2023年6月7日水曜日

ユニクロがプリンセス・タムタムとコントワー・デ・コトニエの店舗を大幅閉鎖

  


 ユニクロ・フランスがプリンセス・タムタム (Princesse Tam Tam (ランジェリー)とコントワー・デ・コトニエ(Comptoir des Cotonniers (婦人服)の国内店舗を大幅縮小することを発表したというニュースを聞いて、最初は意味がわかりませんでした。

 この2つのフランスのプレタポルテのブランドは、ユニクロの子会社だということを私はこのニュースを聞くまで知りませんでした。

 ユニクロ・フランス本体は、街を歩いている人が持っているユニクロの紙袋の数や、お店に買い物に行った時の様子などを見るにつけ、どう考えても業績は悪くないと思うのですが、ここのところ、カマイユ、kookai、ピンキー、サンマリーナなどフランスの中堅どころのプレタポルテのブランドは、軒並み倒産が続いています。

 たしかに、フランスのファッション業界は、いわゆるハイブランドか、そうでなければ、かなり思い切った低価格帯のブランドか?両極化しつつある気がします。「フランス人はもはや中堅どころのブランドの名前では買い物をしなくなり、価格で買い物をするようになった・・」とも言われていますが、その中間のところを綱渡りしていけるブランドはそんなに多くなくなってきた気がします。

 今回、ユニクロ(ファーストリテイリング)は、「流通戦略の抜本的見直しプロジェクト」と「販売拠点ネットワークの再編計画」をかかげ、フランスにおける厳しい中堅どころのファッションメーカーのポジションを維持していくために、子会社の中でも、もはや回復の見込みのない、この2つのブランドの55店舗(136店舗中)の閉鎖を検討すると発表し、また、多くの雇用が失われると話題を呼んでいます。

 そもそも、ユニクロがなぜ?この2つのブランドのオーナーになったのか?ということも疑問といえば、疑問でもありますが、そもそもフランスにユニクロが進出した当時は、ユニクロは、その品質には、絶対的な人気があったものの、ファッション的、デザイン的には今一つという評判であったことも否めません。

 そんな中、これらのブランドを買いとることでデザイン性やフランスのファッションブランドの香りを吸収していくことは、彼らにとって一定の狙いがあったのかもしれません。

 しかし、ここ数年の中堅どころのファッションメーカーの急降下の勢いは想像以上に早く、業績不振にあえぐ中堅ブランドは、彼らの顧客層の認識の変化に追いつかず、気が付いた時には、店舗数だけがやたらと過剰に増えており、それと反比例するようにオンライン上での存在感が薄すぎて、それを凌駕する戦略を打ってこなかったことが敗因です。

 おそらく、今回の発表は、現時点では店舗縮小に留まっていますが、すでにユニクロ本体の足を引っ張る存在になりつつあったということだと思います。

 この子会社ブランドの縮小とともに、ユニクロは、パリ・リヴォリ通り店で、アフターサービス、カスタマイズ ワークショップ(リペア・カスタマイズ・リフォーム)を組み合わせた「お直しサービス」を開始すること(3ユーロからの価格で、ボタンの縫い付け、破れの修理、裾上げを依頼できる)、また、使用済のアイテムのリサイクルへの取り組みを開始することも同時に発表しています。

 ユニクロはさらに、NGOと協力して、状態の良い古着を世界中の困っている人々に配布するプロジェクトも開始しています。

 常に何か新しい試みを催し、他のブランドにはないサービスという付加価値をつけることで、他のブランドとの差別化をはかり、また、世界的にも環境問題に積極的に取り組む姿勢をアピールしているあたり、さすが!とうならせられます。

 労働組合が強いフランスでは、店舗の縮小、それに伴う解雇などは、生易しいことではありませんが、会社全体が生き残るためには、不要な人材や店舗を抱え続けるのは命とりです。

 ユニクロがフランスに進出したのは2007年のこと、ラ・デファンスに1号店ができると聞いて、日本人の私は、なんか嬉しくてワクワクしたのを覚えています。当初から、ユニクロは日本式に店員を教育するとかで、お客さんが手に取った洋服はすぐにたたんで棚に戻すとか、レジでは人を待たせないような工夫をするとか、日本人から見たら、当然のサービスを提供するために、フランスでも日本風の店員の教育をしていたため、フランス人がその厳しさに耐えられずに、人がすぐ辞めてしまい、常に求人広告が出ているようでもありましたが、それも店舗が増え、ユニクロがフランスに浸透していくにしたがって、そんな店員の教育も浸透していき、最近では人を待たせないレジどころか、レジ自体の多くがオートレジになってしまいました。

 世の中の変化や流行、人々のショッピングの形態の変化についていけない限り、企業も生き残れないので、ユニクロとしては当然のことをしていると思うのですが、中には、この縮小されるブランドの店舗贔屓の側からすれば、「ユニクロはなぜ、プリンセス・タムタムとコントワー・デ・コトニエを犠牲にするのか?」などという批判じみたタイトルをつける新聞もあったりで、全くそのあたりは、フランスだな・・とも思うのです。

 ただ、現時点では、店舗数縮小を検討するということで、対象店舗の実質的な閉店は2024年7月の予定と1年以上の猶予期間をとっているあたりも、フランスでの解雇の難しさを物語っています。

 それにしても、ユニクロがこんな世界的なブランドになるとは・・。


ユニクロ フランス プリンセス・タムタム  コントワー・デ・コトニエ


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