2024年5月29日水曜日

ストライキはフランスの日常だけど、薬局のストライキは珍しい・・

  


 地域薬剤師連盟(FSPF)と地域薬剤師労働組合連合(USPO)は、5月30日のフランス国内の2万500軒の薬局の閉鎖(ストライキ)とデモの動員を発表しています。フランスでのデモやストライキは日常茶飯事で、たいていのストライキやデモは、公共交通機関、学校、病院、時には警察などで、いつも同じような機関のストライキなので、「げげ・・また・・」とは思うものの、あまり驚くことはありません。

 しかし、今回は、薬局のストライキというのは珍しく、こんなの前代未聞?と思っていたら、さすがにフランス!これまで、まるでなかったわけではなく、10年ぶりのストライキなのだそうです。

 今回、この薬局がストライキに踏み切るのは、医薬品の不足やオンライン販売の自由化のリスクについての警告なのだそうです。

 原因のひとつとなっているのは、医療保険(健康保険)との間の交渉で彼らが提案している薬価の再評価が不十分であり、フランス製薬労働組合連盟(FSPF)は「検討されている予算だけではすべての薬局に資金を提供できるわけではない」と宣言しています。

 薬局の経済状況悪化に加えて、彼らが主張している医薬品不足の問題もフランスのような国で医薬品が不足?とちょっと疑問にも感じるのですが、そういえば、少しまえにフランス人の常備薬のような薬ドリプラン(パラセタモール)が薬局から消えた!ということがありましたが、それは、一番、目立つ医薬品不足のごくごく一端だったようです。

 この医薬品不足の根底にあるのは、薬価の下落と政府が特定の薬価の値上げを拒否していることにあるとしています。「健康保険(国)側からしたら、薬価を上げなければ払い戻しの金額を節約することができるだろうが、薬価が低いためにフランスへの出荷は後回しにされ、最後にまわされる!」とのこと。

 政府は現在、あらゆる公的補償の見直しと削減に懸命になっていて、この健康保険の見直しも彼らのプランの中に入っており、この費用の削減のために、医者を介さずに薬局で購入できる薬品を増やしたり(通常、医者の処方箋がないと保険がきかない)、その薬局もすっ飛ばして、オンラインで薬の販売ができるシステムを構築しようとしたりしているため、薬局は、このシステムが可能になった場合、ますます立ちいかなくなる危険性を孕んでいるのです。

 私など、つい先日も薬局で山ほどの薬を買ってきたばかりで、「私はけっこうこの薬局のいいお客さんだろうな・・」などと思ったばかり。私などは、フランスの薬は、一部の薬を除いて、未だによくわからないことが多いので、お医者さんに説明を聞いて、さらに薬局で、薬について、色々と質問したりすることもあるので、オンラインなどよりも安心ではあるのですが、きっと若い世代の人たちにとったら、このオンライン薬局が保険の適用になり、少しでも時間と費用が節約できるようになれば、一気にそちらの方に流れてしまうのではないか?とも思うのですが、便利になり、公費が削減できれば、政府の予算にだって、限度があるのだから、悪いことではないのにな・・とは思います。

 だいたい、フランスに来て、驚くことのひとつは薬局に並ぶ薬の種類の少なさで、多くの人々は処方箋を持って薬局に薬を買いに行くので、専門的というか小難しい薬に関しては、奥の部屋にストックされていて、一般客の目に触れることはありません。

 たいていは、医者の処方箋があれば、薬の種類にもよりますが、ミューチュエル保険(健康保険ではカバーしきれない部分をカバーしてくれる保険)に加入している場合は、自分でその場ではほとんど支払うことはないので、自分の飲んでいる薬が一体、いくらなのか?処方箋の裏に印字された値段を見ればわかるのですが、値段の確認もしていないので、言われるまま・・金額を気にすることもほとんどありません。

 なので、見方を変えれば、これまで薬局はけっこうおいしい商売をしてきたわけで、このインフレの中、けっこうな殿様商売をしてきた印象が私にはありました。

 私が日本に行ったときに買い物をしてくるものの中に薬類があり、日本に行くたびに日本の薬局に行くのですが、その商品の多さやマチマチな値段のものを見比べたりするたびに、こういう薬局、フランスにもあればいいのにな・・と思うのです。

 おそらく、日本の薬局だって、大昔のいわゆる薬局・・薬だけでは立ちいかなくなって、今で言うマツモトキヨシ・・みたいな薬局?(もはや薬局なのかどうかもよくわからない)に展開していったわけで、この間、渋谷に行ったときにマツモトキヨシなどを覗いてみたら、外国人観光客を狙ってだと思いますが、どの薬局も「免税」の大看板があるのにはビックリしました。

 そんな日本での薬局の変遷を見れば、フランスの薬局などは企業?努力ゼロ、すごく古いやり方が続いています。

 それでも、地域薬局支店には13万人以上の従業員がいるそうで、この数字は私立診療所の従業員に匹敵する数字だということで、今までは良かったのでしょうが、それはもうこのままでは、立ちいかなくなるのも当然なような気がします。

 一度、フランスの薬局連盟?は、ストライキなんてしてないで、日本の薬局チェーンの視察でもしてみれば・・とこっそり思うのでした。


薬局のストライキ


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