2025年1月2日木曜日

2025年に向けてのマクロン大統領の演説

  


 ここ数年にわたって、新年を迎えるにあたっての大統領の演説は、だいたい聞く習慣がついているのですが、今年の演説は、大統領府の意向なのか?2024年を振り返る映像が組み込まれたりしていて、いつもとちょっと違う感じでもありました。

 ふつう映像込みで流されたりすれば、少し説得力が増す気もするのですが、私がひねているのか?なんだか印象操作をしようとしているというか?作られた感じがして、逆にすっと入ってこない気がしてしまいました。

 マクロン大統領は、この演説で、2024年の国民議会の解散はフランスにとって、解決策よりも多くの分裂を議会にもたらし、平穏よりも不安定をもたらしてしまったことを認め、これは自分の責任であったと述べています。

 それは、誰の目から見ても明らかなことであったとはいえ、大統領自らがこのような演説の機会に自身の口からそれを認める発言をしたことは、大きなことです。

 しかし、この先がさすがマクロン大統領のしびれるところで、「現在の議会は多様性において国を代表している」と説明。分裂を多様性に言い換えて、正当性を主張するあたり、さすがです。

 2024年の「ノルマンディー上陸80周年記念式典」や、「パリオリンピック・パラリンピック」、「パリ・ノートルダム大聖堂の再開」を振り返る映像を流しながら、「我々は共に、フランスには不可能なことはないことを証明してきた!」と述べ、2025年こそ、フランス人はさらに決意を新たに団結していかなければならない、「集団的回復の年でなければならない!」と呼びかけています。

 そして、彼はまた、「フランスが魅力的であり続けること!」、「より働き、より革新すること!」、「雇用を作り出し続けること!」、そして、「財政を維持することで成長を確実にすること!」を約束しています。

 しかし、現在のフランスは財政を維持するどころか、記録的な債務を抱えており、その債務は雪だるま式に増加しているわけで、「より働き」という部分は、フランス人にとっては、ハードルが高いことは、彼自身も重々承知してしかるべきで、そのうえ、より革新するための支出は、さらなる債務を膨れ上がらせる要因のひとつにもなっているわけで、この辺りが、国民とはかけ離れていると言われる所以ではないかと思われます。

 結局、彼が失敗を認めた国民議会の解散がもたらした不安定さの話から、一周まわって、結局、いつもと同じことを言っているにすぎず、分裂している議会からは、「傲慢で権威主義的」という酷評も飛んでいます。

 一方、これはEUメルコスールに関することを話しているのだと思いますが、「欧州は、世間知らずに終止符を打たなければならない覚醒の時でもある」とも述べています。

 「他者によって決められた法律(この場合は貿易法)に覚醒せよ!」、「補償もせず、将来の準備もせずに他人に依存させるすべてのものに「NO!」を突きつけよう!」と言っています。

 このマクロン大統領が言っているのは、メルコスールに関することですが、「この他者によって決められた法律に覚醒せよ!」という部分は、日本にも当てはまることではないか??などと思ったりもするのでした。

 しかし、総体的には、マクロン大統領の演説は以前のような力強さが感じられなくなっている気がしました。


マクロン大統領 年初演説


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