その表明が今回の記者会見だったわけです。
選挙を控えての記者会見ということで、大統領でありながら、彼の立場は、その大統領としての職務と混同することは許されず、立場は曖昧なものでもあり、事実、この記者会見が行われたのは、通常、彼が記者会見を行うエリゼ宮(大統領官邸)ではなく、パリのカンボン・カプシーヌ・パビリオンで行われています。
エリゼ宮での記者会見というだけで、ある種、彼は鎧をまとっているようなところもあり、なんとなく、今回はいつもの威厳のようなものが薄らいで見えるのも不思議なことです。
この長時間に及ぶ記者会見は、多くのメディア(テレビ・ネット)で生中継され、カフェや職場などでも画面を覗いている人が多いところは、さすがに政治に対して関心の高い国だと思います。
会見での内容の大半は、すでにエリゼ宮のサイトで説明されているものではありましたが、今後の彼の具体的な政策についてもいくつか語っています。
まず、「子どもたちと青少年を守る」という観点から、「強化された対応をとるべきである」とし、特に「スクリーン(携帯やタブレット、パソコン等)への依存はあらゆる問題の温床である」とし、「11歳までに電話の使用を禁止すること、そして何よりも15歳までにソーシャルネットワークへのアクセスとその使用を禁止すること」を政府が明確に決定することを約束。
また、年金はインフレに連動し続けることを強調したうえで、労働時間の延長なくして奇跡のレシピは存在しないと断言した他、原子炉の増設についても語っています。
この会見において、彼は、この事態を引き起こしたことについて、極右勢力台頭への懸念に対して十分な対応をしなかった自身の責任を認めたうえで、それでもこれは敗北ではないとし、RNとLFIの両方を巡る左右「両極端」の「不自然な」同盟を非難し、「悪魔の同盟」と過激な表現をしています。
「極左が今日提案しているのは、共同体主義と緩みによる対応である」、そして「極右とその同盟者たちが提案しているのは、共和国、その価値観、その基盤そのものから離れることによる治安不安への対応である」と説明し、自身は、共和党の「価値観」を尊重しながら「あらゆるレベルでの共和党の権威」と「主権軸の強化」を約束しました。
彼は、この選挙で、フランス人が惑うことなく正しい道を選ぶことを信じていると語り、この選挙は、「ビジネスを繁栄させることを選択する人々と、フランスを繁栄させたいと願う人々の間のリトマス試験紙である」とも語っています。
このリトマス試験紙、日本の政治家にも使えないかな?とチラと思いました。
しかし、この記者会見に対して、世間の目はけっこう厳しくもあり、「大統領には党のために選挙運動をする権利があるのか?」などという声も上がっています。
だいたい、マクロン大統領の強引なやり方には、必要以上に国民を怒らせる場面が多くなっていることも事実で、荒れに荒れた年金改革問題の際に発令された49.3条問題も立て付け上は、首相の権限のもとでというカタチになっていて、当時のボルヌ首相がやり玉に挙げられましたが、事実上は、マクロン大統領の政策。
今年初めに農民が暴動を起こした際にも、農民たちとの直接対面の会合に自分に有利な陣営を取り込んで丸め込もうとしたことで、さらに彼らを怒らせたりしたこともありました。
正しいと信じ、国のために突き進んで行動しているのは理解できるのですが、彼のあまりに強権的なやり方自体に反発を感じている人も少なくないような気もしています。
いずれにしても、当分、フランスは、落ち着かない日々が続きそうです。オリンピックはもうすぐなのに・・。
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