2023年6月19日月曜日

ポニョの家族感

 


 ポニョは今年14歳になった我が家の猫です。人間の年齢にしたら、あっという間に娘の年齢も私の年齢も飛び越し、けっこうな高齢者になってきていますが、生まれてすぐに我が家にやってきて以来、ずっと一緒に暮らしている立派な家族の一員です。

 夫が亡くなって、しばらくした頃に、娘と2人の生活になり、2人とも大切な家族の1人を失った悲しみと、やるせなさに、我が家にはぽっかりと大きな穴があいてしまった感じでした。

 二人とも、懸命に日常生活を取り戻そうとしていましたが、寂しさはなかなか埋まりませんでした。

 そんな時、夫の元同僚だった、夫の死後の手続きなど、書類上の色々なことを助けてくれていた女性から、近所の家で子猫が生まれたという話を聞いて、何匹か生まれたの中から、娘が1匹を選んでもらってきました。

 猫が来る前に猫のトイレや猫用のお皿などを用意して待っていたのですが、まだ小学生だった娘は待ち遠しくて嬉しくて嬉しくて、猫のトイレに自分が入ってみたり、猫のお皿で猫のようにお水を飲んでみたりしてはしゃいでいました。

 家はアパートの高層階で、庭もなく、小さなベランダがあるだけなので、ポニョは外に出ることがなく、また、たまに外に連れて行こうとしても、全力で抵抗し、家に戻ろうとします。

 当然、家族の歴史を全て見てきたわけで、娘がまだ小学生の頃に算数の宿題がよく出来ないといってきた時に、まだ、私にも手に負える程度のことだったので、一応、説明してみたら、理解できていたので、あとは、これに慣れるようにある種のトレーニングをするしかないよ・・と、私も疲れていて突き放してしまったら、その後に娘は1人、自分の机に向かってシクシク泣いていたのをポニョがそばでじっと見守っていたこともありました。

 そんなこともあってなのか、ポニョは娘のことを姉妹のように思っているふしがあります。

 また、娘が成人するまでは、私も娘1人をおいて、夜出かけたりすることはできないので、おのずと友人に家に来てもらうということが多かったのですが、色々な人が来る中で、ポニョはなかなか人の好き嫌いが激しくて、その人によって、自分との相性を寸時に見分けて、その人との距離感を測っていました。

 もともと、あまり人懐っこい猫ではなく、自分から私たちの膝の上に乗ってきたりすることもなく、抱っこされるのも嫌いなくせに、常にちょっと触れるくらいの位置に居座ろうとするツンデレの猫なので、友人などが来ても、気に入った人でも様子を伺いながら、願わくば何か美味しいものにありつけるかもとそばをウロウロする程度です。

 一番、おもしろかったのは、従妹がパリに来てくれた時で、この時ばかりは、よそよそしい態度も見せず、娘と従妹と3人で食事をしていたりしても、しっかり自分も参加して、しかも、「なんだ、おまえ、家族の一員になったのかよ!」とでも言いたげな、どこかちょっと従妹に対しては、下に見て、威張っているようなところもありました。

 しかし、娘は同等の家族と思っているようで、以前は、娘が出かけてしまったりすると、ポニョは「なんだ・・勝手にでかけちゃったじゃないか!あいつは・・」みたいに、私のところに抗議に来たりすることもあったのですが、ここ数年、娘は、学校が地方にあったり、地方でスタージュをすることもあったりで、娘がいなかったりすることも増え、次第に娘がいないことにも慣れてきました。

 さすがに昨年以来の娘の日本での就職に、ポニョも娘が一年以上も本格的にいなくなって、長らく会っていないので、娘が久しぶりにパリに来たら、もう忘れてしまったということはないにしても、懐かしそうにするかな?と思っていたのですが、ポニョは、とりたてて、何の特別な反応もせず、かといって、よそよそしい態度も見せず、「あなた昨日もいたわよね!」とでもいいたげな、あたかも、今でも娘がいることがあたりまえのように、ごくごくそれまでと同じ様子を貫いていたのでした。

 私がちょっと長時間、出かけていたりすると、不機嫌な顔をするくせに、娘がまた日本に帰ってしまっても、それはそれで、もう私に抗議しにくることもなくなり、ポニョはポニョで現在の娘の家での位置を理解して受け入れているようで、とても賢いな・・と感心しています。

 こうして、今、私がパソコンに向かっている間、ポニョはいつの間にか、私とパソコンのキーボードの間にちゃっかり入り込んで、私の腕を枕にして、寝ています。

 暑いのに・・。


猫 猫の家族 家族の一員


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