2024年5月6日月曜日

服従拒否で17歳の少年に発砲して死亡させた警察官 緊迫の再度の現場検証

  


 かなり大きな事件でも、その事件が発生した当時は大々的に報道されますが、その後の裁判までは時間がかかるため、結局、その事件はどう裁かれたのかは、見過ごしてしまうことが多いです。

 昨年、6月27日に警察官の銃撃により17歳の少年が死亡した事件は、当時は、当初、発砲した当人である警察官からの嘘の供述をもとにした調書が提出されたため、一瞬、不問に付されそうになったところ、SNSで事件現場の映像が公開され、警察官の供述が全くの嘘であったバレたことから、高圧的な態度の警察官の発砲により、一人の少年の命を奪ってしまったことが公になり、日頃から一部の警察の対応に不満を感じている若者たちの怒りが爆発し、大暴動が巻き起こり、一連の反警察への暴動は、全国的な規模にまで発展し、上院の報告書によると、学校、裁判所、その他の公共の建物が攻撃されたり、火を放たれたり、店舗が略奪されたり、全国で推定10億ユーロの被害が記録されたといわれています。

 この時の暴動の勢いは、相当なもので、私自身もたまたま出かけたショッピングセンターにこの暴徒たちが突然やってきて、お店の中にしばらく閉じ込められ、近隣の駅も閉鎖され、延々と次の駅まで歩くハメになったことがありました。

 結局、この警察官は、5ヶ月間、公判前拘留されていましたが、11月に釈放。現在は司法の監督下に置かれ、武器の所持や民間団体との接触が禁止され、ナンテール(事件現場)に行くことも禁じられています。

 彼は裁判所に保釈金も支払わなければなりませんが、しかし、彼は管理職として仕事に戻ることを許されています。

 この保釈金に関しては、金額は発表されていませんが、この事件後、警察官の間で彼や彼の家族に対する同情の声が盛り上がり、クラウドファンディングで160万ユーロ(約2億6400万円)が集まり、この大金が彼の妻に対して支払われているので、保釈金の支払いには何ら問題はないと思われます。

 今回、この話が再び再燃しはじめたのは、事件以来、双方(同隊していた警察官と車に同乗していた2人の少年)の供述の食い違いから真実を突き留めるために、これを担当している判事の要請で異例の再度の現場検証が行われ、現場における当事者たちの証言を求める機会がもたれ、この現場検証のために事件現場周辺には憲兵と警察官が多数配備され、警察のトラックと柵が事前に配置され、地域への立ち入りを阻止するため、近隣の屋根の上には警察官の姿が見え、現場上空ではドローンが飛行し、現場は金属製のバリケードで視界から隠されるという緊張に包まれたことから、この異例の再度の現場検証が注目され、再び、この事件を思い起こさせる結果になりました。

 しかし、供述の食い違いとはいえ、警察官は、車と壁の間に挟まれて追いつめられ、死亡の危険があったと主張しているそうで、彼らは、車の横に銃を構えて立っており、少年たち(死亡した少年と同乗者2人)は、車の中で缶詰め状態のうえ、何の武器も持っていません。警察官に銃をつきつけられ、追いつめられているの少年たちの方です。

 警察官たちは車の前ならばともかく、すぐ左に立っていて、車が横に移動することは不可能なのに、なぜ?警察官が車と壁の間に挟まれるという危険を感じるのかというのは、大変に疑問なところです。

 被害者の母親は、この事件の真実の追及を深く熱望し続けており、彼の釈放に対しても、「警察官という公権力を行使して子どもを殺しても釈放され、億万長者になった家族のもとへ帰る」ことに憤りを感じており、いずれにしても、「息子が警察官に殺されなければならなかった理由はないはずだ・・」と訴え続けています。

 これは、いかにしても、公正に裁かれなければならないことで、さもなくば、また、あの暴動が再燃しかねない・・そんな大変な現場検証だったのです。


大暴動を引き起こした警察官の発砲事件の再現場検証


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