2023年6月12日月曜日

15歳の少女をメッタ刺し、生きたまま火をつけた未成年の男子に懲役18年の判決は妥当か否か?

  


 フランスに死刑制度がないのは、知っているし、私は死刑制度がよいことだとも思っていません。しかし、今回の判決には、被害者を全く知らない私でさえも、どうにも納得がいきません。思わず、「日本なら死刑だろう・・」と思ってしまったほどです。

 事件が起こったのは、2019年10月クレイユ(オワーズ県)でのできこと。当時15歳だった少女は、彼女のボーイフレンドに刺され、生きたまま火をつけられ死亡しました。彼女は妊娠しており、事件の2年前の2017年に最初の性的暴行を受けた被害者でもあり、そのうえ、その時の映像がネット上で流され、「軽い女」という評判を植え付けられ、モノのように扱われ続けていたと遺族の弁護士は語っています。

 事件の2日後にクレイユのプラトー地区にある庭の小屋の中で少女の焼死体が発見されたことで捜査が開始されましたが、犯行現場付近の目撃者の証言により、彼女のボーイフレンドであった当時17歳であった男性が逮捕されました。

 逮捕、拘留後、「自分の売春婦であったガールフレンドを殺害した」と自白。事件の2日前に彼女が妊娠したことを告白したため、それを受け入れることができなかったと語ったと言われています。

 検死の結果、遺体には少なくとも8~14ヶ所の刺し傷が確認され、直接の死亡の原因は、生きたまま顔を中心にガソリンをかけられ、火をつけ、焼かれたことに起因することがわかっています。ちょっと想像するのもおぞましいほどの残酷な殺人事件です。

 この事件は、容疑者が当時17歳という未成年であったことから、裁判もオワーズ県の未成年向け裁定裁判所において、非公開で行われました。裁判が開始すると、容疑者である男性は、一転して無罪を主張したそうですが、過去の自白や周囲の証言、状況証拠、また、事件の際に負傷したと思われる足の火傷などから、彼には懲役18年の刑が言い渡されました。

 事件の凶悪性、残酷性から、検察側は被告に対して、未成年者のための減刑措置を却下するように求め、懲役30年を求刑していましたが、これは却下されています。通常、フランスでの未成年者への懲役は最大20年とされているそうで、判決が18年ということは、その最大拘留にも達していないことになります。

 裁判は、非公開で非常に緊迫した状況の中での激しい双方の弁論により5日間にわたって行われ、陪審員の4時間にわたる審議の結果、判決陳述には報道陣や一般の人々にも公開されました。

 裁判が始まって以来、被告は事実を否認しており、「自分は無実だ!これは間違っている!」と主張して、18年の判決を不服としているようです。

 しかし、被告以上に不服なのは、被害者の家族の方で、「この犯罪で18年!これがフランスの正義なのか?」と憤りを通り越して、被害者の兄弟である男性は、被告とのあまりに緊迫した話し合いの最中に倒れ、救急車で搬送されています。

 同氏はソーシャルネットワーク上で「フランスの司法を恥じている!」と表明し、未成年者は成人と同様に処罰されないという未成年という言い訳が解除されていないことに憤慨する意見を発信しています。

 そもそも未成年とはいえ、17歳というギリギリの年齢(18歳で成人)のうえ、犯罪自体は成人も真っ青になるくらいの凶悪さと狂暴さと残酷さ。未成年として裁かれるべきかどうかは、甚だ疑問でもあります。

 この判決には、様々な意見が上がっていますが、犯罪そのものは、充分に成人の犯した犯罪となんら変わることない(なんなら、一般的?な殺人事件以上にずっと狂暴)にもかかわらず、未成年扱いの求刑。

「司法は女性に対する暴力を甘く見ており、被告が未成年であるという言い訳を却下することを恐れたにせよ、最大20年にも及ばない判決は不当である」などと、否定的な意見も多く、また、被告がすでに3年半の公判前拘留中であり、今後の更生が認められるなどの恩恵を受ければ「8年以内に釈放されるだろう」という見方もされています。

 この見方が正しければ、現在、20歳の彼は28歳には、出所してくることになります。怖い怖い・・。

 公式統計によると、フランスでは3日ごとに女性が配偶者や元配偶者からの暴力で死亡していると言われており、「フランスはヨーロッパで一番、殺人事件が多い国」というのも、残念ながら納得してしまいます。

 

未成年の凶悪殺人事件に判決18年


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