「国が我々に課しているのは安定を取り戻すこと」、「国民の84%は、政府は今年を乗り切れないと考えている。残りの16%の人々は、どこから楽観的な考えを抱くのか不思議に思うこともある・・」フランソワ・バイルー首相は、国民議会の前で一般政策声明の中でユーモアを交えながら自らの優先事項を説明しました。
「驚かれるかもしれませんが、私は、現在の不安定な状況が強みだと信じています。全てが順調に進んでいるときは、人々は栄光に安住し、全てが上手くいかないように見えるときは勇気を持ってください!」
冒頭から、それこそ意味がわかるようなわからないような、不思議な話の仕方ですが、表情や物腰など、明らかに前首相のようなピリつく感じは薄らいでいる感じです。
首相就任から1ヶ月後、彼の一般政策声明は約1時間半にわたり、内容も多岐にわたっていて、全てを紹介しきれないので、少しずつを抜粋しておきます。
首相は、冒頭で現在3兆2,280億ユーロに達している債務状況について、「これは、わが国と社会モデルの上にぶら下がっている『ダモクレスの剣』(断崖絶壁、一触即発状態)!」と表現し、「過剰債務の状況を考慮し、それを抑制し、削減するという目標を設定しない限り、いかなる復興、再建政策も実行することはできない!」と宣言しました。
職場によっては、この演説の間は、仕事を中断してまで注意深く聞いている国民もいるというこの演説の中でも、もっとも国民が注目しているとも思われる「年金改革」については、「ひとまず白紙に戻し、短期間で透明性のある条件のもとで、会計検査院に数週間の緊急調査を要請し、あらゆる数字に基づいて、より公正な改革に向けた前進の方法を見つけるために、各党の代表者による常任代表団を設立し審議する」ことを発表。3ヶ月間同じテーブルについて話し合い、それでもこの代表団で同意に至らなかった場合には、現行の改革が引き続き適用されるとしています。
また、年金問題のみならず、あらゆるレベルでの予算努力が必用とされるため、予算採択の緊急性を強調。「1,000以上の公的機関、団体等の必要性を見直し、再考して予算を再構成する」とし、また、この一環として、公的機関に属する資産・特に不動産の一部を換金して、国家改革に専念する特別基金を設立し、公共サービスへの人工知能の導入への投資を可能にすると説明しています。
また、これに加えて、彼は、比例代表制を前進させる話や、「黄色いベスト運動」の際の苦情リスト調査を再開させること、医療問題、住宅問題などについても、説明。
そして、「移民問題」についても、バランスの問題であると語り、毎年発行されるOQTF(国外退去命令)のうち93%が履行されていない現実を示し、その理由を「出身国が自国民の受け入れを拒否しているため」である現実を示し、移民管理のための省庁間委員会を再開すると述べています。
また、環境問題の観点からも、「原子力エネルギー」は不可欠であると説明し、教育の重要性や、コルシカ島問題、公共放送の改革などについても触れています。
昨年から火がくすぶっている農業問題に関しては、現在、環境規制や基準のために農家が課せられている規制や基準に対しての疑問を投げかけ、「管理される側は管理についての発言権を持つ必要があります」とも述べています。
かなり多岐にわたり、テーマが多すぎることもあるためか、一部では、「非常に支離滅裂で反循環な政策声明」という批判などもありますが、ひとまずは、経済生活を簡素化する法案の迅速な採択を望んでいると言えるかもしれません。
迅速な採択とはいえ、予算が確定しないまま、すでに2025年はスタートしているのです。なにしろ、前首相は予算案審議中に不信任案が可決して、退任に追い込まれているのですから、現首相もこの不安定な政権のもと、綱渡り状態であることには、変わりありません。
フランソワ・バイルー首相 一般政策声明
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