思い返せば、このゴタゴタは、マクロン大統領が欧州議会選挙の結果を受けて、誰もが驚く国民議会の解散を宣言したことから始まっています。
マクロン大統領が2期目を迎えてからの首相任命は、当時の世論では、新しい首相には、女性を!と望む声が多かったこともあってか、女性で史上2人目である「エリザベス・ボルヌ氏」が任命されました。
彼女の就任期間中にマクロン大統領は、「年金改革」に取り掛かり、ボルヌ首相は、憲法49条3項を発令(首相の権限において、採決せずに発効するという手段を取り、フランス中がデモや暴動で大荒れになり、パリでもあちこちに積みあがるゴミの山が燃やされる大変な騒ぎになりました。
結果、彼女は20ヶ月で退陣、彼女の次には、今度は、史上最年少34歳のガブリエル・アタル氏が首相に就任しました。これも、当時、彼はフランスの政治家の中で一番人気!などと騒がれていたので、(そもそも彼はマクロンが政界での育ての親的存在でもある)彼の人気に乗っかったというか利用した感がないこともありませんでしたが、実際に彼は、マクロンの教え子?だけあって、非常に弁がたち、抜群の行動力の持ち主でもありました。
しかし、そんな彼もマクロン大統領の突然の国民議会解散宣言により、首相在任期間は8ヶ月で終わってしまいました。
そもそも、マクロン大統領の突然の宣言は、当時の内閣の面々もウンザリしている感じがあり、彼はますます求心力を失っていく感じになったのです。
そして、選挙の結果は、ますますマクロン大統領を難しい立場に追い込むものになり、新たに首相を任命する段になって、彼は大いに悩み、間にパリ・オリンピック・パラリンピックが挟まったこともあるとはいえ、首相任命までに2ヶ月近くを要してしまったのです。
2カ月近くもかけて熟考したはずの首相は、わずか3ヶ月で不信任案が持ち上がり、あっさり可決し、退任に追い込まれ、その翌日にマクロン大統領は国民に向けての演説で数日以内に首相任命を約束しましたが、約束から大幅に遅れ、1週間経過した時点で、あと48時間以内には、任命すると発表して、もう最後の1日は、分刻みでその動向が注目されていました。
新首相が任命された当日は、首相候補として名前が挙がっていたフランソワ・バイルー氏宛に早朝5時にマクロン大統領から「首相候補からは外れた」という電話が入ったという話が入ったと報じられてもいました。
また、午前8時30分にエリゼ宮に表れたバイルー氏はマクロン大統領と1時間45分にも及ぶ会談が行われ、フランステレビジョン閣僚担当者は「このやりとりは、非常に緊張したものであった・・」と交渉が難航しているかのように伝えられていました。
その後、マクロン大統領は、日程がずらせなかったのか?エリゼ宮にて、国際オリンピック委員会のトーマス・バッハ会長にレジオン・ド・ヌール勲章を授与。
マクロン大統領は、前日夜にポーランドから帰国したばかり。朝5時にフランソワ・バイルー氏に電話したとすれば、一体、いつ寝ているの?という感じでもあります。
いずれにしても、これでようやく首相が任命されたわけで、フランソワ・バイルー氏の力量は、これから厳しく注目されていくと思いますが、昨日、首相官邸で行われた首相交代のセレモニーでの新旧両首相の挨拶を見ると、フランソワ・バイルー氏の方が人に訴えかけるものをもっていて、鉄仮面のような前首相よりも人間味が感じられる気がしました。
しかし、退任させられた首相はともかくも、結局はマクロン大統領がぐらついているのは、この首相任命がこれだけジタバタしているのを見ても明白なことで、世間の目から見れば、マクロン自身が行き詰っているという見方が強く、「ノートルダムが再開しても、奇跡は起こらない!」などと言われ、マクロン大統領の信頼度は、彼が政権を握った2017以来、最低レベルに陥っていると言われています。
縁起をかつぐわけではありませんが、この首相任命が行われたのは、奇しくも「13日の金曜日・・」なんだか不吉な感じがしないでもありません。
フランス新首相 フランソワ・バイルー
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