突然の国民議会解散選挙から、2ヶ月間、空席になっていた首相の席。ようやく任命されたのは、史上最年少の首相とは正反対?の1951年生まれの73歳という最近の人事からしたら、かなり年長(第5共和政では最年長)のミシェル・バルニエ氏に任命されました。
フランスの首相は、大統領によって任命されますが、通常、国会の過半数に属する政党の出身の者が選ばれるのが通例です。大方は、大統領陣営の人間が務めることが多く、任命もスムーズにいくのですが、今回は、選挙の結果、過半数に達する政党が不在となり、そのうえ、過半数には達しないとはいえ、第一党となったのは、新人民戦線(NFP)であり、少なくとも、最大勢力となったこの党から首相が任命されるものと思われていました。
パリオリンピックを理由になかなか首相任命に踏み切らなかったマクロン大統領は、オリンピックが終わるころには・・と、当初は説明していましたが、オリンピックが終わっても、ずるずると決まらず、新人民戦線(NFP)はルーシー・カステッツという女性を首相に推薦しており、これには、マクロン大統領も依存はなく、エリゼ宮は彼女を首相に迎える準備ができている・・などという報道が流れましたが、結局、マクロン大統領はこの提案を却下。
その後、次から次へと様々な人の名前が挙がっていましたが、噂ばかりで、マクロン大統領は、口を閉ざしたままで、もうニュースを追うのも疲れてきた・・と思っていたところでした。
前任のガブリエル・アタル氏が任命された時は、彼はマクロン学校のミルクを飲んで育ったマクロンベイビーなどと言われるほどのマクロン直結の人物で、当時、甘いマスクで人気者だった彼の人気に乗っかり、そのうえ史上最年少の首相ということで、話題を呼びました。史上最年少の首相は、8ヶ月間でその任務を終えました。
しかし、今回は最年少とか、人気に乗っかるとか、そんな悠長な話が通用するような政情ではなく、考えてみれば、これほどやりにくいタイミングというか立場の首相というのもそうそうない気がします。
結局、マクロン大統領が選んだのは、第一党の新人民戦線(NFP)でも、マクロンの政党でもなく、議会選挙で最下位だった政党の議員です。
ミシェル・バルニエ氏は、ここ最近には、あまり前面に出て話題をさらうことはなかった人物ではありますが、1993年にエドゥアール・バラデュール政権の環境大臣として初の大臣職に就き、その後、シラク大統領とサルコジ大統領の下で大臣を3度務めた経験豊富な人物とのこと。
英国のEU離脱の時には、ブレグジットの交渉担当者として、難しい交渉に臨む非常に難しい仕事が注目されネゴシエーターとしての力量が注目され、今回の任命もそのあたりの能力に期待がかけられたのかもしれません。
しかし、常識的に考えれば、第一党である新人民戦線(NFP)から、首相を任命するのがまあまあ、妥当なところと思いきや、それをしないことで、当然、新人民戦線(NFP)は「マクロン大統領は議会選挙の結果を公式に否定した!」と真っ向から否定、このミシェル・バルニエ氏本人の評判は、そこそこなのに、この首相任命については、かなり炎上しています。
とはいえ、首相は大統領が任命することになっているため、首相が任命された以上、その首相を中心に内閣が組閣されていくものとみられます。
それでも、「マクロン大統領は、独裁を続けようとしている!」とか、「マクロン大統領は「ジュラシック・パークをやっている=化石を探しに行っている」とか、「化石であるだけでなく、政界の化石となった人物を首相に任命した!」などと非難の声も上がっており、73歳で化石扱い・・と、ちょっと啞然としてしまいました。
もう、話がヒートアップしすぎて、話は2027年の大統領選の話まで出てきて、まだ3年先のことなのに、今後のマクロン政権、どうなっていくのか?全く先が見えないどころか、いつもは、饒舌すぎるくらい国民の前に出て話すマクロン大統領が全く出てこないのは、どうしたことなのか?と思います。
フランス首相任命
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