ネスレといえば、スイスに拠点を置く世界最大の食品会社で、扱っている食品の種類も広範囲にわたります。
今回、炎上中の製品はミネラルウォーターという通常、もっとも信頼されるべきもので、それだけにショッキングなことでもあります。
実際に私も長年にわたり、買い物するのに重くて面倒であっても、子供のために、健康を気遣って、ほんのわずかでも害になるものを摂取させ続けてはいけない・・水くらいは少しは良質なものをとミネラルウォーターを買い続けてきたので、本当に裏切られたような不快な思いでいます。
ネスレグループといえば、ミネラルウォーターだけでも、クリスタリンをはじめ、ペリエ、ヴィッテル、コントレックス、サンヨール、ヴィシー・セレスタン、さらにはシャテルドンなど約30種類のボトルウォーターを販売しています。
今回の疑惑調査は、2020年に工場の従業員からの内部告発により、競争・消費者問題・詐欺防止総局(DGCCRF)が調査を開始し、調査の結果、ミネラルウォーターに規制に準拠しない処理を行っていることを発見。硫酸鉄と工業用 CO2 の注入、認可された基準値を下回る精密濾過、さらにはいわゆる「ミネラル」または「スプリング」水の混合も行われていたという報告書が提出されていました。
この調査の結果、フランスのボトル入り飲料水市場の3分の1以上を握るスイスの多国籍企業ネスレは、その後、非公開の経済産業大臣との面会を要請、 2021年8月末、ネスレは準拠していない製法を使用したことを認めたと言われています。
今回、この事実が公になったのは、ル・モンド紙とラジオフランスの取材によるもので、この問題がすぐには明らかにならなかった理由が添えられています。
実際にネスレグループは、このミネラルウォーターの精製に関わる規制に何年も違反し続けていることを認めつつ、この内々の政府との秘密会議において、同社は、ネスレグループが使用する水源は確実に汚染が進んでいるために、こうした処理がなければミネラルウォーター工場の操業を継続することはもはや不可能だと経済産業省に対し説明しています。
そして、この違反が発覚した後もむしろ、開き直るかたちで、これを継続できるように規制自体を改正することを求めていたようです。
そもそもミネラルウォーターには、源泉水の純度によって、「ナチュラルミネラルーター(ペリエ、ヴィッテル、エビアンなど)」、「湧き水(クリスタリン)」、「処理によって飲料可能になっている水」とに分類され、それぞれに精製過程の規制が異なります。
つまり、ナチュラルミネラルウォーターと湧き水には、地下水の深部から汲み上げられるため、通常は汚染や公害のリスクから保護され、「微生物学的に安全」であるという共通点があります。 したがって、非常に限られた数の精製処理のみが許可されており、 カーボンフィルターや UV フィルターなどの浄化システムの使用は厳しく禁止されています。
ナチュラルミネラルウォーターは「本来の純粋さ」が特徴のため、精製する必要がなく、水の微生物学的特性を変えてはならないものです。
フランス人がボトル入り飲料水の品質に非常に高い信頼を寄せているのは、この「本来の純粋さ」が「より健康的」、「より健康に良い」と信じているからに他なりません。
しかし長年にわたり、実際にはネスレ グループのナチュラル ミネラル ウォーターには「純粋」または「天然」というものはなかったのです。
さらに、恐ろしいのは、このネスレの要請に基づき、政府がこの規制自体を修正することによって、許可する可能性があったことが報告書から認められた・・というものです。
実際に、詳しくミネラルウォーターの分類を知らなかった私でさえも、そのメーカーやブランドなどで信用しきっていたのは、情けないのですが、今回のようにフランスのマスコミがこの不正を暴いてくれて、ありがたいことです。
しかし、いずれにせよ、水源が汚染されつつあるという事実は変わりないわけで、ナチュラルミネラルウォーターとして不適切な精製法がとられているのに、それを偽ってきたということで、ハッキリ言って、詐欺ですが、だからといって、水道水といえば、飲料水として、ろ過されたものでもなく、結果的には、偽のナチュラルミネラルウォーターではなく、もともと「処理によって飲料可能になっている水」として、そこまで高価ではなく売られているものが良心的なのだろうか?などとも考えてしまいます。
いずれにせよ、これもまた、環境問題にかかわってくること、同時に問題を隠蔽して、違法な方法で製造したものを販売することや、それを政府までもがすぐに明らかにしてこなかったことは、それに輪をかけて恐ろしいことです。
ネスレ ミネラルウォーター
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