日本の岸田首相が来仏されるというニュースを見て、このことについて、フランスでは、どの程度、取り上げられるのだろうと、まず前日にこちらでの報道を探してみました。
そんなにたくさんではありませんでしたが、トップに出てきた記事は、「日本ではすでに岸田首相の将来が危うくなっているという噂が流れている」というもので、日本の日刊紙各紙が「岸田政権は崖っぷちだ」、「岸田首相はフランス、そしてブラジルとパラグアイへの訪問中に、党を悪い状況から脱却させる方法を「真剣に考える」必要がある」、「岸田氏は低空飛行する飛行機のようなもので、まだ墜落していないが地上を航行している」と書いている言葉を引用しています。
岸田氏は自由民主党の改革に期待を寄せているが、4月28日日曜日に投票所で行われた時事通信社の世論調査によると、有権者の40%ができるだけ早く党首の交代を望んでおり、首相の支持率は30%以下で低迷していると説明しています。
また、この仏紙は、日本人の政府に対するこの不信感と不満の理由のひとつに「自由民主党の裏金事件」を挙げ、「これにより、4人以上の大臣が辞任に追い込まれており、85人の自民党議員が関与しており、彼らは募金収入を申告せず、ジャックポットを分け合ったと言われている。このスキャンダルは、特に多くの自由民主党選出議員と文派との関係により、すでに困難に陥っていた党の評判をさらに傷つけている」と書いています。
そして、さらには、「岸田は生き残れるのか?」と小見出しをつけて、現在、彼は来年9月に自民党総裁としての任期が終了するため、除名席に置かれている。もし彼が党内での立場を強化したいと考えていたとしたら、それは明らかに失敗である。今のところ、彼の政界内のライバルたちはまだ影から出てきていないが、それも時間の問題だと香港紙サウスチャイナ・モーニング・ポストが書いていると記事の一部を引用しています。
岸田首相が来仏に際して、会談される内容についてならともかく、こんな記事を書かれては、今さら、この人と話してもな・・と思われかねない感じで、微妙な感じです。
そこでマクロン大統領の日程を見ると当日、13時20分からの昼食を伴う岸田首相との会談の予定が入っているので、エリゼ宮での会談は普通に行われた模様。しかし、このような日本の首相の評判や情報は当然、エリゼ宮も承知しているはず、ただし、マクロン大統領自身もこれまでにたくさんの国民からのバッシングや逆風を乗り越えてきているわけで、風評に振り回される人物ではないものの、彼が内心、岸田首相を政治家として、どのように見ているかは、また別の話です。
その後、エリゼ宮から、岸田首相と会談した内容が発表されており、冒頭でマクロン大統領がロシア主導の侵略戦争開始以来の日本のウクライナ支援に対して首相に温かく感謝の意を表したと伝えています。
エリゼ宮が発表している日本との会談内容は、
・フランス軍と日本の自衛隊間の相互運用性を促進することを目的とした相互アクセス協定(円滑化協定(RAA))の締結に向けた公式交渉を開始することにより、日仏間の戦略・防衛協力を強化することに合意
・経済安全保障の強化を現実のものとすることを決定。首相の訪問に合わせて「重要金属分野における協力に関する日仏宣言」が採択され、経済安全保障の強化を現実のものとすることを決定し、「重要金属分野における協力に関する日仏宣言」が採択された。
・また、両国間の強固なパートナーシップの中心となる経済・産業分野、特に民生用原子力、宇宙、航空、イノベーション分野における協力の構築についても議論し、そのため、5月22日から25日までパリで開催されるビバテクノロジーショーでは、日本が注目を集める国となる。
・インド太平洋がいかなる形の強制も受けず、国際法の尊重に基づいた、自由で開かれた包括的な空間であり続けなければならないインド太平洋における協力を強化することに同意
・特に森林保護、エネルギー転換、インフラ、海洋安全保障の分野で、地域諸国の主権を強化することを目的とした協力を発展させることに合意
・G7広島プロセスの継続性と「人工知能」に関するサミットを踏まえ、グローバル・ガバナンスの問題、特に人と地球のためのパリ協定、人工知能(AI)についても議論
・2024年パリオリンピック・パラリンピック競技大会と2025年大阪万博を見据えた人的、文化的、スポーツ交流にも言及
・両国の管轄当局間の協力を強化するために、いくつかの領事事件について意見交換
この会談のメインはガブリエル・アタル首相と岸田首相の会談がメインであったと思われ、その後、ガブリエル・アタル氏はX(旧Twitter)で日本の首相との会談を友好的にポストしています。
日本での詳しい報道はよく把握できていませんが、最初に出てきたのは、岸田首相が持って行ったプレゼントが「ドラゴンボール」のキャラクターを題材にした江戸切子のグラスや孫悟空やクリリン、亀仙人のこけしだったという記事が出てきて、会談内容についてはほんの数行で「えっ?そこ?」とちょっとガッカリしました。
まあ、正直なところ、一般のフランスのメディアはこの前日の記事を除いて、岸田首相の来仏のニュースはほぼスルー。色々と、叩かれる以上に、これほどまでにスルーされる方が寂しい気がします。
この数日後に中国の習近平主席がフランスに到着したときは、打って変わってその日の夜のトップニュースとして扱われ、その日の夜にはエリゼ宮でディナー、翌々日には、マクロン大統領が幼少時代にバカンスを過ごした場所に招待して、ランチというまるで別格扱い。
世界情勢における中国の位置づけというものもあるでしょうが、それにしても、あまりの違いに愕然とさせられます。
岸田首相来仏
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